これからを見つけるために
第34話 紅葉空と……
「えへへ、なんだか恥ずかしいとこと見られちゃったな」
そう言って彼女は笑った。
僕も熱に浮かされて大分恥ずかしいことを言った。いや、思い出すまい。もうフラッシュバックで苦しみたくない。
「でも、かっこよかったよ。春ちゃん」
やはり彼女は意地悪だ。僕の羞恥心を的確に煽ってくる。
「いや、その話はしないでくれないか」
そう言うと、彼女は不思議そうな顔をした。
「でも、かっこよかったよ」
これもきっとさっきの意趣返しか何かだ。僕はそう簡単に騙されたりしない。
「そうやって、からかうのはやめてくれ」
しかし、彼女はその言葉に心外な様子だ。
「ううん。からかってなんていないよ。私、あの時言われた言葉、もう一生忘れない。忘れられない」
真っ直ぐな瞳で見つめてくる。
何なんだ。一体何なんだ。からかわれたときの十倍恥ずかしい。口元に力を入れていないとすぐににやけてしまいそうになる。
「分かった。本当に分かった。だから、やめてくれ。もうやめてくれ」
これ以上は、顔の筋肉がもたない。
「春ちゃん、本当に分かってる?」
これ以上何かを言われたら限界を超えてしまう。
「分かったから、本当に分かったから」
僕は赤くなった顔を誤魔化したくて、表情をできるだけ真面目な顔にして、
「それで、何で消えてしまうことが分かるんだ?」
そう問いかける。
「うん……全て話す、話すよ」
彼女はベッドを見つめている。
「でも、説明しづらいんだよね」
そして、ベッドに座った。
つい、妙な想像をしそうになる。
いや、でも、それは。
「だからね。実際に見てもらおうと思うんだ」
そう言って、ポンポンとベッドを叩いた。
「だから、私と一緒に寝むってね、春ちゃん」
僕は彼女の誘うような笑みを見ながら、血の巡りが早くなっていくのを感じた。
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