最終戦へ

 

「!」


 ズズズズ……と、数人の、洋・中・和と様々な鎧を纏った巨人が姿を現す。

 あれは、ゴルゴダ以外の武神族か!

 それから女神族が四人。

 アニムが「きゃーっ!」と騒がしい。


『姿を表せ、ゴルゴダよ。いくら我らが下界生き物どもに興味がなかったとはいえ、よくもまあ、これほど長きに渡り我らの目を欺いてこれたものよ』

『もう無駄だぞ! わらわたちは魂が減っているのにも気づいているからな! よもや本当に禁忌を犯していたとはな! 制裁だ! 無駄な抵抗はやめて出てこい!』


 言葉を発したのは和の鎧を纏った武神とイシュタリア。

 イシュタリア、マジ美人の迫力やばい。

 他の武神もかなりお怒り気味なのが空気だけで伝わってくる。

 さあ、お前の味方はどこにもいないぞゴルゴダ。

 観念して出てきて土下座で謝るか、それとも。


「出てこないのであれば、代理でどなたか我々の優勝を宣言していただけませんか? そして、我々の望み——五種族間の、不不可侵条約と和平条約締結にお力添えいただきたい」


 ケリーのやつ、ゴルゴダを無視して話を進める気だぞ。

 それはそれで無慈悲だな!


『はいはい! わたくしが立会人になりますわ!』

『! で、では、この力の武神タイタンも協力しよう!』

『私も認めるわ』

『我もお手伝いします』

『ナターシアが……!? う、うむ、ならば守人の武神であるこの俺も賛同する』

『おう! わらわも人間族を勝者と認めて五種族間の不可侵と和平に賛成するぞ! バーサーク、サターン、お前たちはどうする!』

『我は拒絶の武神。認めぬ』

『余は構わぬ。下界の些事に興味はない』


 なんか漆黒の、独特の鎧を纏った武神……あれが『終末の武神サターン』か。

 他の武神より独特の空気がある。

 ケリーの一言のおかげで、ゴルゴダ抜きで話が進んできた。

 このまま戦わずに人間族の勝利と、五種族間の不可侵条約、和平条約が結ばれるだろうか?

 ゲームだとゴルゴダを倒したあとに、女神族が中心になって成立するのだが。


『み、認めぬ……認めぬぞ』

「!」

『あと一人、あと一人の魂を喰らえば、俺は進化する。それなのに、それなのに! 戦争を二度と行わぬというのなら! 今この場でその一人の魂を喰ろうて進化してやる!』


 戦わなくてもいい、と淡い期待は打ち砕かれた。

 女神族と武神族の助力を得られると、安心し切っていた俺も悪い。

 天神族と戦争参加者たちとの間を黒い幕で覆ったゴルゴダが、上空に現れる。

 鬼だ。

 どす黒い顔と、二本の角。

 顎まで伸びた牙と屈強な肉体。

 いや、まあ、確かに『難易度:鬼』とは聞いている。

 でもゴルゴダってゲームの時は巨大な顔だけで、戦う時もその顔と腕をそれぞれ沈めていく系ってヘンリエッタ嬢から聞いてたんだけどな?

 五メートル級の巨人……いや、鬼なんたが。


『一人、たった一人だ。お前らのうちの誰か、一人でも喰らえば俺の神格は上がる! 創世神ティターニアの横に並び立つことが叶うのだ!』

「ティターニアと、並び立つ?」

『神とは創世神を一等神とし、二等、三等と“格”にランクがあるのだ。余は付喪神だから準八等下位だな。あ、これは神力の格の話であるぞ。徳神格はまた別ぞ』

「ややこしいということはわかった」


 なんかとりあえずランクがあるらしい。

 で、その神力のランクだと鈴緒丸は準八等下位、今のエメリエラとゴルゴダは一等下位。

 他の天神族たちは三等下位らしい。

 神力の格なのであれだ、ドラゴンでボール集めるアレに出てくる戦闘力の数値みたいな話だ。

 他にも徳神格とかいう“実績”やら“信仰”による格があるらしいが、今はそれどうでもいい!

 ややこしいし!


「俺らの魂を一つでも喰えば、創世の女神ティターニアと同格になるってのか?」

「ガイさん!」

「冗談ではないわね。舐めてんのかしら?」

「クレヴェリンデ様!」


 お怒りモードの獣人族と人魚族。

 特にクレヴェリンデは青筋がとてもよくわかるので大変おっかないです。


「ふざけるな! 人間族に敗北したのは、不本意だが……創世の女神ティターニアと同格になるために、天神族の禁忌を犯したゴルゴダを我らエルフ族は認めないぞ!」

「マーケイル様!」

「男の武神が女神ティターニア様に並び立とうなどとおこがましい等にも程がある。万死に値しますね」

「ア、アニムさん……」


 エルフ族と妖精族は最大信仰神がティターニアなのか。

 ……アニムの顔がマジすぎてちょっと気持ち悪いが……これは完全にゲーム通りの展開だな。

 だが、それならそれで!


「周りに気をつけろ! 情報通りなら出るぞ!」

「!」

「出るってなにが!? ……うわぁぁあああぁっ!」


 エディンが俺たちよりも後ろにいる奴らへ叫ぶ。

 出るって決まってんだろ、ゴルゴダの目的は“たった一人でいいから喰い殺す”だぞ。

 ゴルゴダの影が俺たちを囲み、その影が鬼の姿に変わる。

 ゴルゴダの影。

 ゲームで“ヒロインたちがゴルゴダと戦う”ために、その他の戦争参加者たちの相手となる雑魚という名のモブ敵である。

 戦争参加者たちの誰か一人でも殺されて、魂を喰われればこっちはゲームオーバー。

 しかし——。

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