VSゴルゴダ【2】

 

「なら俺とケリーで周りの影鬼は振り払おう。雑兵の相手なのは癪だが、あんな汚いものがいつまでもレオの側をウロウロしている方が我慢ならん」

「ヴィニー、いいな……羨ましい……。アレを殴れるのお前だけかよ……。あ、バフいるか?」

「も、もらう……」


 ケリーの笑顔とセリフが怖すぎる。

 けど、大地の加護というバフはありがたい。

 防御力が向上する強化と、武器の攻撃力がアップする効果を持つ。


『主人の主人は雷蓮に似てるな』

「え」


 雷蓮——腹黒い感じなのはうっすら記憶にあるがケリーみたいだったってことか?

 え、ヤバさが跳ね上がったよ?

 ケリーみたいな性格と腹黒さで、多種族を皆殺しにするほどの実力と躊躇のなさを持ってるとか最恐最悪じゃん……!

 やだもう怖すぎ!


『魂を寄越せ! 虫けらども!』

『虫けらの魂に縋らなければ、存在していくこともできなくなった堕ち神がほざきよる』

「ありがとう、ケリー! 行くぞ、鈴緒丸! ゴルゴダ、もう終わりにしよう」


 二ヶ月、お嬢様と離れる覚悟はしてきたが、こいつ倒せばあと帰るだけだと思うともうサクッと殺してサクッと帰ろう!

 正直モノローグとかぶっ飛ばしてお嬢様とレオの結婚式の準備と、さっさと陛下を退位させてレオの戴冠式の準備とかしたい!

 お嬢様の花嫁衣装は俺が手縫いする!!

 お嬢様、もうすぐ、もうすぐお救いできますよ。

 あなたの破滅エンドは俺が完全にぶっ壊す!

 助けていただいたご恩、名をくださったご恩、そして、生きる道をくださったご恩……ようやくお返しできる。

 レオなら絶対にあなたを不幸にすることも、傷つけることも、悲しませることも、死なせることもないでしょう。

 俺の役目はきっとそこまで。

 泣きたくなるほど寂しいけれど、あなたが生きて、幸せならそれでいい!

 っていうか花嫁衣装のお嬢様を見たら、地面に突っ伏して泣く自信しかないけどな!

 まあ、それはそれで幸せなんだと思う!

 だから、俺はその未来を——お嬢様が幸せになる瞬間のために!


「鈴流祇流 地の組 一閃」

『無駄——っ!?』

『無駄ではないなぁ、余はお主と同じ“神”! 我が本体には神力が宿っておる。他の武具、魔法でも、お主に傷一つつけられんが余は別!』

『っ!』


 だが、思ったよりもダメージがない。

 というか、すぐに治りやがった。

 獣人以上のタフネスと防御力、そして自己再生!

 これは想像以上にキツい!


「ヴィンセント! スピードアップ! スルーアップ」

「! 助かる!」

「ついでにこれもだ! ファイトアップ! スモールヒール!」


 エディンの速度アップと回避アップのバフ。

 ゴルゴダの攻撃を避け、さらに攻撃回数アップのバフと小回復。

 俺も回復は使えるが、自分が思っていたよりもゴルゴダの攻撃を避けただけでダメージを受けていたらしい。

 くそ、腹立つくらい気の回る!

 感謝するの嫌だけどすごく助かった!

 エディンめ!


『ギィ! おのれ! 忌々しい!』


 ヤバっ!

 着地した瞬間、すでにゴルゴダの拳が振り下ろされていた。

 当たる!


「火焔連!」

『っ!』

「レオ!」

「もう大丈夫! 加勢する!」


 火焔が一閃。

 レオのおかげでゴルゴダの拳が止まった。

 ありがたいが、やはりレオの剣でもゴルゴダに傷一つつけることはできない。

 忌々しい、本当に!

 強化魔法とケリー、エディンのバフを重ねがけされても浅いダメージしか与えられねぇ!

 どうしたらいいんだこれ、無理ゲーすぎん!?

 さすが裏ボスとでも言えばいい!?

 でも絶対倒したいんだよ!

 どうしたらいい!


「鈴緒丸、なにかゴリッゴリにダメージ与える方法ないか!」

『純粋に余の神力が足らん。エメリエラの神力を借りることができれば、奴の神力の防御ごと斬ってみせる。主人の技術でなく、余の神力不足が原因だからな』

「だが……!」

「わたしたちもお手伝いします!」

「ま、真凛様! 大丈夫なんですか!」

「はい! ガイさんとクレヴェリンデ様が指揮をしてくれるようになったら、すごく効率的になりました! だからゴルゴダを早くなんとかしろってクレヴェリンデ様に言われました!」


 さすが。

 見れば確かにクレヴェリンデの合図と指揮で、四種族の統率が取れ始めている。

 ……逆らい難いもんな……。


『鈴緒丸、エメの力を貸すのだわ! どうやればいいのだわ!?』

『お前は祈る力が重要なのだろう? とりあえずなんとかなれ、と思えばなんとかなる』

『わかったのだわ! なんとかなれなのだわ!』


 雑ぅ!

 驚くべき雑な指示ぃ!


「皆さん、回復します!」

「助かるよ、巫女!」

「攻撃を避けてもダメージがあるのは厄介すぎるな。ヴィンセントの刀! これはなんとかならんのか!」

『攻撃を避けてもダメージを受けるのもまた、神力の効果だ。神力のない攻撃は通らぬが、神力を纏った攻撃は“攻撃した”“攻撃された”という事実になるのだ。直撃だと死ぬぞ』

「ホンット理不尽だな!」


 それを回避するのにも神力がなければならない。

 つまりゴルゴダの攻撃をうっかり受けても、即死しないのは俺と真凛様だけってことになる。

 最悪すぎるだろ!

 難易度鬼、ちょっとガチで鬼すぎる。

 っていうか神力ってここにきてそんなチートパワー設定出してくんの本当卑怯すぎない!?

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