第38話 舞踏会〜先輩が格好良くて直視できません〜⑤

「エミリア! どうだった?」


 ロミオが先程の座席で笑顔で迎えた。


「場違いでした……」


 惨めで泣いてしまいそうだ。


「先輩、舞踏会嫌がってた割に踊れるし……」


「経験だよー。エミリアもすぐに踊れるようになるよ」


「別に、踊れるようにならなくていいです……」


 エミリアは俯いたまま残していたジュースを飲んだ。




「ルイス、おかえりー」


 ルイスが休憩室に戻ったのは、エミリアと踊ってから1時間以上過ぎた後の事だった。


「遅かったね」


 ロミオが優雅にワインを飲んでいる。


「国軍省やら広報やら色々と捕まってた」


「大変だねー」


「……そう言うお前は、誰かと踊ったの?」


「まぁ、僕の事はいいんですよ。夜は長いでしょ。そのうち踊るよ」


 ルイスはふぅっとため息をついて、ロミオから視線を少し横にずらした。


「……こいつ、寝てるの?」


 エミリアは円卓に頭を伏せて動かない。


「お酒飲んだら眠たくなったみたい」


 ロミオもエミリアを見る。


「仕方ない奴だな」


 ルイスは目を細めて、面倒臭そうにエミリアの後頭部を見つめた。

 そして、何も言わずその場から離れ、戻ってくると、エミリアの背中に自分のコートをかけた。


「やるね……」


 ロミオが呟いた。ルイスの意外な行動にロミオは驚いたが、ルイスは「何が?」と言い、また酒を飲み始めた。

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