第四五話 召喚師のこれから

 リーフ達は、地下から戻り会議室にまた集合していた。

 そして、各々席に座っている。時計回りにガッド、ロイ、ダミアン、ウリッセ、一つ開けてアージェ、リーフ、フランク、オルソ、ゴーチェ順だ。


 「まずは、皆が無事で何よりだ」


 ガッドがそう言った。

 シリルは、エミールが去った後、また気を失ったが、命に危険はない。


 「さて、これからの事だが……」

 「陛下。それに関して提案があります」


 ダミアンがそう言うと、ガッドは頷く。許可を得たダミアンは、スッと立ち上がった。

 ここに戻る時にアージェから渡された、エミールがしていたブレスレットを掲げる。


 「これは、パッとみたところ、マジックアイテムの様です。エミールが言っていたようなアイテムならば、これに送られてくる魔力で、エミールが作ったと言うネックレスを追えるでしょう。解放したと言う村人もきっと、私はネックレスをしていると思っております。ですのでまずは、このアイテムを調べるのが一番かと思います」


 ダミアンの言葉に、リーフは掲げられているブレスレットを見た。


 (あれでお母さんとお父さんを追える!)


 少しは希望が湧き、リーフはまた泣きそうになる。


 「なるほど。やみくもに探すよりは、そっちの方が早そうだ」


 ゴーチェも賛成だと頷く。


 「では、ダミアンが中心となりアイテムの分析をお願いする」

 「はい。わかりました」


 ダミアンは頷き、着席した。

 思ったより早く、アイテムの回収と村人の捜索の方針がきまった。


 「さて、フランク。あなたには、これから取り調べが行われる。その後、あなたの処遇を決定するので、それまでは自宅謹慎をしているように!」


 ガッドにそう言われ、フランクは頷くと立ち上がった。

 そして、がばっと頭を下げる。


 「このたびは、大変ご迷惑をお掛けしました。申し訳ありませんでした」


 そう謝罪したのだった。


 「今回は、私達にとっても教訓になった」


 ガッドがそう言うと、フランクは頭を上げ椅子に座り直す。


 「リーフ。あなたには、もう少し王都に滞在して頂く。また、対策ができ安全が確認できるまでは、魔獣も許可なく召喚してはならん。アージェもそのようにな」

 「「はい」」


 アージェとリーフは返事をして返す。

 今回の事で魔獣がどういう者達かわかった。召喚師の意思一つで、魔獣を動かせる。また従わない魔獣もいる事もわかり対策は必要だ。


 「リーフですが、最初の予定通り私の所に住まわせてはどうでしょうか? お布団も用意した事ですし、リーフも村に戻る理由もないのですから……」

 「え!」


 リーフは驚くもチラッとオルソを見た。

 アージェは、リーフを女だとは知らない。しかし、リーフは行くあてがない。

 オルソは、頷いた。


 「えっと。アージェさんがそれでいいのなら、暫くの間お世話になります」

 「よかったです」


 アージェは、嬉しそうに微笑む。


 「ではリーフには、色々定まるまでそうして頂こう」


 ガッドもそれがいいと、アージェの意見に頷いた。


 「でだ……十歳になったら召喚師か魔術師か選ばせるのを廃止しようと思う。あなた達にはすまないが、魔法陣が消滅した今、必要が無いシステムとなった」

 「あの、宜しいでしょうか?」


 ゴーチェが意見を述べたいと手を上げた。

 それにガッドが発言を許可すると頷くと、ゴーチェは立ち上がった。


 「召喚師である私が言うのも何ですが、魔獣は危険すぎると思います。フランクから学べる事は沢山あった。魔獣の意思でしか、元の世界に戻らないとか……」


 チラッとフランクを見て、ゴーチェは述べた。


 「待って下さい! あのエミールは特例でしょう! 私が呼び出したスクランさんもヘリムさんだって忠実でした。それに最初から持って生まれたモノを封印だなんて……。私は逆に、魔術を取り戻したい。そう思っているぐらいです!」

 「アージェ。皆があなたのような者ではない。忠実に従うから厄介なのだ。少なくとも何かしら対策を取らないと、国が亡びる」


 立ち上がって抗議したアージェに、ゴーチェはそう返す。

 言いたい事はわかるが、アージェは納得がいかない。召喚の能力まで封印されれば、騎士を選んだ意味がなくなる。


 「ゴーチェ。あなたの意見はもっともだが、王都の外に召喚師の能力を持った者がいるのも事実だ。こちら側が召喚の能力を封印し失ってしまえば、何かあった時に逆に対応できなくなる」


 そうロイが、ゴーチェに返した。


 「確かに。殿下の仰る通りです。召喚師であっても大抵の者は召喚できないのですし、呪文を知らなければまず呼び出せない。召喚師の能力を封印しないのであれば、王都から出られないという事にして、召喚の能力を封印するかどうかだけを選ばせてはどうでしょうか?」


 今度は、ダミアンが提案する。

 それにロイが頷く。


 「そうだな。どちらにしても今の時代、召喚師になりたいと思っている者も少ない」

 「では召喚師の能力についてはそうしよう。どうだ。ゴーチェ」


 ガッドに問われ、ゴーチェはそれで宜しいですと頷き着席する。


 「後は魔獣についてだが。今回、魔獣対抗の剣が有効だという確証が得れた。これを元に色々とアイテムの研究を進めたい。それともう一つ。我が国以外に召喚師が存在するのかも調査したい。今回シリル達は、この国も者だったが他国でも扱える者がいるかもしれない」

 「ではそれも含め、調べる事に致しましょう」


 ガッドの言葉にダミアンはそう言って頷く。


 「では、早速。ウリッセ。悪いが先に研究室に戻り準備に取り掛かってほしい」

 「はい。わかりました」


 ウリッセはダミアンに頷いて返す。


 「アージェ、あなたにも暫くはお手伝い頂きたい」

 「はい。勿論です」

 「では悪いが、一緒に行って少し手伝ってもらって宜しいか?」

 「はい。リーフはどうしましょう?」

 「俺が後で連れて行く」


 オルソがそう言うと、アージェは頷き、立ち上がった。


 「フランク、あなたも私と来て頂こう」

 「はい」


 ゴーチェもフランクに声を掛けると立ち上がる。フランクも立ち上がり、ゴーチェについて行く。

 アージェもウリッセと部屋を後にした。

 気付けば、オルソとダミアンが何やら話している。そして、リーフは手招きされ、二人の側に行った。

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