第23話 「タイチョー」と呼んでみました

 翌日、ルイスの運転する箒で、担当領域を巡回しながら、エミリアはもやもやと考え事をしていた。ある事を言おうと決意し、勇気を振り絞った。


「天気いいですねー」


「そうだな」


「た、タイチョー……」


 言った! エミリアはルイスを「先輩」呼びしていた事を気にしていた。看護大学時代、年上の方を「先輩」と呼んでいたので、ルイスにも同じように対応してしまっていた。「中佐」は漠然と偉い人と認識してはいたものの、どの位偉いのかよく分かっていなかった。ルイスが第1箒兵部隊で一番偉い大隊長と知ったのも、周りから「隊長」と呼ばれているのを知ったのも、入隊後、時間が経ってから。


 勉強不足な自分が悪いのだが、先輩も言ってくれれば良かったのに、とエミリアはおどおどとしながら、ルイスの言葉を待った。


「なんか気持ち悪い」


「え」


「先輩でいい」


「え。そ、そうですか?」


 予想外の返答にエミリアは戸惑った。

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