第43話 中級魔術士試験なんて受けたくないんです
デュポン暦2022年1月
ルイスはアンドリュー中将と本部の廊下を歩きながら、仕事の打ち合わせを行なっていた。
「そういえばエミリアちゃんて中級魔術士だっけ?」
「いえ、まだ初級魔術士です」
「じゃあ、給与少ないんじゃない? 彼女」
「まだ1年目ですしね」
「ルイスはいつ中級になったっけ?」
「私は魔法防衛大学の学生の時に」
「そっか、じゃあエミリアちゃんの年齢の時はすでに中級だったんだねぇ」
「はい」
「エミリアちゃんの中級魔術士試験の面倒見てあげてね」
ルイスはギョッとした。中級魔術士試験は初級魔術士の資格があれば誰でも受験が可能だが、だいたい入隊3年目から受ける。1、2年目は試験勉強に割ける時間が限りなく少ないし、合格する程の魔力も技術も足りない者が多数だ。エミリアの場合は魔力量の心配はいらないが、問題は筆記試験。試験内容は初級に比べると難しくなり、殆どが論文形式で出題される。魔法防衛大学の学生のように特別な授業を受けていない限り、そう簡単に受かる試験ではない。
夕方。エミリアは本部にある大隊長室に呼ばれた。
「中級魔術士試験を受けてもらう」
ルイスはエミリアに中級魔術士試験受験案内兼申込書と記載された封筒を渡す。
「中級魔術士試験? ジャックさん達が勉強しているやつですよね……」
「そう」
「私勉強全くしてないですけど……? 確か試験、春ですよね?」
「そうだ」
「無理です」
「上官命令だ」
エミリアは青ざめながら渋々承諾した。
突如、大隊長室の扉が開く。
「遅れてごめんね」
ロミオが少し息切れをして現れ、エミリアと目が合う。
「エミリア! 申込書貰ったんだね。これ、過去問題集。分からない事があれば僕の所まで質問しに来ていいから。あと毎週土曜日に中級魔術士試験対策講座があるから参加しなね」
「ありがとうございます」
ロミオ教官は本当に優しいな、と思いながらエミリアは大隊長室を出た。
「アンドリュー中将命令って知ったら、エミリア卒倒しそうだよね」
エミリアが部屋から去った後、ロミオが口を開いた。
「中将はエミリアを気にかけすぎてる」
「確かに」
「おすすめの参考書教えて」
「はい。じゃあ書店に行きますか」
ロミオがルイスに笑顔で言った。
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