24 日常へ…

『かんぱ~い!』


此処はギルドの一階フロアだ、今現在はギルドも休んで宴会会場になっている。

…っと言ってもギルドだけでない。

今、この街、フォレストタウン全体がお祭り状態だ。

道には出店が、飲食店や武器屋は特売だ、記念価格だと商売をしている。

たまたま来ていた行商も臨時の出店を構えるなどお祭りが始まっている。


何故、こうなったかと言えば簡単な話だ。

スラム問題は元々、ギルドだけが悩んでいた訳ではない…街全体が…特に領主が悩んでいたらしい。

そこに俺が解決とまでは行かないが状況を一気に変えた。

四つに分かれていたスラムが統一され、所在不明のスラムボスが明らかに、何より正体不明の怪しいボスが正体不明のまま撤退(?)した。

しかも、其れ等が1日の間に起きたのだから一大事だ。

まぁ、悪い方向じゃないから良かったな。

正体不明の奴に関しては今はどうにもならないが、四つのスラムをどうするか、スラムボスの扱いはどうするか、色々と問題はあったがあの後直ぐに領主がやって来たのが二日前の話だ。







「俺がこのフォレストタウンを含む一体の領主・ナグドリア=アムス=ワドナー辺境伯だ、気軽にアムスと呼んでくれ!」


ミスリルの全身鎧に身を固め見事な白馬に跨がりやって来たのはナイスミドルの50代手前に見える爽やかなオジさんと言った男が馬上から自己紹介をしてきた。

見た目は角刈り金髪、鋭い目付きに爽やかな笑顔とナルシストとキザ男かと思わせる雰囲気なのに、何故かフレンドリーだ。

横では額に手を当て天を仰ぐバランがいる。


「ワドナー様、何時も言っておりますが、もう少し威厳を持って…」


バランが苦言を呈そうと話始めるとワドナーは顔を顰めながらバランを見る。


「バランよ、俺も何時も言っているだろ?所詮は田舎街の辺境伯…俺が地位に甘んじていたのでは街は良くならない…此度とてそうだ?長年俺達が苦労して来たスラムの問題をたった一人で解決した男がいると言うのに肩書きや体裁ばかり取り繕っても仕方無いだろ?」


このワドナーと言う領主は傲る事を良しとはしないらしい、良くも悪くも人柄と実績重視の人物か…バランも大変だな。


「ワドナー様、ギルドマスターの言う通り、時と場合もあります…此だけの民衆の前ですから少しは善所して頂いた方が俺としても助かります」


俺の話題も出ている事だしバランに助け船も出さないとな、軽く頭を下げながら、さり気なく街中である事を前に出し諌めてみる。


「フム?そうか、まぁ、そう言うなら仕方無いか…して、そっちかの者達がスラムを治めていた者達か…」


ワドナーは俺達と話していた三人と後ろにいるガダリオンを含む四人を一瞥しながら問い掛ける。

その目は鋭く先程までの和やかな雰囲気は無い。

ワドナーは馬から降りるとゆっくりと歩きながらも一切の隙を見せない。

供を連れずにこの場に来たときから分かっていたが、この男…バランと同等か或いは上の力を持っているな?

戦う領主か…心強いのか、ただの戦闘狂か…ワドナーが三人の前まで来るとガダリオンも同じ様に三人の横に並ぶ。


「領主よ…長い間、騒がせたな…この身は既にイズルに差し出しているが、やはり采配は領主に委ねるべきか?処刑なり何なりすると良い…甘んじて受けよう…」


バグドが四人を代表して話を始めるとガダリオンは緊張から直立不動に、女性二人は溜め息を付いて諦め顔になっている。

ワドナーは四人を見ながら顎に指を当て悩んでいる。

さて、どうするつもりか…お手並み拝見だな。


「成る程な…潔い覚悟だが簡易に死ぬ事を選ぶのは責任から逃げ出す事と同じだ…それに既にイズルに身を委ねたのなら尚更、此れからどうするのか見てみたい物だ」


ワドナーは悪戯が好きな子供の様な笑顔を俺に見せながら四人に言う。

元々、決めていたのだろうが勿体振っていただけだ。


「…っにしても、スラムを治めていた人物に女性までいるとなは…どうだ?俺と楽しいことをしないか?」


んぅ?ワドナーが二人を口説き始めたぞ?

バグドよ…再び天を仰いでどうした?

天を仰ぐバランから呟く声が聞こえる…また悪い癖?

どうやら、この領主…普段は真面目な領主だが女癖は悪いみたいだな…うん!ルナ達は会わせない様にしよう。


「ワドナー様…その様な事をされますと…また奥様に怒られますよ?」


バランがコソリと呟く様に言うとローザ達を口説こうとしていたワドナーの動きが止まり、ゆっくりバランを見る。

その表情は悲壮を絵に描いた様な顔だ。

奥様はそんなに怖いのですか?

まぁ、この世界の女性は皆さんお強いですからね…誰とか誰とか誰とは言いませんよ?


「あ・な・た!」


そんなやり取りをしていると俺達の後ろから不意に只ならぬ気配が…おかしい?状況から気を抜いてなかった…少なくとも警戒していた筈なのに全く気付かなかった…誰だ…って今の台詞で誰か分かるよ!

怖いよ!

俺の警戒音がガンガン鳴っている…逃げることも出来ない…隣にいるバランですら冷や汗を掻いて硬直している。

目の前のバグド達は目を見開いて固まっている…まるでメデューサにでもあったかの様だ。

そして領主・ワグナーは…


「お、お前…な、何故…此処に…や、屋敷に…いた…の…では…」


顔面蒼白、歯をガチガチと震わせ体は超振動を起こした様に揺れて怯えている。

俺の後ろには大魔王でもいるのか?

最早、振り向く事すら出来ない…。


「街が騒がしかったので、私も急いで見に来ましたの…けれども大事になって無い様で何よりです…最も…貴方は忙しそう見たいですけれども…」


地の底から響く口調…俺は立っている事すら出来なくなる程に疲れてきた…無理だ…此処から逃げる事も助かる事も出来ない…すまない…

誰に詫びるのか分からない謝罪を胸に俺は生きた心地がしないまま膝から崩れ落ちた。


「あら、皆さん?申し訳有りませんわね…気を楽にして頂いて良いのですよ?勿論、そちらのお嬢さん方も…悪いのは私の旦那様ですからね…」


女性は俺が崩れ落ちたのを見て殺気を和らげるとローザ達を見ながら話をしている様だ。


「処で、貴方がイズルさんかしら?今度、この街でポーションを作ってくださるとか…」


俺は心臓が飛び出す程に跳ねた。

何故に急に俺の話になる?

って言うか、何故、俺がイズルだと分かった?

バランか?バランが話したのか?

領主か…普段の会話でも出はするか…だが、一度も会った事も無い俺に何故分かる?

そう言えば、さっきも領主は直ぐに俺が誰か分かっていた口振りだった…何なんだ…いや、それよりも返事をしなければ失礼にあたる…下手な態度は印象を悪くする。


「は、はい…お、俺…いえ、わ、私が…イ、イズルです…」


最早、カミカミで返事をしながら振り向く俺…此でも必死何だ…誉めてくれ。

俺は怯えながらも振り向けば頭を下げながら返事をする。

下げた頭を少し持ち上げ目線を上げると領主の奥様の姿が目に入ってくる。


歳は20代前半か、整った顔立ちに二重の吊目、小高な鼻筋に小振りの小さな唇、長いロングの金髪は腰まであり風に靡いているのを見れば光を反射し虹色を放っていた。

そしてプロポーションだが、此がまた…ボン!キュ!ボン!の良い体…ゲフン!ゲフン!

いや、素晴らしいスタイルだ。

服装は乗馬の様な服装だ。

白を基調とした金の刺繍がされた燕尾服にキャロット、黒の革手袋とブーツだ。

一言で言えば美人だ。


何故、こんな美人がナイスミドルの優男と思える程の美人さんだ。


俺が領主の奥様に見とれていると笑顔で返されてしまった。


「紹介が遅れましたね?私はナグドリア=アムス=ワドナーの妻、ミネルバ=アムス=ワドナーです…ポーションの件と言い、今回の事と言い、いえ…ハーフ・ギャザリングやダークエンペラードラゴンの事と言い…良く良く貴方にはお世話になってしまって…申し訳有りません…領主に代わってお礼申し上げます」


ワドナー婦人が靭やかな動作でお辞儀をするのを見れば、思わずドキリとするのが自分でも分かる。


「い、いえ…お、いや…私は大した事は…な、何も…」


あまりの靭やかで優雅な動きにしどろもどろになる俺…分かるだろうか?

最近は可愛い系の女の子(?)ばかりを見ていたせいで、美人への免疫力が更に低下してしまった俺の気持ちが!

分からないだろう!

何なら代わってやっても良いぞ?

いや、代わるのは勿体無いか…うん!


「ご謙遜を…貴方の働きが大した事が無かったら私の夫なんて…何もしてない、遊んでばかりの女ったらしですわ!」


ミネルバ婦人が優雅な笑顔でオホホッと言った感じて話をすれば、急に目付きが更にキツくなると俺の後ろを見て殺気と怒気を放ちながら言う。

後ろを見れば、俺が婦人と話をしている間に忍び足で逃げだそとするワドナー辺境伯…そこに婦人からの一喝が入るとビクっと体を震わせ硬直し此方を見る。

その目は正に哀れとしか言い様の無い目だ。

しかし、俺が驚くのは更にその後だ…今まで後ろにいた筈の婦人の気配が消えた…同時に今までいなかったワドナーの後ろに突然、現れる様に婦人が現れる。

何だ?何が起こった…気配がとか、物凄い勢いで動いたとかじゃない…。


「何時見ても凄いな…ミネルバ婦人の瞬間移動…あれでも元・S級冒険者瞬激のミネルバと言われていたんだ」


俺は目を丸くして婦人を見る。

この世界の女性は本当に強い人が多いんだと…。


此後はワドナーが婦人に耳を引っ張られながら帰っていった事。


多くの片付けやバグド達との今後のスラムの在り方を相談とバタバタが過ぎた。


そして現在は、スラムの住民が街の至る所に出店を出している。

今日は祭りだ…何祭りって訳ではない…強いて言うならスラム解放祭りだ…。

街の住民とスラムの住民が此から一緒にやっていく為にも必要だと領主が資金を出して開いた細やかな祭りの筈が、ギルドだ住民だと持ちより派手な祭りへと変わっていった。

本当に変わるのは此からだろうが切っ掛けはいる、俺はこの騒がしい喧騒も悪くないと思いながら歩いていると丸焼き亭の前で捕まり乾杯をさせられている所だ。


「あぁ~、イズルはん…こんな所にいたやん!」


「イズルさ~ん!僕、頑張ってフォレスト・ベアー捕ってきたよ!一緒に食べよ!」


冷えていないエールは大して旨くないが祭りの高揚感が旨くしてくれているのかと思っているとルナとルルが飛び付いて来た。

二人とも俺の首に腕を回し抱き付いてくる。

く、苦しい…し、死ぬ…。

回された腕に首を締められ苦しみ藻掻く、そして周りから嫉妬と殺気。

店の奥からは子離れ出来てないバカ親の殺気…そして…。


「ふ~た~り~と~も~!節度を守りなさいと何度言ったら分かるのかしらね?」


店の奥からフライパンと包丁を持って出てくるルカ…そのフライパンと包丁…デカ過ぎだろ。

そして追い回される二人。

ようやく普通の日常に戻った感じがする。




イズル(神田川 出流)

ステータス


種族:人間

性別:男

職業:新米薬師(ポーション特化)

冒険者ランク:G

名前:イズル

年齢:19才

Lv.  15(177/3500)

HP  1230/1230(1845/1845)

MP  3400/3400 (5100/5100)

ATK 820(1230)

DEF 420(630)

AGI  1210 (1815)

DEX 825 (1238)

MIND 22243(33365)

LUK 1852(2778)


〈スキル〉

鑑定Lv.MAX(能力限定/鉱物及び植物)

異世界言語翻訳

アカシック・ライブラリー(鉱物及び植物のみ)

詠唱破棄


魔力付与Lv.1

魔法付与Lv.1

魔法効果短縮Lv.3

魔力消費軽減Lv4

並列思考Lv.3

スキャンLv.2

アイテム・ボックスLv.2


〈魔法〉

風魔法Lv.3(ウィンド・カッター)

(ウィンド・ウォール)

(ウィンド・スパイラル)

火魔法Lv.2(ファイヤー・ボール)

(ファイヤー・ウォール)

水魔法Lv.2(ウォーター・ボール)

(ウォーター・ウォール)

土魔法Lv.1(クリエイト・シェイプ)

光魔法Lv.1(ライトアップ)


〈称号〉

願望者

黄泉姫の加護

皐月の加護


〈エクストラ・スキル〉

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