箱庭の宝箱

ミモザモチ

箱庭のお話


昔、昔のことだった。

物語が溢れ、互いの想像の窓を覗きあっていた幸せな世界があったそうな。

そんな世界でも、だんだんと{想像}と{嘘}とを履き違える人、鉄の塊で力を訴える人が増えてゆき、

色とりどりの言葉で紡がれた想像は軽蔑され、機械仕掛けの暴力を信じるようになったのだと。

しだいに、魔女や、妖精や、お姫様や、小人や、悪い鬼や、人魚や、騎士や、様々な空想は大人だけでなく子供たちからも離れていってしまった。

それに気付いた少女は悲しんだ。

その少女は、物語の大好きな少女だった。

誰にも言えず貯まった空想を、少女は自分の宝箱に閉じ込めた。

これからするのはそのお話。

少女が作った想像の箱庭に埋められた、宝箱の中のお話さ。

お前さんにも聞こえてくるだろう、鈴の鳴るような囁き声が。



「あのねェ、むかあし、むかしにねェ___」


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