第5話 箒兵部隊寮へ引っ越します
デュポン暦2020年3月末
エミリア達卒業生は、寮の荷物をまとめて、訓練学校から軍の寮へと引越し作業を行った。
ソフィアは衛生隊寮、ゾーイは歩兵部隊寮、エミリアはレイと二人箒兵部隊寮へ向かう。
「何号室? 私325号室」
レイが箒兵部隊寮の入口でエミリアに尋ねる。
「私209号室」
「一緒の部屋じゃないんだね。同期の女子の箒兵なんて数人だろうに」
レイが前を歩き、先に二階にあるエミリアの部屋を2人で探す。
が、209号室には別の4名の兵士の名前が書かれていた。
レイが不思議に思い、紙に書かれているエミリアの部屋番号を見直した。
「エミリア! 違う!」
レイが大きな声を出す。
「あんた士官寮だ! そうか、士官のパートナーは士官寮になるんだ! えー、いいな!」
「えぇ……?」
エミリアも紙を見直すと、確かに士官寮と記載されていた。
「士官寮は4人部屋じゃないと思うよ」
レイに羨望の眼差しで見送られ、エミリアは兵卒寮を出て、1人、士官寮へと向かった。
しかしエミリアの足どりは重い。
レイちゃんは羨ましがっていたけど、士官だらけの寮で住むなんて、仕事後も落ち着けないのではないか? レイちゃんと同じ兵卒寮が良かった。
と、エミリアは深くため息をついた。
士官寮の209号室に到着すると、確かに自分の名前が記された表札があった。
まさか、と思い部屋の扉を開けると、玄関を入って右側にキッチン、左側にシャワールーム。奥に進むとエミリアにとっては充分な広さのリビングがあった。ダイニングテーブル、ソファー、本棚、必要な家具は全て揃っている。そして部屋の一番左奥にカーテンで仕切られてベッドが一つ。
一人部屋だ。なんということだ。待遇が良すぎる。
エミリアは逃げ出したい気持ちになった。
部屋の外に放置していた荷物を取りに戻る。すぐ右隣は電気室。左隣の角部屋の名前を確認し、また血の気が引いた。任命書に記載されていたパートナーになる人の名前だ。
部屋も隣なんて、全くくつろげないではないか。
エミリアは、衛生隊で素敵な先輩女性とパートナーを組みたいと思っていた。
前線部隊だし、パートナーは、厳つく怖いおじさんだろうか。しかも中佐。自分は、偏った魔法しか使えないのに、箒に乗れないのに、こんな人選間違っている。
エミリアは青白い顔で部屋へ戻り、荷ほどきを行いながら、喘いだ。
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