第57話 合同演習④〜イケメン外国人箒兵ルジェク少尉の登場〜
合同演習三日目
演習が始まるまでは隊員達は和気藹々と雑談をしているのだが、いざ本番が始まると張り詰めた空気に変わる。戦法、戦略についてもリパロヴィナ軍と度々話し合う。昨日は意識してなかったが、ルジェクは小隊長として責任ある立場を任されていた。剣術はかなり優れた腕前で、刀で戦う姿は格好いい。
夕方、演習終了後にルジェクが素早くエミリアの所にやってきた。
「エミリアちゃん、この後、正門で待ち合わせね!」
「え!」
アーデルランドの隊員はたくさんいるのだから色んな人と喋ってみたらいいのに、とエミリアは思った。
エミリアは宿営地に戻り、ソフィアを探してみたが見つからなかった。衛生隊の兵士に尋ねると、すでに外出したとの事だった。エミリアは今日もソフィアと喋る事ができず、駐屯地正面玄関に行きルジェク達と合流した。
「今日は箒で行くから」
箒を片手にルジェクが言った。
「え!?」
ルジェクは、エミリアを問答無用に箒の後部座席に座らせた。そして恋人ベルトを起動。恋人ベルト持っているんだ! とエミリアが思った瞬間すでにエミリアは空の上にいた。やはりリパロヴィナ人は強引なお国柄だ。
ドリアンも恋人ベルトを使い、ケイシーと4人で空中散歩。空から見るリパロヴィナは一面、丘陵地帯。夕焼け空がとても綺麗だ。駐屯地から離れ、丘陵地帯の遥か上空を飛んでいると、赤色の屋根が広がる街が見えてきた。街の上空に入り、城を発見。どんどん城へ向かって行く。
「城へ行くんですか?」
エミリアはルジェクに聞こえるように大きな声で言った。
「正解!」
荘厳な佇まいの古城。城の近くには川が流れ、西部の街を一望できる。オレンジ色に染まった夕暮れの城はとても美しかった。
城内に入り、ドリアン、ケイシーと別れ、エミリアはルジェクと二人で行動する事になった。なぜ二人で行動するのだろう、とエミリアは落ち着かなかった。
「ドリアンとケイシーちゃん、良い雰囲気だよね」
ルジェクがエミリアの隣で言った。
「あぁ、そういう事ですか」
「ん?」
「二人きりにさせてあげたいという事ですよね」
「あぁ、うん。それもあるけど。俺がエミリアちゃんと二人きりになりたかったんだよね」
エミリアはあんぐりと口を開けて、その場で固まった。
「ど、どういう事ですか?」
「だって二人でゆっくり喋りたいじゃん?」
「いや、あのー、えーっと。すみません。よく分かりません」
「あははは。エミリアちゃんて、ほんとに可愛いよね」
ルジェクが楽しそうにエミリアを見つめた。
夜、宿営地。
「それ、完全にエミリアに好意持ってるじゃん」
箒兵部隊の同期レイが、眉間に皺を寄せ、きっぱりと言った。
「え……」
「男が女に可愛いと言ったら、好きですと言ってるようなものだよ!」
「えぇ!? それは違うでしょ!」
エミリアは大きな声を出した。
「いやいや、分かってないね、エミリア。全く分かってない。城で二人きりになりたいってもう、物凄くアピってるから!」
「う……。ゆっくり喋れるからじゃないの? 仕事の話いっぱいするし」
「エミリア、それマジで言ってんの?」
「だってまだ知り合って三日目だよ!? 恋とかないでしょう!!」
「恋に月日は関係ないよ! でもぶっちゃけ女に慣れてる感じが気になる。ただアーデルランド人を落としてみたいだけだったりして。一回ヤって終わりも有り得る」
「うわ、何それ、最悪……」
「エミリア、男慣れしてないしなー。ほんと気をつけなよ?」
「うん」
男は怖いとエミリアは思った。
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