VSゴルゴダ【1】
「守ります! エメ!」
『みんな! やるのだわ!』
真凛さまとエメリエラの聖なる光が、この場の二十五人を包む。
これは、俺にもわかる。
魂と体を保護する魔力が微弱な光になって、俺たちを包んでいるんだ。
まさに奇跡の化身だな。
『戦巫女というよりは、女神の神子だな』
「ああ。ならば、俺たちはそれを守るための盾となり剣となろう」
『うむ! ゴルゴダは五百年前から気に入らんかったし、決着をつけよう』
とはいえ数が多い。
誰も殺させないために、真凛様とエメリエラの保護光膜は必要不可欠。
影鬼たちの狙いは、この保護光膜の発生源である真凛様とエメリエラ。
俺たちだけでは到底戦力が足らない!
「人間の王子たち! ゴルゴダをなんとかなさい! 真凛はわたくしたちが守ります!」
「僕もエメリエラ様をお守りしますよ! 妖精族全員に告ぐ! 異論はありませんね!?」
「「「「ないでーす!」」」」
「魔法だけでは不安だろう、我ら獣人族が壁となる! いいな、ジオ!」
「こんな理不尽な死に方は本意ではねぇし、俺たちは勝者、強者に従う! 命令すんなガイ!」
えぇー……獣人族身内で早くも仲間割れするなしぃー!
だが、人魚族、妖精族、獣人族が真凛様とエメリエラを守ってくれる。
え、ちなみにエルフは?
ちら、と見ると、まだ悩んでいる様子。
というより、困惑してる。
影鬼をいなしながら、四人のエルフが自分たちの中で一番地位が高いだろうマーケイルを見て指示を仰いでいるようだ。
当のマーケイルはもはやなにを信じればいいのか、という様子。
無理もないけどそれでは困るんだが。
「……ヴィニー、ケリーとエディンを連れて先にゴルゴダを倒してくれる?」
「レオ」
「エディンとケリーにも“戦果”がほしいでしょう? エルフ族は僕が」
「……わかったよ。お前も大概お人好しだよなぁ」
「仲良くしていきたいからね」
でも五人で戦う予定だったのに、三人でってホント難易度鬼で笑う。
レオがマーケイルの隣に立ち、助言しながら統率を取る。
統率者がしっかりとしていればエルフは強い。
風の魔法と遠距離攻撃で、最前線で敵を殴っていた獣人族に襲いかかる数を減らしていく。
だが、影鬼は影が覆うところから湧き出す。
やはり根本的な解決——ゴルゴダの討伐が急務!
「ってわけで俺たちはあの鬼神の相手だ。よろしく頼むぞケリー、エディン」
「よりにもよってお前らとかよ」
「よりにもよってエディン様に背中を任せることになるなんて」
いや、ほんとに。
「だがまあ、『ウェンディール王国』の王の騎士として誉れ高い。ウィンドウォール!」
『ギャ!』
ゴルゴダの周りにいた影鬼を、風の壁が押し返す。
ゆっくり前進してくるゴルゴダには、デカさからなのか通用しないが……まあ、通用するとは思ってなかった。
「ねぇねぇ、エディン様、ヴィニーもいるのでアレ使ってみませんか」
「いいな、やってみるか」
「?」
ケリーがニコニコしながら指差すので、その時点でちょっと嫌な予感はした。
エディンも腹黒を隠しもしない『ニヤァ……』って笑みを浮かべたのでますます「俺なにに巻き込まれるの」って感じだ。
「ヴィニー! 根本から斬れ!」
「はい!?」
「グランドランス!」
ちょっと容赦のないグランドランスが、地面から氷柱のように、剣山のように次々生えてくる。
あれ、普通に殺傷能力高い魔法なんだよ。
え、それを根本から、え? 斬れ?
斬れって言った?
『主人! 主人の主人の指示だろう!』
「ややこしいけどそうです! 鈴緒丸!」
『ははは! 奇妙な指示だな!』
確かに鈴緒丸からすると『
その指示となると従わなければならない。
グランドランスの根本を刈り取るように斬ると、たけのこの
いや、これ、俺らが危険では?
え? どうすんのこれ。
全部斬る?
ケリーを守るには斬った方が……。
「ウィンド・デッド・レイン!」
「!」
『!!』
えぐい。
ケリーが生やした人間サイズの土岩の槍を、俺が刈り取り宙に浮かした。
その瞬間を狙って、エディンが風魔法で土岩の槍の先端をゴルゴダに向くよう繊細な操作を行い、畳みかける。
そう、ケリーお手製の土岩の槍をゴルゴダの頭上に雨の如く降らしたのだ。
えぐい。
あれ、妖精族に使う予定だった大技のひとつだけど練習するのが危険すぎて聖域の訓練場で試してみるか〜、とか笑ってた合体魔法技じゃん。
実戦のぶっつけ本番で「やろ!」「やるか☆」ってやるやつじゃねーよ。
えっぐいわ、こいつらほんと。
「……いやいや、無傷とか」
「っ……」
だが、ケリーも別な意味で笑っちまう。
あの攻撃で倒れたのは影鬼のみ。
ゴルゴダは、無傷!
『悪くないが神力で体を守っておる。主人たちが戦巫女とエメリエラに守ってもらっているこれと同じ原理だ』
「マジか! どうしたらいい!?」
『神力は魔力では傷つかない。もう一段階上の力ら霊力か、同じ神力でなければ。我が主人は余という付喪神が憑いておるから、あの力で防ぐ術はない』
「つまり、ヴィニーと鈴緒丸ならばあれを貫通できると?」
『然り』
え、俺と鈴緒丸じゃないとダメなの!?
そんな縛り、ゲームにはなかった!
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