第7話 初任務です①
翌朝0530分。
エミリアは、決められた起床時刻の30分前に部屋を出て、隣の部屋の扉の前で仁王立ちした。
0600分。
部屋の中から、ガタゴトと音が聞こえ、暫くしてからパートナーの男、ルイス
が出てきた。部屋の目の前に待ち伏せをされ、ルイスは「うゎ!」と大きな声を出した。エミリアは昨日、一日中グラウンドにいて、朝食も昼食も食べれなかった。今日こそは絶対にご指導してもらう。そう強い意志で、ルイスを見つめ、挨拶をした。
「おはようございます! 宜しくお願いします!」
ルイスはとてつもなく不機嫌な顔をした。
早朝0630分。
昨日と同じ演習場で点呼・朝礼。
0700分。
寮にて朝食。エミリアは金魚のフンのように、ルイスにつきまとった。
0830分。
清掃の後、また演習場へ戻り、体力錬成。
エミリアは、隊員達に無視をされているが、皆と同じ場所にいる分、置いてきぼりにされた昨日よりはマシだと思った。
1000分。
一斉に隊員達が箒で飛び去った。「巡回」という言葉が聞こえた。
指示を貰う時間もなく、エミリアはまた一人演習場に取り残された。
この日も一日中、第1の隊員達は戻って来る事はなかった。
翌朝。
エミリアはまたパートナーの部屋の前で待ち伏せ。
今日こそは箒に乗れない事を言おう。仕事の指示をもらおう。
そう固く決意をしていた。しかし0600分を過ぎてもパートナーは現れない。おかしいと思い、扉に耳を近づけるが、物音がしない。
居ないんだ。
エミリアは急いで演習場に向かったが、第1の隊員は誰一人としていない。
その後すぐさま勤務棟に向かった。ロミオがそうしていたように、エミリアも事務作業をしている兵士に、ルイスの居場所を聞いた。
場所はイル師団から15キロ先のボージェの森。森の中にダンジョンが出現したため、第1箒兵大隊はダンジョンの近くで陣営を張っているらしい。
問題はどうやって目的地に行くか。エミリアはロミオに相談したかったが、今は授業中だ。馬車が頭をよぎったが、一般人である運転手を危険な場所まで連れていけない。
徒歩だと3時間ほどか。今出発すれば昼には到着できるだろうか。
歩くしかない。
エミリアは地図、コンパス、水筒、食べ物必要だと思われるもの全て携帯し、一人ボージェの森へと出発した。
書き置きは部屋に残してきた。何かあった際は、ロミオやソフィアが探してくれるだろう。その時は2人に心配をかけさせる事になるが、1人仕事をせずにいる今の状況がエミリアには耐えられなかった。
エミリアは地図を見るのは得意な方であった。
懸念していたモンスターとは遭遇する事もなく、無事ボージェの森に到着した。そして森の手前にアーデルランド軍の野営地を発見。
エミリアは、野営地で休んでいる兵士にダンジョンの場所を聞いた。
野営地から鬱蒼とした森へ入り、しばらくして開けた場所に出た。
そこには、巨大な城のようにも見えるタワー型のダンジョンがそびえ立っていた。
それは、無機質な石のような材質で出来ていて、気味の悪い雰囲気を醸し出している。この一帯に木や草が生えていないのは、ダンジョンが出現した為だろうか。
ダンジョンは魔界から突如として現れる。早急にダンジョンを支配するモンスターを倒さなければ、モンスターが増え続け、人間界は危険に晒される、とエミリアは訓練学校時代に習った。
エミリアはダンジョンを見るのは初めてだった。ダンジョン内には魔物がたくさんいるという。エミリアはゴクリと唾を飲み込んだ。
ダンジョン入口では、複数の兵士達が出入りしていた。怪我人が地面に座り休んでいる。物資を運んでいるものもいる。
エミリアは身震いした。足がすくむ。
怖いが何も出来ないのは嫌なのである。せめて、ルイスに合流して、回復魔法役くらいはしたい。
エミリアは勇気を出して前へ進んだ。
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