第5話 選択

2度目の旅が始まろうとしていた。俺は日本の旅を選んだ。

前回の旅の興奮が全く冷めていなかった俺とは対象的に東海道線の始発列車はまばらな人影しかない。

しかし静かな車内は、これから続く長い旅に貴重な時間である。


今回も目的地を決めず感に従う旅。

前回身につけた旅感を活かす、良い風の吹く方へ、良い光の当たる方へ。



時刻は8時14分、熱海を出て33駅目の浜松駅。大勢の通勤、通学者たちにホームへと押し出され、豊橋行の車両に乗り換える。

9時21分8つ目の駅である豊橋に着き、今度は快速に乗り換え大垣へ向かう。そこから米原駅で姫路行きに乗り換える。時刻はお昼になろうとしていた。

空腹のまま、ペットボトルの水を胃に流し込む。まだ行ける。

それから約2時間、俺はまだ東海道線に揺られていた。

空腹が限界に達した頃、三ノ宮と言う駅名が車内のアナウンスから聞こえてきた。車内のドアの上にある路線図を見る。

三ノ宮、それは神戸駅の2つ手前であった。

ホームに着きドアが開き、それに合わせてホームへと降り立った俺は自らの足で改札へと向かう。

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あれから13年 朝野花子 @hanakoasano

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