22 一応の決着?

俺は今、走っている。

ヒリアスの家に入ってきた奴の話では謎の人物は早くも俺の知り合いに接触して誘拐を企てたらしい。

はっきり言って異常な対応の早さだ…恐らくはヒリアスの家に盗聴の様な魔道か何かを置いて逐一、様子を伺っていたのだろう。

何かあれば俺が対応出来ない直ぐのタイミングで事を起こすために。


だが残念だ…そんな事は予測済みだ…今、この街は一丸となってスラム問題に取り掛かっている。

まして、スラムボスが殺される何て一大事に静観を構える程、バランもお人好しじゃない。


俺は街の通りにある店の前に来た、そこにはお互い抱き合い地面に座り込むルナとルルがいた。

狙われたのはルナ達か…成る程、彼女達なら俺への人質には持って来いだな。

少しイラっとするな…。


ルナ達を取り巻く様に住民が、そしてルナ達を影から守っていてくれていたのがギルドマスター・バランだ。

しかし…此はどういう事だ?

バランが押されている、いや、怪我までしている。

相手はそんなに強いのか?

お世辞抜きにしてもバランは強い、恐らく力だけなら俺の方が強いかも知れないが、戦闘経験が違う…此ればかりはどうにもならない、そしてバランは百戦錬磨の強者だ…にも関わらず押されている。

俺は相手を見るが、どう見てもただの住民にしか見えない。


「バラン!大丈夫か!」


俺は駆け出しながらルナ達の横を通り過ぎるとバランに並び声を掛ける。


「イズルか…お前の読み通り、いきなり襲ってきたぞ…それまで何にも気配も無かった普通のパン屋の息子だ…」


バランは剣を構えたまま、その男を睨んでいる。

男は目が虚ろで焦点が合っていない。

表情も何処かおかしい?


「ケケケッ 来やがったか…やってくれたな?俺が長年掛けて街を腐敗させて来たのに…あっという間に俺の計画をダメにしやがったクソヤロウが!」


男は何処か可笑しなまま助走も無しに飛び付いてくる。

幾ら何でも可笑しすぎる?

冒険者でも無い普通の市民が助走無しに10m以上の距離を勢い良く飛び込んで来るなんて…手にはちゃんとナイフも持ってる。

しかし、あのクソヤロウって誰の事だ?


俺は色々考えながらも剣を抜きナイフを受け止める。


「ケケケッ お前も哀れだな…気付かない間に道化を演じる…気付いた時には俺と同じ様にあの野郎の操り人形…だが、邪魔はさせない…俺の苦しみを…俺の辛さを…俺の絶望を…お前達に…この世界に分からせてやる…償わせてやるんだ!」


虚ろな目の男が呪詛の様に言いながらナイフを押し込んで来る。

有り得ない力だ…俺が押される。

此ではバランが押し負けるのも分かる…このままでは俺も…何より男から噴き出す黒いオーラは何だ?


「お前は一体何者だ?その男本人じゃないだろ?何処から操っていやがる…」


俺は男の向こう側にいる奴に話し掛ける、こいつが敵じゃない…こいつを操っている奴が敵だ。


「てめえもアイツに言われてこの世界に来たんだろ?何れ分かるさ…それまで生きていればな!」


男は厭らしい笑みを浮かべ言い放つと急激に魔力が高まっていく。

不味い!この男…自爆するつもりらしい…。


バランは俺と男とのやり取りを見ていて離れているから大丈夫だ…ルナ達も離れてる…しかし俺は男の押し出す力に対抗している為に逃げれない…。

そうこうしている内に男の魔力が体の臨界を越えた…男の体が不気味な黒い光を放ち始める。

駄目だ、逃げれない…遠くでバランやルナ達が何か言っている、ルナも今にも飛び出しそうなのをルルが押さえている。

まぁ、短い間だったが良い奴等に会えたのは良かった。

俺は覚悟を決める…その時…


「ボルケーノ・クラッシュ!」


俺の真横に誰か飛び出し来た…その男が巨大なハルバードを叫びながら振り上げると俺に斬りかかっていた男が100m程の空高く巻き上げられると同時に大爆発する。

爆風で周りの壁にヒビが入る程の威力だ…地上で爆発していたら大惨事だったな。


俺は爆風で転がらない様に体勢を崩したまま地面に手を付き耐える。

爆風が収まる頃に男が近付いてきた。


「イズルさん、大丈夫ですか!」


ハルバードを振り上げた男がハルバードを投げ捨て俺を心配する。


「あ、あぁ…助かった…ありがとう…ガダリオン…」


男は屈みながら膝を付き俺を見ている。

俺を助けたのはガダリオンだ…ガダリオンは確かに斬られて危うかったが俺の持っていたリカバリーポーションとライフポーションを全部振り掛け一命をとり留めていた。

しかし、今回の黒幕や犯人の炙りだしの為に周りには秘密にしていた。

先程、ルナ達の事を連絡してくれたのもガダリオンだ。

バグド達に自分から説明するのに手間取って今、着いたらしいが助かった。


「いえ、こんな程度のこと…イズルさんに助けて貰った俺にしてみれば大したことありません!」


ガダリオンは半泣き顔で本当に心配しながら言う。

まぁ、命の恩人と思っているから仕方無いか…しかし、さっきの技は凄かったな。

あの力だけなら今の俺より強いかもな?


「取り敢えずは終わったか…しかし…あの男を操っていた奴は何者だ?」


俺はガダリオンの心配を他所に操っていた奴の事ばかりを考えていた。

この世界に来て間もないのにトラブルだらけだが、今回は今までとは意味合いが違う…奴は俺を知っている感じがした…何より”あのクソヤロウ…”奴はそう言った…誰の事だ?分からない…どうも、俺の異世界ライフは安穏な生活が出来そうも無い気がしてきた。


そして俺はこの事を後回しにした事を後悔する、後々になっとこの事が大問題になる事を、この時の俺は知りもしなかったからだ。



イズル(神田川 出流)

ステータス


種族:人間

性別:男

職業:新米薬師(ポーション特化)

冒険者ランク:G

名前:イズル

年齢:19才

Lv.  15(177/3500)

HP  1030/1230(1845/1845)

MP  3250/3400 (5100/5100)

ATK 820(1230)

DEF 420(630)

AGI  1210 (1815)

DEX 825 (1238)

MIND 22243(33365)

LUK 1852(2778)


〈スキル〉

鑑定Lv.MAX(能力限定/鉱物及び植物)

異世界言語翻訳

アカシック・ライブラリー(鉱物及び植物のみ)

詠唱破棄


魔力付与Lv.1

魔法付与Lv.1

魔法効果短縮Lv.3

魔力消費軽減Lv4

並列思考Lv.3

スキャンLv.2

アイテム・ボックスLv.2


〈魔法〉

風魔法Lv.3(ウィンド・カッター)

(ウィンド・ウォール)

(ウィンド・スパイラル)

火魔法Lv.2(ファイヤー・ボール)

(ファイヤー・ウォール)

水魔法Lv.2(ウォーター・ボール)

(ウォーター・ウォール)

土魔法Lv.1(クリエイト・シェイプ)

光魔法Lv.1(ライトアップ)


〈称号〉

願望者

黄泉姫の加護

皐月の加護


〈エクストラ・スキル〉

※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る