第9話 なにがなんだか………


太郎は、勇者に呆気なく香織を連れ去られた外をボーぜんと眺めていた。


しかし、そのあと太郎はなぜか騎士団に取り押さえられ、先生と一緒にみんなのいる元の部屋に連れてこられた。


(くっ、香織………勇者奴、ぜってぇにゆるさねぇ!)


太郎は騎士団によって無理矢理、元のイスに座らされた。

太郎は物凄い怒りと殺気を周りのに放ち、騎士団とクラスメイトがガタガタと震えはじめ、恐怖で涙を流すクラスメイトまでいた。


戻ってきたのは先生と太郎だけだった事もあり、太郎と香織の幼なじみの双子の姉妹が太郎になんとか声をかける。


双子の姉マミが何とか太郎に訊ねる


「た、太郎、香織はどうしたの?」


そして、妹のマナが


「太郎、こわいよ。」


太郎は怒りとに満ちて周りに無意識に威圧を放っていた。


先程、話しかけた双子の姉がイスから立ち上がり、なんと今の太郎に怒鳴りつけるように話したのだ。


「太郎!いいかげんにして!香織はどうしたの?ちゃんと説明して!」


それでも、太郎は何も言わない。

そんな太郎の態度にキレたのか、太郎の方へ走り出さす。

しかし、騎士団が止めに入り、元の席に戻るよう注意された。


「ちょっ、太郎!いい加減にしないと……」


しかし、この双子の姉は強い!


「静かに席に戻って下さい。」




騎士団数人に諭され、席にもどさると先生から香織の話しをすると言う。


「ごめんなさい。先生が側にいながらこんなことになるなんて。」


「みなさんにお話があります。三ヶ日さんは先ほど、勇者によって連れ去られました。突然の事とはいえ、また勇者があらわれるとは思いませんでした。私も、騎士団の方々もまったく対応が出来ませんでした。本当にごめんなさい。」


みんなの反応は


「えっ?なにそれ。」


幼なじみの双子のマミ、マナは顔が真っ青だ。

この二人、実はいい所のお嬢様で香織や太郎の幼なじみ。


マミの性格はキツい。なので幼馴染みの太郎にはズバズバ物を言う。あの威圧の中で太郎に話しかける事が出来るのは、香織とマミぐらいだ。

しかしマミは実は女の子にはメチャクチャやさしく、それでいて凛々しい顔をしている。当然、モテモテだ。…………女の子に。これを言うと怒られるらしい。


妹のほうのマナは、髪も腰はぐらいまで長く伸ばしていて、姉と同じく凛々しい顔をしているが、どこかぽぁ~んとしていて、やはりしゃべり方も凄くやさしいしゃべり方をしている。当然姉同様モテモテだ。こちらは男子に。

但し、この外見にだまされると大変な目に合うらしい。……噂では姉のマミも震え上がる程怒らすとSに変貌するらしい。


話をもどす。先生の話しが続く。


「三ヶ日さんは勇者に拐われましたけど、命にかかわることは多分ありませんので、安心して下さい。取りあえず勇者がどこに行ってしまったのかを、みなさんの力……ギフトやスキルで探す協力をして下さい。」


「椿くん、特にあなたのスキルが必要です。嫌とは言わせません。まず三ヶ日さんを取り戻すのが先決です。」


「先生、ずいぶん勝手な事言ってますよね?僕達は勝手に知らない世界に連れてこられ、勝手に勇者だの英雄なんかを殺せだの、それに勝手に変な力つけさせておきながら、香織は勇者に拐われた。何回も理由があるんじゃないですか?まず、知っている事を話して下さい。なんの情報も無しに勇者を探すのを手伝えと。香織が連れ去られたら、今度はみんなで香織を助けましょう?言ってる事に何一つ、筋が通ってませんよね?先生、僕達はなにも悪くないのに。僕達はなぜこんな目に遭わなくちゃいけないんですか?」


「太郎、男のクセにヒスってんじゃないよ!あんた自分ばっかりだね。クラスのみんなもいるのに、何被害者気取ってんの?香織の方が、もっと大変な目にあってるかもしれないのに。本当にみっともなくて、幼なじみとして恥ずかしいよ!」


マミさん、さすがにキツイ。


「太郎、お姉ちゃんの言う通りだよ。太郎がしっかりとしなくちゃ。」


マナちゃん、何気に優しい。


(本当はその通りなんだ。これじゃあ、ただの八つ当たりだ。そんな事言ってるヒマがあるなら、香織を探す時間に当てなければいけないのに、ムカつくけどマミの言う通りだ。本当にみっともない。)


突然「ドンッ!」と言う音と共に、激しい地震が、訪れた。


先生が開口一番に。


「みなさん、地震です。早くテーブルの下に。」


そして先生は、出口の確保に動く。


騎士団は突然のことで驚き、床に屈んで誰かに祈りを捧げてる者や、この世の終わりだ~とか叫んでるものいる。


この世界に地震て言う概念が無いのか?

太郎は周りを見て思った。


騎士団や魔導師やメイド達は、ただただ、怯えるだけで何もしない。


先生はどうやら地球育ちなのか、余裕があった。そして太郎からしっかりと目を離さなかった。


突然、太郎の体の周りに白い靄のようなものが立ちこめ、その光景に監視をしていた先生は驚いていた。


「何なの?」


太郎のスキルの一つ、身体強化だ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、勇者に拐われた香織は…………


「ちょっと放して!いい加減にして!ちょっ、どこさわってるの!スケベ!変態!いい加減に降ろして!私を帰して!」


「香織、変態はないたろう?それにもうすぐだから、もうちょっとだけ我慢してくれ。」


勇者は信じられない程軽快に山の中を香織抱えながら、かなりのスピードで走っていく。





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