第24話 キマイラとバトルします①
巡回を始めて30分。
ルイスは、牧草地でモンスターに追いかけられている男を発見した。
「うぉ。やばいな」
すぐに下降し、男の救出に向かう。
「あれ、なんですか!?」
モンスターの一つの胴体に、ライオンと山羊と大蛇、三つの顔が付いている。
「キマイラ! お前本当に訓練学校卒業したのか!? S級モンスターだよ!」
「S級モンスター!!?」
エミリアは初任務で遭遇したミノタウロスを思い出し、急いで障壁魔法を唱えた。男は間一髪キマイラに襲われることはなく障壁に守られた。
「アーデルランド軍だ。貴方を保護する! そこから動かず待機していて下さい!」
上空からルイスが男に声をかけた。
男は怯えきった表情で返事をした。
「キマイラの出現! 至急ブルスト小隊に応援を求む!」
ルイスは通信機を起動していた。ルイス班のカーターにもコンタクトをとった。
「応援が来るまで二人で戦うぞ」
「は、はい……!」
S級モンスターは、エミリアにとってはトラウマなのだが、村人の安全を守る為、野放しにはできない。
ルイスの足元に薄群青に輝く魔方陣が浮かび上がる。高濃度の魔力が集まり、一呼吸置いた後に、幾重もの氷柱がキマイラを襲う。
ルイスは、村人から離れての戦闘を試みるが、キマイラの第1目標は依然村人から変わらない。氷柱が直撃したにも関わらず、ルイスには目もくれずに、村人を襲おうと障壁に体当たりを繰り返す。
「民間人に障壁を張ったまま、俺たちにも防御魔法かけれるか?」
「はい。やってみます」
エミリアは、自分が唱えられる最大限に強い防御魔法をルイスと自分へかけた。
「上出来だ。民間人までの障壁射程範囲内で攻撃を開始する。魔法射程距離は?」
「え、と……5メートルくらいです」
「5メートル? さっきは15メートルはあったぞ」
「え、そうですか……」
エミリアは冷や汗が出た。自分の魔法射程距離をきちんと把握していなかった。
「民間人からの距離15メートル以内で行う。蛇の牙には毒があるから気をつけろよ」
「はい……!」
15メートルだなんて、酷い命令をする。自分達への防御魔法と、民間人への障壁、両方維持出来るだろうか。S級モンスターから直撃を受けたら死んでしまうだろう。絶対に失敗出来ない。
ルイスは再度氷魔法でキマイラを攻撃。
キマイラは、痛みで怒り狂い、こちらへと向かってきた。
鼓膜が破れそうな程の咆哮。
エミリアは恐怖で身体が強張り、箒を掴んでいる両手が震えた。
ルイスは、キマイラの物理攻撃を、箒で巧みにかわしながら、隙をついて攻撃魔法を唱えキマイラにダメージを与える。
攻防戦ののち、キマイラは口から火炎を吐いた。
エミリアは、急ぎ対魔法防御の魔法を唱えた。
視界が火炎の煙に覆われ、煙の中から尻尾が振りかざされた。
ルイスとエミリアは後方へ飛ばされ、地面へと叩きつけられた。
耳鳴りと背中に激痛が襲う。何が起こったのかエミリアには瞬時に理解出来なかった。
防御魔法が破られた……?
対物理防御の魔法は、エミリアができる一番強力なものをすでに唱えていたのだが。エミリアは、頭が真っ白になった。
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