第35話 舞踏会〜先輩が格好良くて直視できません〜②

 翌日昼休み


 本部へ向かう途中、ルイスは1人の男に呼び止められた。

 第1箒兵部隊のアレクだ。


「ルイス中佐、エミリアちゃんと舞踏会出ないですか? 出ないなら自分誘っちゃっていいですか?」


 素直な奴だが、いつも女の話ばかりしているチャラ男。何でこいつがエミリアに……とルイスは目を細めた。



 同時刻。衛生隊食堂


「エミリア! おめでとう!」


 新人賞の事を話すとソフィアはとても喜んでくれた。


「凄い! 楽しみだね!」


「どうかな。ドレス買わなきゃいけないし、相手見つかってないし……」


「相手はさ、いるじゃない」


「いないよ! 出ないって言ってたもん!」


 泣いてしまいそうだ。


「誘ってみなよ。相手居ないって言ってみてはどう?」


「うん……」


 エミリアは俯きがちに答えた。


「ドレスはどんなの着ればいいんだろう」


「ガーネット少尉に相談してみようか」


 ソフィアはエミリアを引き連れて、ガーネットの元へ行った。


「まぁ! 凄いじゃない! おめでとう!」


 ガーネットは満面の笑みで喜んでくれた。


「ありがとうございます」


 エミリアは顔が真っ赤になった。相変わらずガーネット少尉は色気がある。少し分けて貰いたい。


「受賞者だから、授賞式後の舞踏会も出られるのね。あの舞踏会、女子隊員達は参加したくて、毎年この時期になると落ち着かない子達もいるくらいなのよ」


「そうなのですか……」


「だって、優秀な軍人と近づけるチャンスでしょ。貴族や役人も来るし。このパーティがきっかけでカップルが誕生したり、結婚までいく人達もいるのよ」


「それは……凄いですね。出会いの場ですね……」


「そう、その通り。 舞踏会は出会いの場なのよ」



 そうだったのか……



「ドレスの事は、ルイス中佐に聞いてみなさい」


 ガーネットはにっこりして言った。


 勤務終了後、エミリアは1人考え事をしながら、寮への道を歩く。



 ガーネット少尉は先輩に聞いてみなさいと言っていたけど、先輩がドレスに詳しいとは思えない。なんだか気が重くなってきた。私も不参加じゃ駄目だろうか。



「あ! やっと見つけた!」


 前方からルイスがやってきて、エミリアはドキリとした。


「おい、出かけるぞ!」


「ど、何処へ!?」


 ルイスへの恋心に気付いてからは、体がよく火照る。


「ドレス買いに行くぞ。それとも持っているのか?」


「も、持ってません」


 ルイスは箒に跨りエミリアを後ろに乗せて、すっかり暗くなった夜空を飛んだ。


「そんなに急がなくても土曜日でも良かったのでは……」


「明日から遠征が入った。帰るのは授賞式前日だ」


「相変わらず忙しい部隊ですね……!」


 エミリアはゾッとした。

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