第7話 理不尽な要求


次々にクラスメイト達がなぜか静かに連れていかれ、次々と違う部屋に移動していく。

(あれだけ文句たらたらだったクラスメイト達が素直すぎる。)




意識がぼーっとしているようで、みんなは何も言わず歩いていく。太郎や香織も続いて歩き出す。

太郎の中で「おかしい、何で体が言うこときかないんだ?」

頭の中ではハッキリと意識があるのに太郎はそう思うだけで、結局はみんなと同じで順番に並んで歩いて行く。




先頭を歩いていた生徒が、次々と部屋に入っていく。

そこには現代日本人が想像するメイド姿と同じメイド達が生徒の数だけいて、先頭から入ってきた生徒達はそれぞれに案内されて、1人1人に長テーブルのイスに座っていく。


(地球にはこんなに大きなテーブルは無いと思う。)

太郎は何気に関係ない事を考えていた。


それぞれに座っていった後、メイド達から紙がそれぞれに配られ、その紙はテーブルから少しだけ空中に浮いていた。

ファンタジー定番の魔法か何かなのか、それをなぜかみんなは当たり前のように見ていた。

良く見ると日本では見た事が無い凄く質の悪いわら半紙を何枚も重ねた厚さの紙だった。

メイド達が紙を配り終わると、それぞれの生徒の少し後ろに下がった。




ここで、杉本先生改めてスーギー・モットーが部屋に入ってくる。



生徒達を一通り見渡し席につくと、いかにも歴戦の戦士って感じの人が1人と、すごく感じの悪い、貧弱な男性1人、さらにそれを警護する騎士団が入ってきた。


(意味がわからない。)


そこでさらに、1人の紅いローブを着た見た目から魔導師らしき男が入ってきて突然ブツブツと何か唱え始めた。




太郎と他のクラスメイトは、意識が段々ハッキリとしだし、何かを思い出したように、杉本先生がいる方に振り向く……けない。体がまったく動かない。それでも目は動くし、口も動かせる、息も出来るけど、声が出ない。なぜか呼吸ができる凄く違和感のある状態で、ハッキリと言って気持ち悪い。




先ほどの、歴戦の戦士って感じの男が突然話しをし出す。


「この度、貴殿らをこの星「テラ」のアーゼスト国に召喚したことをお詫びをする。私がこのアーゼスト国王の国王のドン・アーゼストである。」




ザワザワ


「突然の強制召還により、我が国に呼び寄せた事を大変に申し訳ないと思っている。しかし我々にはもう手段を選んでいる場合ではなくなってしまっているのだ。事態はかなり深刻な状態で、この星の人類の滅亡を防ぐためとは言え、断腸の思いで君たちを勇者として召喚した。」




「 今ここにいる13名が特別な力を持ち、勇者や英雄、魔族や魔王に対応できるこの星唯一の真の勇者達になって欲しい。どうかこの星の人類を救う手助けをしてはもらえないだろうか。そして勇者と英雄、魔族や魔王を討伐して欲しい。」


あ、まるで押しに弱い日本人なら手伝ってくれるだろう的な発想だ。


「今回ここにいる者は(優しい性格、相手を思い会える者、成績が優秀)などを考慮した関係、クラスメイトの約半分になってしまったが、こちらに一緒に君たちと来てもらった。スーギーから話を聞いたと思うが、厳しい言い方で悪いが魔王、それから勇者と英雄を絶対に倒さなければ元の世界に送り帰す事が出来ないのだ。

君たちを元の世界に送り返すのに必要な魔道具を勇者と英雄、それから魔王がそれぞれ持ち去っているのだ。

この魔道具を手に入れれば、みんなを元の世界に帰すことができるのだ。わかってくれたかな。」




太郎やクラスメイト達は「はぁ?」そう思っただろ。


国王の話しが続く。



「もし、勇者や英雄、魔王を討伐できたあかつきには、どんな願いでも、それぞれに一つかなえよう。」




(((((勝手にに連れてきたくせに、上から目線!どんな願いも叶えられるなら、自分達で勇者や魔王討伐を願えるばいいのに!)))))




まったくその通り。なんでもかなうなら、勇者や魔王討伐をかなえればいいだけだ。しかし。




「今みんなは、この願いで勇者や魔王を討伐すればいいはず。と思ったことだろう。しかし、この願いは、勇者と英雄、魔王にはなぜか効かないのだ。これはすぐに試してみたんだが何度試してもダメだった。

それで、わざわざ地球にスーギーを送り込み、このような特別な力を持った子らを召喚したのだ。勝手な事だとは分かっているが、今はどんな事をしても人類を守りたい。この通りだ、是非みなの協力をお願いしたい。頼む。」




国王は深く頭を下げていたが、みんなは…………




(((((いや、知らないし。)))))




まったく俺達にしたらとんでもなく迷惑な話だ。それでも地球に帰る手段が勇者や英雄、魔王の持つ魔道具でしか帰ることはできないのか定かではないが、今は確認のしようがない。生徒達は今はただ泣きたくて泣きたくて、でも今は泣けない。いや泣くことができない。例の変な呪文をかけられたせいで。



「では、これで失礼する。今日突然この宮廷に現れた勇者と英雄の事で忙しくなってしまい申し訳ない。このあとは、スーギーと各1人づつ付けたメイドに質問なり話しを聞くなりしてくれ。それからここから逃げてもかまわない。この宮廷から出たあとは後を追わないし、罪は負う事や罰せられる事もない。但し生きて行く保証はできないよ。」


(何、そのや○ざ顔負けの脅しは。)



国王達が部屋から出ていき、生徒達の体の自由が少しづつ戻ってきた。


杉本先生が国王のいた場所まで出てくると。




「今話しをした通りです。このあとみなさんの能力を調べるため、目の前にある少し宙に浮いている紙に右手をかざしてください。」


(あ、すっかり忘れてたよ。)


「あと少しで体が自由になるはずです。右手をかざした後、名前、年齢、性別、力の内容。これらが表示されます。あと、中には怒りに任せて紙を破ろうとする人がいるかもしれませんが、この紙は絶対に破れないので、始めに忠告しておきます。」




(ちっくっしょう、何もできないなのか?せめて早く体……)




徐々に……徐々に右手が動き後ろにいたメイド達が生徒達の手をやさしくとり、紙の方へ手をかざす。




それぞれの紙にぼんやり文字が浮かんでくる。


「あと、10分ほどできれいに文字が浮かんで出てきます。文字が浮かびあがってくるまではそのまま待っていて下さい。」




太郎や香織達の紙にもぼんやり文字が浮き上がってきた。




椿 太郎 17歳 男




瞬間移動 ワープ レーダー 最高剣士


透視 空中浮遊 ・・・・・・ ・・・・・・・


・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・


・・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・




(あれ?特別な力って1人2、3個って言ってなかたっけ?あと、残りのは?)




杉本先生が近くまで来て、各生徒の紙を確認してる。太郎の近くまでやってきて太郎の紙を見て……二度見した!




「えっ?」先生思わず変な声が出る。




(これ、かなりまずいかな?香織はどうだったんたろう?)




三ヶ日 香織 17 女




・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・


・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・


・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・


・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・・・・


(何よこれ。何もかかれていないんだけど………)



うん、太郎のより意味不明でした。

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