第29話 血液検査の結果に驚きました
後日、血液検査の結果が出た。
エミリアはルイスと2人、シルド市立病院の診察室を訪れた。普通ならエミリア一人で行くものだが、恐ろしい結果が出たら、とても一人では耐えられないので、退院したばかりのルイスに同行を頼んだ。エミリアが椅子に座ると、書類をじっと睨みながら、眼鏡の真面目そうな若い医者が言った。
「結果から言うと、混血ですね」
「え?」
エミリアは目を丸くして固まった。
「人間と何か別の生物の混血です。人間が他の生物と結婚することは禁じられているのですが、まぁ貴女に言っても仕方ないですが。たまにいますよ混血。問題はどの生物かですが、そこまでは、今の所分かりません。国が持ってない検体なので珍しい生物になるのは確かですね」
淡々と説明する医師に対して、エミリアは口をぽかんと開けた。話についていけない。
「私は普通の両親から生まれたはずなのですが」
「祖父母等が別生物だった可能性もありますがね」
「はぁ……」
2人の話が終わったところで、ルイスが口を開いた。
「この話は内密にして頂けますか」
「えぇ。もちろんです。エミリアさん自体もあまり人に言わない方がいいでしょう。奇異な目で見る人もいるかもしれませんし。僕としてはとても興味深いですけどね。口頭のカウンセリング結果、推定魔力は2万MP以上ありそうです。どの生物との混血かはとても気になる事例なので引き続き調査しますね」
「別にもういいですけど……」
ショックがでかい。これ以上は知りたくないかも、とエミリアは思った。
「そうですか? 知れるものなら知っておいた方がご自身の健康管理に役立つとは思いますけどね。例えば吸血鬼と人間とのハーフの子どもが、父親が吸血鬼と知らされずに育ち、にんにくを食べてしまってアナフィラキシーショックを引き起こした例などありますし。あとやはり具合が悪い時は人間の血を飲むといいと気付いたり」
なるほど。アナフィラキシー怖いな。今のところ吸血鬼みたいに昼が苦手とか、嫌いな食べ物は特にないけど。
「では、念のため、引き続き調べてもらえますか……」
「承知しました。それではエミリアさん、今後ともよろしくお願いします」
なぜか医師がエミリアと熱く握手をした。
帰路、エミリアとルイスは並んで市立病院の廊下を歩いた。エミリアは医師の言葉が頭から離れず、落ち着かない。
「私、何者なんですかね?」
「まぁ、あまり考え過ぎるな」
「はい……」
沈黙が流れた後、エミリアが急に声を荒げた。
「私がゴブリンとの混血だったらどうします? 急に変身しちゃったりして!」
「はぁ? それはないだろ、魔力的にも。え、何、ジョーク?」
「違いますよ! 本気で言ってるんです!」
「国が保有していない検体だと言ってたぞ」
そうだ、珍しい生物だと言っていた。魔力が高くて珍しい生き物……
「ドラゴン……?」
エミリアは自分の両手を見つめながら言った。
「全くドラゴンに似てる要素ないし体格的に人間とは無理だろ」
「……何がですか?」
「マジか、お前」
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