第13話 贖罪②

 軍部に1人戻ったルイスは上へ事の経緯を説明。


 禁忌魔法を使用したため軍法会議にかけられる事になった。


 幸い1ヶ月の謹慎処分で免れたが、周囲はルイスの話で持ちきりとなった。


 ルイスへの視線は賛否両論で、S級モンスターである死神を倒した士官候補生と賞賛する者もいれば、ドニとメアリは本当に死んだのか、見殺しにしたのではないのか、1人のこのこと逃げ帰ってきて、と非難する者も多く、また、禁忌魔法の管理はどうなっているんだ、謹慎1ヶ月は緩すぎないか、等の意見が飛び交った。



 葬儀の日


 雨の中、ルイスは、ドニとメアリの両親に、彼らの認識票を渡す。


「申し訳ありません………!」


 ぬかるんだ地面の上で土下座をした。


 暫くしてからドニの父親が憔悴しきった声で言った。


「君は頑張ったんだろうよ……。どうにもできなかったんだろうけど、亡骸になっても僕等は会いたかったんだよ。息子が死んだなんてどうやって信じろというんだい」


 雨でびしょ濡れに泥まみれになっても、ルイスは顔を上げる事が出来なかった。



 葬儀翌日


 寮の裏にある芝生でルイスは1人座っていた。


「こんな所にいたのか、随分探したよ」


 ロミオが穏やかな声で語りかけ、ルイスの隣に座った。


「ほら飯! 食ってないだろ?」


「……食欲ねぇよ」


 と言いつつ腹の虫が鳴ってしまう。


「食えよ。折角生き残ったんだから。……しっかり2人の分まで生きろ」


「……分かってるよ」


 謹慎後、ルイスは、異例の早さで成果をあげて昇進した。数年後には、イル師団で彼の名前を知らない者はいなくなった。

 


 デュポン暦2020年現在。


 第1箒兵部隊大隊長室にて。


「今も贖罪のつもりで働いているの?」


 デスク横の本棚の本を手に取りながら、ロミオが涼しげな顔でルイスに質問した。


「は?」


 仕事を終え、帰る準備を整えながら、締まりのない顔でルイスが聞き返した。


「当時はかなり切羽詰まってたよ」


「知らねぇよ……。……別に今はそんなつもりで働いていない」


 ロミオがかすかに笑った。


「じゃあ今はどんなつもりで働いてるの?」


「人民へのご奉仕の為だろが!」


「うわぁ、嘘臭いー」


「どうとでも言え」


「もうそろそろさ、自分を許してやっても良いんじゃない?」


「どう言う意味だよ……」


「だからさー、パートナー付けなよって事」


「またその話かよ」


「エミリアなら自分の身を守る能力高いし、彼らのようにはならないよ」


 ルイスは、既に冷えきったコーヒーを飲み干して、ロミオに尋ねた。


「あいつ、何者だ?」


「ね。看護学生時代から凄かったみたい」


「情報はそれだけか」


「うん」


 腕組みをし、少し黙してから、ルイスが再び口を開く。


「……あいつの軍への志望動機、お給料が良いからぁ、だってよ、ふざけやがって」


「なんだ、それじゃルイと一緒じゃん」


「そうだったっけ」


「そうだよー。ちなみに新人でいきなりS級モンスター倒したのも一緒。縁あるんじゃない? 君たち」


「うわぁ……やめてくれ」


 ルイスが頭を抱えたその時、ノック音が鳴った。


「第1箒兵大隊エミリアです!」


 入室の許可を出すと、大隊長室のドアが勢いよく開いた。


「ルイス先輩! 先輩の箒に乗せて下さい!」


 ルイスは唖然とし、その場に固まった。


「ぶふっ!」とロミオが笑う。


 エミリアは、ロミオがいる事に気づいたが話を続けた。


「た、確かに、給与の高さが理由で入隊しましたけど! 人々の為に尽くしたいという気持ちもあった訳で! せっかく司令官が選んでくれた訳ですし。頑張りたいです!」


「同じ」


 ロミオがルイスの隣でぼそりと言う。


 ルイスはロミオに苦い顔をした。

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