第42話 ルイス班でキャンプします。寒い④

 ルイスとアイリーンは駐屯地近くの林に到着した。

 2人は草陰にそっと隠れる。すると暫くしてウサギが現れた。


 ルイスはすぐさま風魔法を唱えて風刃で攻撃した。ウサギの肉は木っ端微塵に引き裂かれ、無残に細かく四方へ飛び散った。ルイスはチッと舌打ちをして、眉間に皺を寄せた。


「隊長。拘束系魔法の方が良いかと」


 アイリーンが小声で助言する。


「そっち系の魔法苦手なんだ」


「そうなのですね」


 ルイス隊長は拘束系魔法が苦手、とアイリーンは脳内にメモをとった。


「大きい獲物の方が得意なんだが。鹿とか現れないかな」


「では小さい動物は私が拘束魔法で捕まえます」


 まるでルイス隊長のパートナーになったかのようだ。エミリアのような新人より私の方がよっぽど上手く隊長をサポート出来るはず。何故志願していた私が選ばれずに、箒にも乗れない、攻撃魔法も唱えられない子が、ルイス隊長のパートナーになれたんだ。隊長のパートナーになる為に毎日自主的に勉強もして、私の方が実績も出せているはずなのに。


「……エミリアはパートナーとしてどうですか?」


 アイリーンは慎重に話を切り出した。


「良くやってくれてるよ」


 ルイスの即答に、アイリーンは青ざめた。

 正直なところ、アイツは駄目だと否定して欲しかった。


「私じゃ駄目な理由をお聞かせ頂けますか? エミリアにあって、私にないもの……」


 何を言っているのか。これじゃ面倒くさい女の発言だ。しかしルイス隊長が第1箒兵部隊の中隊長の頃より私は憧れていて、上司を通してパートナーの志願をしてきたのだ。納得の出来る理由がずっと本人の口から聞きたかった。


「アイリーンが駄目なわけないだろ」


「え?」


「アイリーンは優秀じゃないか。攻撃魔法も回復魔法も唱えられて。魔力のコントロールも上手いし」


「じゃあ何故……」


「アイリーンには俺の補助に徹するより、指揮を学んで欲しいと思ってる」


「指揮……」


「期待してるよ」


 ルイスはアイリーンの顔を見て微笑した。


「はい♡」


 アイリーンの頭の中は一瞬にしてお花畑となった。



「時にアイリーン。お前、クリスともっと仲良くなれよ」


「クリスが吹っかけてくるんです」


「あいつ、アイリーンをライバル視してるんだよ」


「ライバル視ですか」


 見下している、の方が正しい表現な気がする。


「クリスは仕事に真面目だし、使える魔法多くて頼りになるよ」


「肝に銘じておきます。ただどう仲良くすれば良いのか……」


「そこはこちらから歩み寄るしかない」


「私から……」


 嫌だなと思いつつ、隊長に言われたらやるしかない。


 


 夕方、ルイス班は駐屯地内の広場に戻ってきた。

 6人用のテントを張り、バーベキューの準備をして、みんなで仕留めた鹿肉や、持参したチーズや酒を飲んで過ごした。



「ソリしようぜ」


 ルイスがよく分からない提案をして、男達は広場の端の丘になっている場所で、ダンボールをお尻に敷いてソリ遊びを始めた。


 元気だなぁと男達を見つめながら立っているエミリアとアイリーンだったが、ディランやルイスに誘われて、最終的にはみんなでソリをして遊んだ。



 夜、寒空の下、六人で星を見た。

 ディランが冬の綺麗な星を見せたくてキャンプをしたんだと元気に言った。

 エミリアは、みんな野営でいつも見てるよ! と思ったが、「そうですか」と相槌を打った。


 新年をルイス班全員で迎えた。

 ルイスは新年を迎えるといち早く就寝していた。

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