第22話 触れられると緊張します

 エミリアはルイスに呼ばれて大隊長室にいた。


「やっと届いた」


 ルイスがダンボールを机の上に置き、中から機械を丁寧に取り出す。


「何ですかこれ」


 金色の大きな精密機器。メーターのようなものが付いている。


「お前、魔力測定でいつもエラーになるだろ。だから国立魔法技術研究所から高機能魔力測定器を借りてきた」


「高機能魔力測定器……」


 エミリアは測定器を見つめた。エミリアが知っている測定器より、大きく重量感があり、高価な雰囲気を漂わせている。


「これ、国内に2台しかないから。10万MPまで測れる」


 とても希少なものではないか。 エミリアは冷や汗が出た。


「通常の測定器でも2万MPまで測れるし、1万MPを超える者は上級魔術士でもそういないんだけど」


 ルイスは説明書を見ながら測定器の電源を入れ、試しに自分の魔力を測る為、測定器に手を置いた。エミリアはルイスの魔力結果が気になり、測定器を覗き込んだが、ルイスはすぐにかざした手を引っ込めてしまった。


「次、お前」


 隠さなくてもいいじゃないか、とエミリアは目を細めてルイスを見つつ、緊張して少し汗ばんだ手を測定器の上に乗せた。


 ルイスと2人でメーターを覗き込む。


 しかし、すぐに振れるはずの針が、ピクリとも振れない。


「使い方、合ってます……?」


「合ってるよ。おかしいな」


 怪訝な顔でルイスがエミリアの手を避けさせ、自分の手を乗せる。


 すぐに針が右回りに動き出す。


 エミリアはメーターを凝視した。


 これは1目盛で何MPなのだろう。


 エミリアがルイスの魔力値を理解する前に、また手を引っ込められた。


「もう一回やってみて」


「はい」


 エミリアは手を乗せるが、やはり針は振れない。


「しっかり押し付けてる?」


「やってますよ」


 エミリアが返答するなり、ルイスはエミリアの手をいきなり掴んで、まじまじと手のひらを観察した。


「な、何もないですよ!?」


 エミリアの心臓はドキドキと早く鼓動した。異性に手を触れられる事などないからだ。


「おかしいな……。血に反応するらしいんだけど、お前ちゃんと血流れてるもんな」


「あ、当たり前ですよ。失礼ですね」


 エミリアは、離された右手を支えて胸に当てた。


 何故魔力測定器が反応しないのだろうか。まさか自分の魔力が10万MP以上だと言うことはないだろう。


「よし、撤収!」


 ルイスは魔力測定器を片付け始めた。


「え!? 私まだ魔力分からないままなんですけど!」


「とりあえず今日はデスクワークしてろ」


 ルイスに部屋から追い出されたエミリアは、大隊長室の前で途方に暮れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る