第58話 合同演習⑤〜イケメン外国人箒兵ルジェク少尉の登場〜

 合同演習四日目


 演習終了後、またルジェクに誘われた。エミリアは緊張してどきどきしてしまった。


『ただアーデルランド人を落としてみたいだけだったりして』


 エミリアはレイの声を思い出す。


「すみません。今日は友人と買い物に行きたいので」


 エミリアが誘いを断ると、ルジェクが「あと二日しかないんだから一緒にいてよ」と少し寂しそうに言った。エミリアは不覚にも赤面してしまい、更に断る事は出来なかった。またドリアンとケイシーの4人で街へ行く。お土産屋や雑貨屋を巡り、ルジェクがエミリアにガラス細工の小物をプレゼントした。


 レストランで食事をしていると、ふとドリアンとケイシーが長らく帰ってこない事にエミリアは気づいた。


「二人遅いですね」


「あー、うん。ここの上が宿泊所になってるんだけど、休憩してくるって」


「休憩? 具合が悪いんですか?」


 と言ってからエミリアはふとその意味に気付いた。


「帰らなきゃ行けないのに!」


 エミリアは椅子から立ち上がり、赤面してガラにもなく憤慨した。ドリアンとケイシーの早すぎる展開にエミリアはついていけなかった。


「時間までには戻ってくるでしょう」


 ルジェクは至って冷静なように見える。


「一人行動がバレたら……!」


 エミリアは不安になった。そしてルイスの顔を思い出した。


「じゃあ俺たちも部屋に行っとく?」


 レイの声を思い出す。


 やっぱりヤリ目的だった!


「帰ります」


 もはや一人行動で罰を受けても構わない。自分の体の方が大事だ。

 エミリアは席から離れる。


「あー! 違う!! 誤解しないで! 何かするとかじゃなくて! 単純に見つかったらマズイから隠れておこうという意味で言っただけで! ごめん、調子に乗った!」


 ルジェクがエミリアを引き止めるが、エミリアはとても悲しい怒りが湧き上がっていた。


「すみません。帰ります」


「待って! 俺、ほんと! エミリアちゃんに本気だから! 遊びとかじゃないから!」


 大衆の面前でルジェクが叫び、エミリアの手首を掴んだ。店内は賑わっていて、周りには聞こえてないとは思うが、エミリアはとても恥ずかしい気持ちになった。


「すみません。ホントやめて下さい」


「ごめん……」


 ルジェクはエミリアの手首を離さない。エミリアは一人でいる事が周りにバレないように祈りながら、席に戻り、ドリアンとケイシーを待った。そして、門限ぎりぎりに宿営地に到着し、エミリアは走って第1箒兵のテントに向かい、なんとか点呼に間に合った。


 エミリアは胸がチクチクした。


 ――何をしているんだろう私。不良みたいじゃないか。先輩に見つからなくて良かった。私がルジェクさんと付き合うと言ったら先輩は何て言うんだろう。なんとも思わないのかな。

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