マルグリット姫のお話

西の国の大きなお城に、マルグリット姫というお姫様がおりました。

絹のような栗色の巻き毛と、大きな澄んだ青い眼をしたとても可愛らしい女の子です。「マルグリット」というのはお花の名前で、周りの人間はみな、姫のことを本当のお花のように愛で可愛がり、甲斐甲斐しくお世話をしていました。

マルグリットは小鳥と、きれいなものを宝箱にしまうことが大好きでした。特にお気に入りが、アルファベットでM Fと彫られたハートのペンダントで、肌身離さず持ち歩いていました。

マルグリット姫は末っ子で、11人のお兄さんがありました。王様はたったひとりの娘を大層可愛がり、いつも

「マルグリットや、マルグリットや。お父様が良いものをあげよう。」

と、姫を甘やかしてばかりいました。


ある時マルグリット姫がお庭で遊んでいると、銀の翼をした金糸雀が飛んできてお姫様の指先にちょんと乗りました。

「あら、鳥さん、何かご用事?あたし今忙しいのよ。」

とマルグリットが言うと、

「ピーピー、チチチ、魔女の晩餐は美人の姫!花の姫様はさらわれる!」

と金糸雀が鳴きました。

お姫様はびっくりして、

「嫌っ、喋る鳥だなんて気持ちが悪い。あんたなんてどこかに行ってしまいなさい、しっ!しっ!」

と金糸雀のお尻をつまんで森へ放り投げてしまいました。

その後、「あたしは魔女に食べられるんだわ。餌になるあたしが不憫だから、だからお父様はあたしを贔屓していたんだわ!」

と、わあわあ泣き出してしまいました。

かわいそうなマルグリット姫は、しくしく泣きながらお城に帰りました。


夕食のときになると、お姫様は顔を青くしてぶるぶる震えながらテーブルに座っていました。

王様も11人の王子もマルグリット姫を見て驚き、そしてあわてて機嫌を直そうとしました。

「どうしたんだい、マルグリット。お前の笑った顔を見せておくれ。」

「笑えるものですか、あたしがどれほど怖い思いをしているのか、お父様には分からないんだわ!」

「何か怖いことがあるのかい」

そう聞かれると姫は、

「ま_ま_魔女に__あたしは今晩、魔女の餌になるのよ。銀の金糸雀が言っていたわ。魔女があたしを連れて行って、頭から足までばらばらにして食べてしまうのよ_!ああ!これが、悲しまずにいられて?」

と、泉のような青い眼からぽろぽろ涙をこぼしながら言いました。

それを聞くと王様は黙ってしまい、王子たちも目をきょろきょろさせてマルグリットを見ないようにしました。


マルグリット姫はお部屋に戻って、またわんわん泣きました。

泣いて泣いて、いつのまにか泣き疲れて眠ってしまいました。


ふと目が覚めると、マルグリット姫は汚くて狭い鉄の牢屋に入れられていました。

お洋服も、これまで姫が見たことがないようなみすぼらしいぼろきれに変えられていました。

「ここであたし死ぬんだわ。丸焼きにされて、ぺろりと食べられてしまうのね。」

かわいそうなマルグリット姫は、顔を真っ青にしてしくしく泣きました。










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箱庭の宝箱 ミモザモチ @mochimochimimoza

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