第28話 先輩が入院したのでお見舞いに行きました②
翌日、エミリアはルイスの病室へと向かった。
病室前の廊下でフレディと出会った。エミリアが本部でルイスの仕事の手伝いをする時、お世話をしてくれるのがフレディだ。今日も目の下にクマが出来ており、頰は痩けている。しっかりと休息をとれていないのではないかとエミリアは常日頃思っている。
「お疲れ様です」
エミリアはフレディへ挨拶をした。
「お疲れ様です。体調はどうですか?」
落ち着いたトーンでフレディが聞いた。すらりとした体型で背筋がピシッと伸びている。
「私はもう回復しました。お騒がせしてすみません」
「いえいえ。良かった」
フレディはたくさんの書類をかかえている。
「書類は私がやっておきますから、ルイス中佐にそれとなくゆっくり休むように言って下さいますか」
「分かりました」
エミリアはフレディと別れて、ルイスの部屋へと入った。
ルイスはぼーっとベッドから上半身を起こして窓の外を見つめていた。
「お疲れ様です」
「おぅ」
「具合はどうですか?」
「ぼちぼち」
「さっきフレディ副官にお会いしたのですが、ゆっくり休んでくださいと言ってました」
「うん。お前はもう平気なの?」
「はい。ご迷惑をお掛けしました」
「お前の魔力は他の奴らより高いのかもしれないが、無限にあるわけじゃないんだから、ちゃんとコントロールして使えるようになれよ」
「どうすれば防御魔法を破られずに済むか分かりません……」
「それは日々の訓練で覚えていくしかないよ」
「はい……」
そうは言っても、また防御魔法が破れて、ルイスを傷つけてしまったらと思うと、エミリアは怖くて仕方がなかった。
「……あの、差し入れ持ってきました」
エミリアは膝に置いていた手提げ袋の中に手を入れた。
「お見舞いに何を持っていけばいいか分からなくて……きっと花は要らないでしょうし、食事作ってきました」
手作りなど困るだろうかと、エミリアが躊躇したのも束の間、「マジ!?」とルイスの目の色が変わった。
「あ、はい……お嫌でなければ……」
エミリアはルイスの豹変ぶりに驚いた。普段きつい目つきで仕事以外に興味がないという感じなのに、こんな興味津々な顔もするのか。
「病院食以外の物を食べても良いのか分からないので、無難にパンを作ってきました」
「くれ!」
「は、はい……」
エミリアが差し出したパンをルイスは即座に口へ運んだ。
「病院食、少ないんですか?」
「少ないし不味い。やっぱりお前の作ったものは美味いな」
「ありがとうございます」
以前、一度だけエミリアは、ルイスとロミオに夜ご飯を作った事がある。
ルイスは1つ目のパンを食べ終え、すぐに二個目に手を伸ばした。
喜んで貰えると、作った甲斐があるなとエミリアは思った。
「あー、そうそう。聞きたいことあるんだけど」
ルイスが手で口を拭いた。
「何ですか?」
「お前の両親ってどんな人だったの?」
ルイスの過去形での質問に、エミリアの両親はすでに亡くなっている事を、ルイスは知っているのだと気付いた。
「2人とも普通の田舎の農民ですよ」
「そうか。魔力測定がエラーになる件だけど。以前魔法技術研究所から借りて来た魔力測定器、人間やモンスターの魔力が測れるんだが、全ての生物を網羅してる訳じゃなく、例えばエルフとかは測定不能になるんだ」
「エルフですか。私エルフじゃないですよ」
エミリアは耳をルイスに見せた。エミリアの耳は、エルフのようにとんがってはいなく、至って普通の耳だ。
「両親も?」
「普通の人間ですよ」
とは言ってみたものの、両親の事は分からない。父親に関しては、自分が産まれてすぐ亡くなったので顔も覚えていない。
「一度血液検査してみる? 何か分かるかも。まぁ、お前の自由だけど」
ルイスが言葉を選び気を遣いながら話している事にエミリアは気付いていた。魔力測定器がエラーになる事はエミリア自身も気になっている。ルイスは、わざわざ研究所から魔力測定器を借りてまで調べてくれようとしてくれた。
「血液検査してみます」
エミリアは答えた。
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