第34話 舞踏会〜先輩が格好良くて直視できません〜①

「今日飯食べていい?」


 巡回中、箒上でルイスがぼそりと言った。


「良いですけど、そう言うことは前もって言って頂けませんか」


 ルイスへの恋心を自覚してからは、エミリアの心臓はうるさく鳴りっぱなしだ。


「前もって言ったら食べて良いの?」


「え? えぇ、まぁ」


「どのくらいの頻度でなら食べていい?」


「ほ、本気ですか……? まぁ、週3くらいなら……」


 欲張りすぎだろうか。エミリアはルイスの反応をびくびくしながら待ったが、ルイスは「サンキュー!」と喜んで言った。


「今日、ロミオも呼ぶから。なんか食べ物持ってくるって」


「ロミオ教官も? 分かりました」


 ほんと前もって言ってほしい。準備出来るだろうか。

 エミリアは今日ある食材で作れる料理について考えた。



 エミリアが勤務終了後、部屋で煮込み料理の味を整えていると、扉をノックする音が聞こえた。


 扉を開けると、ルイスとロミオが立っていた。


「新人賞おめでとう! エミリア!」


 ロミオの手には花束。


「え! ありがとうございます!」


 花束を貰うなんて生まれて初めてだ。

 ロミオはおしゃれなオードブルと数種類のケーキを持ってきてくれ、あっという間にテーブルの上が華やかになった。

 その横でルイスはそっとテーブルの上にワインを置いた。


「まさか祝って頂けるとは」


 エミリアは椅子に座った2人の前へ皿を並べる。


「え!? ちょっと、お祝いって言わなかったの? ルイ」


「サプライズがいいかなと思って」


「もう、ルイスったら……」



 エミリアも席に着き、ワインが注がれたグラスを持ち3人で乾杯をした。


「改めてエミリア新人賞おめでとう! ルイスも四年連続戦功賞おめでとう!」


「どうも」


「あぁ! そうか、先輩も! 四年連続!?」


 エミリアは口に含んだワインを不器用にごくりと飲んだ。


「2人一緒に受賞してくれて僕は嬉しいよ。エミリア、授賞式パーティ当日はちゃんとルイスにエスコートしてもらうんだよ」


「ちょっと待て、俺は参加しないぞ!」


 ルイスは慌てて口を挟んだ。


「何言ってるのさ! 今年はパートナーも受賞したんだから不参加は許されないよ!」


「嫌だ! エミリア、お前、相手いないならロミオについていけ」


「僕は招待客として他の教官と出席するから無理だよ!」


「あの、何の話かよく分からないのですけど」


「授賞式パーティの案内、渡されてない?」


 ロミオがエミリアに尋ねた。

 フレディから渡されていたが、まだ読んでいなかった。

 エミリアは、机の上に置いていた案内を手に取り、目を通す。



 ◆授賞式プログラム◆

 2021年12月15日(金)

 授賞式 18:00〜

 舞踏会 20:30〜

 服装 : 正装。女性はドレスを着用

 場所 : 迎賓館

 なお舞踏会は、独身の方は異性を一人、妻帯者は妻子とご参加下さい。



「ぶ、舞踏会!? これ、私も参加するんですか!?」


「そうだよ。受賞者は全員参加だよ」


 ロミオは、エミリアからルイスに視線を移し、にっこりと含みのある笑みを浮かべた。ルイスは頭を横へふるふると振っている。



 どうしよう。ドレスなんて持ってないし……。先輩は参加したくないんだ。

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