第45話 模擬試験を受けました

 エミリアは、4ヶ月間の受験対策講座を受け、そして試験1カ月前に、模擬試験を受けてみた。


 夜8時ごろ、ルイスが勉強を教えにエミリアの部屋を訪れた。終業時刻はとっくに過ぎているのに、ルイスは毎回勤務服姿で訪れる。毎日残業しているのだろう。


「模擬試験の結果どうだった?」


 ルイスの問いにエミリアは何も言わず、暗い表情で答案用紙を渡した。

 試験結果は最悪。70点以上が合格ラインだが、エミリアは45点だった。忙しい中、時間を割いてもらいルイスに勉強を教わっているのに、エミリアはとても申し訳ない思いだった。

 ルイスは淡々と問題用紙と答案用紙を見ている。


「魔法史はいいんだけどな」


 そう言いながらルイスは紙に何かを書き始めた。


「魔法数学、魔法物理が散々だな」


 すらすらとペンを動かし終えて、再度言葉を発した。


「今日から魔法数学、魔法物理に集中して勉強な。スケジュール書いたから」


「はい……」


 そして、ルイスは模擬試験の間違っていたところを丁寧に教えてくれた。

 こんな時は怒らないんだな。毎日夜遅くまで勉強してるのに何で私は……

 ルイスの解説を聞きながら、エミリアは堪えきれず涙を流した。


「……今日はもう模擬の振り返りだけでいいから。さっさと寝ろ」


「はい……」


 ルイスは椅子から立ち上がり、いつもよりも早く部屋を出て行った。

 呆れられただろうか。見損なった?

 エミリアは机に額を乗せて、泣き崩れた。


「エミリア。元気?」


 翌日、訓練時間。カーターが心配そうにエミリアに話しかけた。


「模擬試験の結果が散々で……」


「あぁー。中級魔術士試験、難しいよね」


「はい……」


 エミリアは俯いた。


「甘えてんじゃないわよ。誰もが通る道でしょ!?」


 アイリーンが喝を入れた。


「皆さんは、中級魔術士なのですか……?」


「そうよ! というか、第1箒兵部隊の隊員の殆どが中級魔術士以上の資格保有者よ!」


「そうだったのですか……」


 やはり自分は第1箒兵部隊に不釣り合いだとエミリアは思った。


「ちなみに、隊長とカーター曹長は上級魔術士! 隊長のパートナーが初級魔術士なんて恥もいい所なんだから、何としてでも合格しなさいよ!」


「アイリーン……、励まし方が荒いね」


 フンっと鼻息を鳴らすアイリーンの隣でカーターが言った。

 励ましてくれているのか。

 アイリーンは口は悪いけど、そう悪い人でもないとエミリアは最近思っている。


「中級なんて、魔力さえ足りていれば誰でも受かりますよ」


 クリスが自分の指先のささくれを弄りながら言った。

 そりゃあ、クリスさんのように頭が良ければ、簡単なんでしょうけど!

 エミリアは心の中で悪態をついた。

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