第53話 大隊長会議
デュポン暦2022年9月
来月行われる隣国リパロヴィナとの軍事合同演習のための会議が開かれる事となった。イル師団本部会議室にて、箒兵部隊の大隊長達が集まる。ルイスが会議室に入るとすでに数人の大隊長が席に座っていた。
「よ! お疲れ! 元気?」
ルイスに喋りかけた男はレイモンド中佐。第7箒兵大隊大隊長である。大柄でがっしりとした腕は古傷が目立つ。性格は明るく漢気溢れ、隊員からの人気も高いが無類の女好きである。
「ぼちぼち」
そうルイスが答えた後、次々と他の大隊長達も会議室に入り席につく。
「もうリパロヴィナとの合同演習の時期か。一年は早いな」
ルイスとレイモンドの向かい側の席についた男、第2箒兵大隊大隊長のガストン中佐が笑いながら言った。笑うと目尻に皺が寄る、一見気の良い中年男。愛想が良く、話題が豊富でよく飲み屋の女に好かれているが、隊では権力を振りかざし、病む隊員も多い。ルイスは当たり障りのない関係を取っている。
「年々、早く感じますよね」
ガストンの隣の席の男、第5箒兵大隊大隊長アルバンが言った。こちらはルイスが第6箒兵大隊にいた頃の上司で、先に出世していったルイスを快くは思っていない。アルバンは去年少佐に昇格し第6箒兵大隊中隊長から第5箒兵大隊の大隊長となった。魔法知識に長けているが潔癖症で細かい性格。鋭い一重の目は冷たい印象を与えている。
リパロヴィナ国との軍事合同演習はおよそ二十年前から始まった。一年置きに交互の国で開かれている。
リパロヴィナ国が魔法国家として舵を切ろうと国策を転換し始め軍事的にも大いに魔法を利用するとの決定がされてから、魔法先進国であるアーデルランドに合同演習の話を持ち掛けたのが始まりだ。
「しかし意味があるのかね」
話を切り出したのはガストンの隣に座る壮年の男、第10箒兵大隊大隊長バイロン。
「あの国は魔法を戦術的に取り入れたいと言いながら、今だ剣ばかりを振り回している」
「確かに奴らの魔法はチンケだな」
バイロンとガストンが話をしている。
「剣術が秀でてるから、あまり魔法は必要ないんですかねー」
レイモンドがヘラヘラした顔をして言った。
「剣術なんて時代錯誤だよ」
バイロンがリパロヴィナ国を小馬鹿にするように言った。
「クールですけどね! 俺はリパロヴィナの刀欲しいです」
「レイモンド君はそうだろうね」
会議室が笑いに包まれる。
レイモンドは魔法銃の先駆者で、武器マニアだ。まだまだ開発発展途上の魔法銃は魔力操作がとても難しい。
「さーて、そろそろ会議始めるよー」
アンドリュー中将が会議室に入ってきた。
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