第39話 ルイス班でキャンプします。寒い①

 デュポン歴2021年12月


 第1箒兵部隊は軍の訓練場で魔法訓練を行なっている。

 隊の訓練時間、ルイスは本部でデスクワークや会議があるため、エミリアはルイスに呼ばれない限りは、カーター達と過ごしている。


「舞踏会で踊ってきたか〜」


 エミリアが魔法の練度を上げるよう訓練に集中していた所、ディランが緊張感のない声でエミリアに話しかけた。


 ここで舞踏会の話をするなんて。先輩に好意を抱いているアイリーンさんも近くにいるのに。


「踊り方分からないので、休憩室でお酒を飲んでいました」


 嘘はついていないはず。


「何だよー。せっかく貴族や役人が来てるだろうに、勿体ねぇなぁ」


「場違いでしたよ」


「そうかぁ。まぁ平民には普通の飲み屋の方が面白いわな」


 エミリアは相槌を打ったが、きっとディランの好みの店は、自分の好みな店ではないと思った。


「隊長モテモテだったんじゃね?」


「はい。そうですね……」


 ルイスに好みの女性がいなかった事をエミリアは願う。



「ちょっと、アイリーンさん!」


 クリスが不機嫌なトーンで声を張り上げた。


「へ?」


 アイリーンがふと我に帰り、気の抜けた声をだす。


「早く攻撃魔法やって下さい」


 クリスは眉を顰めている。


「あぁ、ごめんなさい」


 アイリーンは急いで攻撃魔法を唱えた。


「……ちゃんと集中して下さいよ。戦場でもこんな腑抜けた魔法使うつもりですか?」


「何!?」


 アイリーンがクリスの言葉にムッとする。


「戦場でも隊長の事考えて、集中力切らされたらたまらないんですけど」


「は!? あんた何言ってるの!?」



「ちょっとちょっと2人とも! そんな喧嘩しないで」


 カーターが急ぎ止めに入る。

 エミリアは何も出来ず、飛び火しないよう縮こまるしか出来なかった。



 突如、カーターの通信機が起動した。

 カーターはすぐさま応答し、誰かと話をし通信を切った。


「アシル班がリトルワームとの戦闘で負傷したので応援に行きます。ワームは既に片付いたけど、動けないみたい」


「酷いのか?」


 ディランの質問に、カーターは頷いた。


「エミリア。隊長の許可が降りてるから、僕の箒に乗ってついてきて」


カーターが箒を手に取った。


「はい!」


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