第33話 新人賞を頂きましたけど、授賞式パーティとは何ですか?

 デュポン歴2021年12月


 エミリアはルイスに呼び出され、大隊長室の扉を開けた。


「おめでとう」


 ルイスがデスクに肘をつきながら言った。


「はい?」


「今年の新人賞にエミリアが選ばれた」


「え?」


 聞きなれない言葉にどう反応すれば良いのか分からない。


「こちら授賞式パーティのお知らせです」


 ルイスの副官フレディがエミリアへ詳細が書かれた紙を渡した。



 エミリアは書類を受け取ったが目を通すのは後にして、訓練の時間だったので、急ぎ運動場へと戻った。


 決められた範囲に、決められた出力で魔法を発動する訓練。ルイスに口すっぱく魔力をコントロール出来るようになれと言われている。省エネして魔法を発動する事も課題だ。



「よ! 新人賞!」


 エミリアの後ろからディランが声をかける。


「え!」


 何故すでに新人賞の件を知っているのか。


「おめでとう。エミリア」


 カーターが朗らかな笑顔で言った。

 どうやら今日は新人賞の発表日だったらしい。


「エミリア、授賞式パーティ出るのかー」


 ディランが顎に手を当て、うんうんと頷きながら父親のような顔付きをしている。


「授賞式パーティってどんなものなのですか……?」


「ちょっと! まだ訓練中ですよ! 次、ディラン曹長です!」


 アイリーンがイライラとしながら会話を中断させる。


「へーい」


 ディランが班員に背中を向けて、ガニ股で魔法発動位置まで歩いていく。


「あんたも! 新人賞取ったからって、調子に乗るんじゃないわよ?」


「は、はい」


 エミリアは縮こまった。


「あぁ、アイリーンさん、新人賞取ってないですもんね」


 アイリーンの背後からクリスが声を出す。口角は上がっているのに目が笑っていない。大人しそうな顔をしているのに、クリスは腹黒い。


「うるさい! そう言うことじゃなくて、調子に乗ってる奴が戦場で一番先に死ぬから忠告してるのよ!」


「何だ? 喧嘩か?」


 ディランが魔法を唱えて戻ってきた。


「違います!」


 アイリーンが大きな声で言う。


「あー、あれだろ? 隊長も受賞したから……」


「うるさーい!!」


 アイリーンが叫んだ。


 暫くしてから、アイリーンがエミリアだけに聞こえるようにぼそりと言った。


「嫉妬じゃなくて、あんたの受賞は隊長のおかげなんだからね」


「はい……」



 確かに私1人の力では得られなかったものだろう。



 エミリアの胸はぎゅっと痛んだ。

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