26 最高のゴールイン!

さて、本来なら何時もの日課の薬草採集に行っている所なのだが、今日はバランに呼び出されたからギルドに来ている。

どうやら俺の店が出来たらしい。

場所は当初の予定通りギルドの裏手にある空き地だった場所なのだが…問題は店だ。

今回までの功績やら貢献度やらで領主から更に報償金代わりに店の方に宛がわれて、予定より店が大きくなったとか。

領主婦人曰く、どうせ、奥さんも増えるでしょ…っとの事らしいが、何の事やら…ルナ達でお腹一杯です。

んぅ?とうとう諦めたのかって?

誰だ、年貢の納め時だの、人生の墓場へようこそだの言ってる奴は?

まだだ!まだ、同棲までだ!

大体、アルやエルも住むんだ…人妻や幼女には手を出さんぞ?

だから、誰だ?

幼女でも人妻でも無いなら大丈夫だの、問題無いだの言ってる奴は?

俺はまだ皐月ちゃんの事を…当分、会えないよな。


さて、そんな事よりも今は店の受け取りが先だ。俺はギルドの中に入ると朝一の時間も過ぎた事だから中は落ち着いていた。

俺の目の先にはアニヤがいるが、俺が声を掛けるよりも先には声を掛けられてしまった。


「イズルさん、おはようございます。今日はようやくお店の引き渡しが出来る事になりました。此で、ポーション作りも本格的に…」


この街に来て数週間だが、若い冒険者は多い、まぁ、仕事も限られる中で住民の多さに食料事情から冒険者は沢山いても問題無く、更に食べられる魔物も多数いる。

需要と供給は合っているが、若いだけに怪我も多い、治療が間に合わず若くして引退も珍しくない。


そんな時に訪れたのが俺だ。

ハーフ・ギャザリングを助けたのを始まりに幾つかの功績も重なり信頼も得ている。

加えてポーションを作る為の薬草採集と言う、子供から若い初心者冒険者、引退間近の冒険者等に出来る仕事が増えたと喜んでいる。

勿論、薬草の買い取りは安いが頑張れば1日の小遣いから食事代位にはなる。


そんな事もあり、ギルドや街を思うアニヤにとっては俺は救世主見たいな物らしい。


「あまりプレッシャーを与えないでくれよ?俺一人で出来る事なんて限られているんだからさ」


俺はハンカチを出しアニヤに渡し照れながら言う、アニヤは感極まって泣き出してしまったのだから困った物だ…お陰で俺の周りからは何時もの嫉妬と殺気が…。


「おっ!来ていたか…アニヤ…お前もどうした?」


まぁ、タイミングが良いのか悪いのか?そこにやって来るバランが泣いているアニヤを見て不思議そうにするが、付き合いの長さからか何かを察してアニヤの横まで来ると肩を軽く叩きつつ抱き寄せている。

アニヤも流されるままに身を委ね…っと言うか抱きついている?

んぅ?この二人…付き合っているのか?

しかし、バランにはリャクトが…まさか、この男…両刀ハーレム!

俺の行き着いた思いを肯定するかの様に恥ずかしそうにしつつも笑みを浮かべるバラン。

何だろうか、何処と無く敗北感を感じるのは…周りも泣きながら食事をしている奴等もいる。


まぁ、そんな事はどうでも良い…俺には関係ないしな。


「はぁ、まぁ、良いが…取り敢えず話を聞くから奥に行こうか?」


俺はこれ以上いると要らない問題が増えそうだと悟りバラン達を中に入る様に促す、俺は貰える物を貰うだけだからな。

俺はバラン達を無理矢理奥の会議室らしい場所まで連れてくると椅子に座り話を切り出す。


「…っで、何か俺の知らない相田に色々と変わった事があるらしいが、店が大きくなった事以外に、大まかに何が変わったんだ?」


周りから冒険者がいなくなるとアニヤはバランから離れクスクスと笑いながらお茶を入れ始める。

どうやら確信犯的な行動らしい…まぁ、普段から言い寄る男は多いだろうから、たまに機会を見付けて牽制しているんだろうな。

俺が無害…っと謂うか、ルナ達がいるから手を出さないと分かってるだろうしな。


そこ!何度も突っ込ませるな!俺は別にルナ達の事は…


話は戻ろう、幾つかの聞いたのは店の広さ、部屋の数、設備の充実等、基本は変わらないがグレードは上がっている。

まず店の面積が一階だけで百坪は越えている、店の間取りは少し広がったが、それよりも客間やリビング、風呂がかなり大きくなっている。

二階もベランダは変わらないが部屋が広くなり数が増えている、特に大城な部屋は俺の部屋らしいが曰く、奥さんが増えたら必要だからと意味不明な事を言われた。

増やすつもりなんて無いのだが…。


一通りが説明を受けた所でギルドを通って裏側に、普段はギルド横の道を歩けば来れる場所には広い土地がある。

草花が生えた中に大きな真新しい店が建っている。

店の横には小川が流れ綺麗な水だ。小魚も見える。

希望通り井戸もあるし、はっきり言って俺には勿体ない。


「どうですか?防腐加工もされてますから切ったり燃やしたりしなければ500年は持ちますよ?」


いやいやアニヤ、俺は人間だから500年も生きないよ?

あぁ、ルナ達か…それなら必要だな。

もう突っ込むのも疲れたよ。


さて、そんな話をしていると店のドアが開く、良いか俺が開いたのではなく店の中から誰かが出てきたのだ…って領主夫妻!


「おぉ、やっと来たか…待ち兼ねたぞ?」


「お待ちしてましたよ?さぁ、此方に…」


何だ…いや、確かに領主からも資金援助されてるから居てもおかしくはないが…何故だ?今、俺の頭には激しく警戒音が鳴っている。

ヤバい…今は逃げないと…。

俺がそう考えた瞬間、真後ろから肩を捕まれた。


「何処に行くつもりですか?さぁ、中に入りましょ…」


先回りされたとか言うレベルじゃない…この人の視界内で逃げる事はほぼ不可能…俺は敢えなく領主婦人に捕まり店の中に、そこにはルナとルルが椅子に座り、顔を真っ赤にして俯いていた。


「さぁ、座れ…なに、取って喰おうと言うわけでも無いんだ…寧ろ奥手のお前さんには此れくらいが良いだろ?」


領主のナグドリアが悪戯好きな子供の様な笑顔を見せながら言うと俺はルナ達の間に座らされ目の前に紙を羊皮紙を置かれた。

内容はシンプルだ、領主と教会の了承の元、ルナとルルを娶る事を許された旨が記載されている。


「渡すものは店だけでなく、将来の伴侶と暫くの運営資金、それと結婚祝いだ」


ナグドリアがそう言うと店のドアが再び開く、外からはハーフ・ギャザリングのメンバーやルカ達、ガダリオン達や街の住民だ。

皆、結婚祝いの品や開店祝いの品、食べ物や飲み物等を持ち込み始めた。

ドアから見える外にはテーブルが並び食事の準備が始まっている。

どうやら、今日の事を知らなかったのは俺だけらしい。


「あ、あのね…イズルさん…ぼ、僕達…本気だよ…吊り橋効果とかじゃ無いの…」


「ウチらは考えた上でイズルはんの事を好きになったんや…少し強引やも知れんけど、受け取って欲しいんね…」


真っ赤な顔の二人が顔を上げると真っ直ぐな目で俺を見てくる。

参ったね?逃げ場無し…いや、此処で逃げるのは良くないか…色々と急展開ばかりだったが、今日見たいな日は悪くないかもな。


「あぁ、そうだな…二人が真剣なのは知っている、知っていて敢えて俺が逃げていただけだ…」


俺は二人がただ、俺を好きだと言っている訳でも助けられたから好きだと言っている訳でも無いのは知っている。

だからこそ、俺は安易に答えなかった。

勿論、皐月ちゃんの事もあるが、この世界に来たばかりの俺が、この世界の人の人生を安易に受け入れて良いかと考えた。

しかし、それは逃げなんだろうな…自分に対する言い訳で真剣に向き合ってくれている人を蔑ろにしている、ただの臆病者なんだ。

前の世界でも人との関わり積極的にはせず、安易に楽な方に流された結果、一人になった。

まぁ、気忙しいあの世界じゃ隣近所すら知らない人が多いから仕方無いのかも知れないが、この世界は違う。

会って数日程度の俺を、こんなにも温かく迎え入れてくれる。

だからこそ、俺も真剣にならないとダメなんだと。


「だからこそ、俺も真剣に答える…今はまだ、自分自身に自信が無い…此から先もどうなるかなんて分からない…だけど、そんな俺で良かったら…一緒に居て欲しい…俺は、二人が好きだから…」


衆人の中、二人に向かって真面目に答えるも流石恥ずかしいな。

俺が答えると周りからは祝福の花束と拍手が飛び交う。

そこからが大変だ…俺とルナ達は別々の部屋に連れ込まれる。

どうやら人前式の為の着替えの様だ。

俺はタキシードの様な服を着せられ外には放り出される。

庭には簡易の教会が建てられ神父が出張で来ていた。

立会人は勿論、領主だ。

暫くすると店のドアが開きルナ達が出てくる。

二人とも真っ白なシルクのウエディングドレスだ…いや、シルクだと思っていたのだが、後から聞いたらイリュージョン・スパイダーと呼ばれる蜘蛛から取れるスパイダーシルクだとか。

一着5ゼクス白金貨だとか…二着あるから1ゼクス黒金貨だな…はははっ。


幸い、領主からの祝いに含まれているらしい…助かった。


しかし、二人とも…綺麗だな…普段の幼さの中に女が入って美少女から美女の間の絶妙な美人さが引き出されている。

此れを見て落ちない男がいたら見てみたい。


因みに、森でハーフ・ギャザリングを襲った奴等は鉱山奴隷として一生を終えるそうだ。


ざまぁみろ…こんなに良い女を犯そうなんて奴等には良い人生だ。

んぅ?誰だ…完全に落ちてるじゃないかって?

当たり前だろ?

受け入れると決めたなら俺の女だ!

せいぜい、頑張って幸せしてやる!

勿論、俺も幸せになるつもりだ!


そんな事を考えていると、ルナはルカに、ルルはガオンに連れられて店から出てくる…参ったね…二人とも綺麗で眩しいや。

周りからも溜息の様な吐息が聞こえる。

二人が連れられて俺の前に来る。


「イズルさん、僕達ね…その…悪魔族のハーフだから…結婚何て…出来ないって…思ってたの…」


ルナは俺の前まで来ると涙を浮かべながら俺に話をし始める。

前に聞いた悪魔族の謂れか…まぁ、気にする奴は気にするわな。


「だから…ウチらは、長い時間があるから…二人で生きて行こうって…約束…してたんや…何時でも…何時までも…」


ルナの話を継ぐようにルルが話を続ける。

種族的に二人の寿命は長い、互いが同じ境遇なら、一緒にいても気が楽だろう。

二人は性別に関わらず、精神的に心で繋がり結婚している様な物だな。


「だからね…僕達は…一緒…好きになる人も…僕達…幸せに…なっても…良いですか?」


二人は無意識に互いの手を繋いでいる…周りも声を潜め、ルカ達も後ろに下がり見守っている。


「あぁ、当たり前だろ…俺が全力で幸せにしてやる!代わりに、俺の事も幸せにしてくれよな?自慢じゃないが今日の今までは不幸体質だったんだならよ…」


俺は二人の頭を撫でながらはっきり全員に聞かせる様に言う。

今までの…前の世界での人生も含めて良いことなんて余り無かった…この世界は文明は発展してないが、人は前の世界とは比べ物にならない位に良い、そして飛び切りの美少女に惚れられて幸せじゃ無いって言う奴がいるなら見てみたい物だ。


「今日の今までって…今は?」


ルナが嬉しそうな顔をしながらも不思議そうに聞いてくる?


「んぅ?こんなに可愛い奥さんを貰って不幸せな奴がいるか?しかも二人も一辺に…俺が死ぬときはベットの中で腹上死かもな?」


俺は恥ずかしさを誤魔化す様に親父ギャグ的に言うとルルは真っ赤な顔で俯いていたしまった。

あぁ、しまった…此でもルルは恥ずかしがり屋だったと思い出す。

そんなルルを見ながら横にいるルナを見ると同じ様に真っ赤な顔をしているが何故か拳を握り締め魔力が集まっている。


まてルナ…それは洒落にならん!

俺が、そう言おうとした瞬間には遅かった…。


「イ、イズルさんのバカ~!エッチ~!」


ルナの叫びと共に俺の顎には目にも止まらぬスピードでルナの拳が炸裂する。

綺麗に決まったアッパーカットは俺を宙に舞わせる…俺の意識を飛ばし緩やかに訪れる地面への直撃…意識が途切れそうになる最中に俺は思う…ルナの恥ずかしがりの誤魔化しは命の危険を感じずにはいられないと。

同時に周りから笑い声と慌てる声をが入り交じり騒がしくなりながらも俺の意識は途絶えた。


「んぅ…此処は…知らない天井だ?」


再び此の台詞を言う羽目になるとは…しかも最終原因が全てルナって…ある意味、運命だな…。

俺が気を失っていたのは30分程らしい、今回は神父もいたので大事になっても大事には至らなかったとか…それはつまり、居なかったら俺はヤバかったって事なんだな?

結婚初日に妻に撲殺されかけるって…洒落にもならん。

因みにルナは正座をさせられルカに説教されてる最中だった。


「いつつ…あぁ、もう大丈夫だから、その辺にしておいてやって来れ?」


俺はベットから起きると説教中のルカに近付き呆れ声で言う、二人は対象的に俺を見る。


「…イズルさん、ごめんなさい…僕…僕…」


グスグスと泣いているルナの側で屈みながら優しく頭を撫でる。


「大丈夫だよ、此の程度…もう定番だから…最も、今夜はベットの上でお仕置きするから覚悟するんだよ?」


泣いているルナが再び顔を真っ赤にすると、殴られるかと身構えたが何も無かった。

代わりに想像したのか、想像が限界を越えたのかそのまま俯き体をくねらせていた。

可愛いな…今夜が楽しみだ。


「全く甘いんだから…そんな事じゃ示しが付かないよ?大体、親の前で娘を口説くのもどうかと思うよ?」


ルカは説教しているのに台無しだとばかりに困った顔をするルカ。

まぁ、俺の甘さは仕方無いと割りきって貰うしかないな。


「まぁまぁ、そんな顔をしないで下さい、義母さん…代わりに、なるべく早く孫を作りますから…」


俺はルカを義母と呼び、近くにいるルルに聞こえる様に子作り宣言をする。

勿論、聞こえたルルは再び真っ赤になり俺の方を凝視する。

聞かされたルカも義母呼びが気に入ったのか、故紙をクネクネとさせながら嬉しそうな顔をする。


「ま、全く…そんな事を言われたら、何も言えなくなるでしょ?困った子だね…約束だよ?私らは中々、子供のが出来辛い体質何だから…しっかり仕込んで早く孫を見せるんだよ?」


ルカもほんのり頬を染めながら二人を見つつ、二人の子供を早く作る様に俺に厳命する。

勿論、俺もそのつもりだから嫌も無い、大きく頷きながら凝視するルルを見て笑顔で返せば真っ赤な顔を更に赤くして俯く、うん、可愛いな。


暫くして、二人が落ち着くのを待ち化粧をし直して再度、店から出てくる。

式のやり直しだ…まぁ、その間に他の連中は宴会してたから文句も無いだろうが…。


二人はルカ達に連れられて俺の前に…そこからが俺が両側に二人の腕を組み神父の前まで行く。


「汝、新郎・イズルよ…汝は何時、如何なる時にも新婦・ルナ、ルルを永遠に守り、愛し、慈しむ事を誓うか?」


神父が定番の問い掛けを始める。

此の世界は神に誓うと言うよりは人前式の為か、親や立会人に誓う感じが強い。


「はい、必ず守り、愛し、慈しむ事を誓います!」


俺ははっきりと答える。

第二の人生だ…今度は間違えない様にと心に誓いながら返事をする。

そんな俺を神父は満足そうに見るとルナに向き直る。


「汝、新婦・ルナよ…汝は新郎・イズルと何時までも愛し、慈しみ、互いに手を取り歩む事を誓うか?」


少し文言が違うのはやはり女性は家庭に入るイメージが強いからかな?

俺がそんな事を考えていると、落ち着いていたルナの顔を再び真っ赤になるも、しっかりと前を見て…。


「はいっ!ぼ、僕は…どんな事が会っても…絶対に…イズルさんから…離れません…」


あぁぁ…まぁ、誓いの言葉とは全く違うが内容とルナの言いたい事は分かるから良いか…折角、化粧直ししたのにな…泣きながら答えているルナを愛おしくも思う。

そんなルナを神父は嬉しそうに見ながら納得したのか、ルルの方に向き直る。


「汝、新婦・ルルよ…汝は新郎・イズルと何時までも愛し、慈しみ、互いに手を取り歩む事を誓うか?」


同じ様に聞く神父、まぁ、此が仕事なんだから当たり前か。


「はいっ!ウチかて、絶対にイズルはんから離れんへんから!」


あぁ、ルルらしいな…真っ赤な顔をしながらも嬉しそうに答える。

しかしルルよ…ルカを見てみろ?呆れ顔してるぞ?後から説教されるな。

神父も笑うのを堪えている。


「今、此処に新たなる夫婦が産まれた…今、此処にいる全ての者達が証となる、此の三人に祝福を…!」


神父が声高らかに叫び両手を上に上げると祝福のシャイニング・シャワーが降り注ぐ。

此は此の世界でも数少ない神の奇跡を目にする機会だそうだ。

此の時の光の量で、新郎新婦が互いに何れだけ思い合ってるかが分かるらしいのだが…此は…眩しすぎて周りが見えんな。


俺の思いかルナ達の思いか…それとも、お互いの思いか…明らかに普通より激しい光に、光が治まり掛けた頃に見える神父も領主の顔が驚いているみたいだ。

…っと言うよりも、周り皆が驚きで固まっている。


「何だか凄かったな…何時も、こんなに光る物なのか?」


俺は隣で固まっている二人に恐る恐る訪ねて見る…俺の声に気付くように目を見返してくるルナ。


「ち、違うよ…普通はもっと、注ぐ様な光だよ…こんな一面が見えなくなる位の光のシャワー何て…見たこと無いよ?」


少し興奮気味のルナとは真逆に完全硬直しているルル…どうやら目を開けたまま気を失ってるみたいだ?器用だな…?


「素晴らしい!こんなにも強く激しいシャイニング・シャワーを見たのは初めてです!」


俺がルルを見ていると神父が興奮しながら叫んでいる。

まぁ、彼はシャイニング・シャワーをする側の人間だから結婚式の回数分だけシャイニング・シャワーを見てきただろう…それらを比べて尚、俺達のは凄いらしい。


「互いの気持ちが此処まで繋がり高まっているのは初めて見ました!貴方達ならきっと幸せになれます!」


神父は興奮が冷めないのか俺の手を握り振り回す様に握手をしながら叫ぶ。

まぁ、祝福されるのは嬉しいが度が過ぎると何だかな…あっ!領主二人も口を開けて呆けてる…イケメンと美人はどんな顔しても絵になるな…羨ましい…。


そこからは大騒ぎだ…前代未聞のシャイニング・シャワーに立ち会った人々も加わって大宴会へと発展…流石のガオンも、あのシャイニング・シャワーを見て考えが改まったらしい…相性抜群の俺達を引き離す処か逆にくっ付け引っ付けだ…ルナとルルも真っ赤な顔をしながらも俺の膝の上だ…両手が使えない俺は二人から料理や飲み物を食べさせて貰っている…最早、晒し者状態だ。


「いやはや…まさか、あの様な事になるとは…永く生きてみる物だな…此なら種族がどう等と問題になることは無いな…」


領主・ナグドリアがワイン瓶を持ってやって来ると、染々と言いながらグラスに注いでいくと俺に差し出す。


「120年物のヴィンテージワインだ…今日の日を記念にするために取りに行かせた…飲みたまえ」


俺は二人に降りる様に促せば立上がりグラスを受け取る。

グラスに注がれたワインを込めば深い味わいなのが素人でも分かる。


「こんな高級な物を良いのですか?」


幾ら珍しいとは言っても所詮は俺達に対する祝福…他の人には関係無いのではと思い聞く。


「違うな…此はただ年を取っただけの物だ…しかし君達は違う…あれだの祝福の光…この先の未来は君達だけを照らすのではなく、異種族と呼ばれた者達全てに関わりが出る筈だ、俺はそれを期待している」


なるほどね、ルナ達の出生を知りながらの事か…まぁ、良いさ…俺は俺のやりたい様にやる。

今はただ、二人を守り愛するだけだ…。

俺は残りのワインを飲みながらその場を後にし二人を連れて人の輪に入っていく。

俺を受け入れ、俺達を祝福してくれる人達の元に…。

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