第27話 先輩が入院したのでお見舞いに行きました①

 アーデルランド軍イル師団駐屯地内のはずれに軍病院がある。

 ルイスとエミリアはそこへ入院する事になった。


「エミリー。大丈夫?」


 昼休み。ソフィアが病室のベッドの上で休んでいるエミリアの元にやって来た。


「ソフィア! 来てくれたんだ」


「うん。ガーネット小隊長が教えてくれて……。びっくりしたよー。キマイラと戦ったんだってね……。怪我はどう?」


 ソフィアがとても心配そうな顔つきをしている。


「私は大丈夫。念のための検査入院しただけで夕方には退院なの。明日明後日はお休みもらってるし」


「そう。でもあまり無理しないでね」


 食べれるか分からないけど、と言いながら、ソフィアがヨーグルトやパン、ドリンクを机の上に置いてくれた。エミリアはお礼を言い、キマイラ戦の詳細をソフィアに話して過ごした。


 暫くしてエミリアが時計を確認して言った。


「そろそろ仕事場に戻らなきゃだよね」


「エミリー、一人で大丈夫?」


「大丈夫だよ」


「そう……何かあったらすぐ言ってね。今日はゆっくり休むんだよ」


「ありがとう。とりあえず、先輩も入院してるから、少しだけ顔出してすぐ帰るよ」


 エミリアは笑顔でソフィアをベッドの上で見送った。



 夕方の診察後、エミリアは、病室に戻り荷物をまとめて、ルイスの入院している部屋に向かった。



 私がもっとしっかり防御魔法を使えていれば、先輩は大怪我を負わなかっただろう。その後もすぐに回復魔法を使っていれば。



 エミリアは不甲斐ない己を悔やんだ。


「失礼します」


 エミリアはノックをしてルイスの入院している部屋に入る。


「おう」


 6畳ほどの個室にベッドが1つ。ルイスは上半身を起こして、折りたたみ式の食事用テーブルに、書類を広げ、仕事をしていた。左手右脚にはギプス。点滴をつけた右手でペンを持ち、書類を睨んでいる。こんな状態でも仕事をしなければいけないのかとエミリアは思った。


「点滴外れてしまいますよ」


「うん……お前、退院?」


「はい。あの……手伝えるものがありましたら何でもやりますけど」


「いや、大丈夫。帰ってゆっくり休め」


「すみません……」


 本当はもっと言いたいことがいっぱいあったが、邪魔になりそうな気がして、エミリアは早々に部屋を出た。



 その日は、とても疲れていたようで、エミリアはベッドに入った途端熟睡した。


 翌日は一日中、部屋でのんびりと過ごし、エミリアは考えた。



 ちゃんとお見舞いに行った方がいいのでは?

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