11 人波乱?
「まぁ、何だ…取り敢えずは助かったよ、ありがとう。良かったら、お礼がてら奢るけど今日の昼は時間ある?一緒にどう?」
俺としては何も言わずにギルドカードを発行してくれたアニヤに対して軽い気持ちでの礼のつもりだったのだが、本人と周りの反応は随分と違った様だ。
俺がアニヤを誘った声が聞こえたのか周りのざわめきと共に少し離れたテーブルから一人の男が歩いて来るのが見えた。
風貌的には細身ハゲ頭のチンピラ風、だけど歩き方から素人でも無いしそこそこ出来る歩き方だ。
「おい!ガキ!何、アニヤさんを口説いてるんだ!発情してるなら他でやれ!」
男は来るなり、いきなりキレて怒鳴る様に言ってくる。
成る程ね、アニヤ本人に自覚があるかは別として彼女は此処では一種アイドルみたいなものなんだな。困ったものだ…。
俺が少し困り顔をしながら思案していると…
「ちょ、ちょっとガーグさん、彼は別にそんなつもりで話していた訳では無いんですよ?」
どうやらアニヤは俺が困っていると勘違いをして助けようと間に割って入ってきた様だ…っが、それが逆にガーグと言う男には気に入らなかったらしい。
「アニヤさん、こんなおとを庇う必要何て無いんですよ?困っているたら困っていると正直に言って下さい!このガーグ、アニヤさんの為なら何だってしますから…こんなガキ一人、直ぐに叩き出してやりますよ!」
ガーグは言うが早いか俺の胸倉を掴むと軽々と俺を持ち上げた。
細い体付きにしては力がある。
見た目から身長は180cm位か?
俺の体が地面に足が付かず浮いた感じから今の俺の身長は170cm有るか無いかだな。
俺がそんな事を考え事いるとガーグは俺が怯えていると勘違いしたらしく厭らしい笑みを浮かべ。
「ははっ 今更ビビってんじゃねぇ!対した腕もねぇガキが色気だけだして発情してるから、こう言う目に会うんだ!此は暴力じゃなく躾だ!分かったか!」
ガーグは如何にも取って付けた言い回しをしながら拳を振り上げ叫びながら殴り掛かって来た。
目の端にはアニヤが驚いた顔で今にも気を失いそうな表情を見せているのが見えたが今はそれどころかでは無いな。
(困ったものだ…あまり目立ちたくは無いのだが…。)
俺は意識を集中すながら呟く意識を集中してからは物事がゆっくりに見える。まぁ、長い時間は無理だが少しは考える時間は出来る。
だがしかし、どうしたものか?
殴られてやるのは構わない、この場が簡単には落ち着き終わるのならだ…しかし、この男を見るに一発二発殴られてやっても終わるとは思えない。
それに今後の事も考えると…まぁ、しかしだ…此処は責任者に任せるかと、ゆっくり流れる思考の中で力を入れていた手の力を抜きながら思考するのを止めると振り上げたガーグの拳が後で掴まれる。
「ガーグ!お前は今、何をしているんだ?」
騒ぎを聞き付けて来たのか、誰かが呼びに行ったのか般若の面の様な怒り顔とそれを補ってあまりある殺気を放ちながらギルドマスター・バランが立っていた。
その風貌は昨夜とは違いギルドマスターに恥じない威厳だ。
「ギルド内での暴力行為は勿論、ギルドメンバー同士の争いも禁止なのは知ってるよな?」
バランはドスの効いた口調でガーグに問い掛け始めた。
問われているガーグはと言うと青褪めた顔から最早、蒼白に近い顔色だ。
当たり前だな、あの殺気、どうやらバランは俺が思う以上の使い手の様だ、伊達にギルドマスターはしてない?
「バ、バランさん!こ、此は違うんですよ!こ、こいつがアニヤさんに迷惑を掛けていたから…その…少し注意をですね…」
ガーグは必死の言い訳を始めている…まぁ、仕方無いよな?あの殺気は今にも殺されるかも知れない程の殺気だ。
この殺気に当てられて殆どの奴らが青褪め俯いている。
此方を傍観しながら見ているのは数える程だ。
「アニヤに迷惑を掛けている?本当かアニヤ?」
バランはガーグの拳を掴んだままアニヤに尋ねた。
「いえ、私はイズルさんに頼まれ事をして終わったのでイズルさんがお礼にお昼を奢ってくれると言う話をしていた所でした…その返事をする間も無くガーグさんが横槍を入れて来られました。」
ガーグの顔が蒼白から今にも気を失いそうな位にまで引き攣り目を見開いていた。
そうだろうな、ぽっと出の俺より少しは顔を知っている自分の味方をしてくれると思っていただろうし、何より自分の行為が間違って無いと心底思っていただろうしな。
その期待を裏切られたガーグの心境は計り知れないだろう。
「バ、バランさん!お、俺…俺は…」
ガタガタと震え出すガーグ、比例して殺気が強まるバラン、そろそろ口でも出すかと思った時。
「バランさん、その辺で許してやってくれないか?」
バランの後ろから声を掛ける男の声が聞こえた。
気付かなかった、気配を消していたみたいだがバランは気付いていたみたいだ、驚きもしない。
「ジェイドか?許す理由が無いな…」
バランは素っ気なく返す。
今のバランの目にはギルドの規律を乱したガーグへの怒りに満ちている。
此処で甘い顔をすれば今後にも差し障るから手を抜けないのだろう。
ジェイドと呼ばれた男が顔を顰めながらも食い下がる。
「確かにガーグも悪かったが、そっちの新人も悪いんじゃないか?来たばかりのクセにいきなり受付嬢を口説いてるんじゃ風紀が乱れるってもんじゃ無いのか?」
辛うじて言葉を選びながら取り繕うジェイドを一瞥するバランだが、そんな言葉と態度を意に介さず再びガーグを見る。
「ジェイド?風紀がどうと言うなら拳ではなく言葉で十分だろ?現にアニヤは困っていなかった…なら力は必要無いわけだ?なのにガーグは力を使おうとしていた…しかも、お前は止めようともせず、制裁を加え様とする俺を止める?果たしてギルドメンバーとして風紀を乱しているのはどっちだ?」
「身内に甘くてどうする!」
淡々と説明の様に言っていたバランが最後の一声を大きく張り上げると、拳を振り上げガーグに殴り掛かる。
全く、冒険者って言うのはどいつもこいつも血の気が多いやつばかりだな?
「バラン、そこまでにしてやれ!」
俺は未だに宙ぶらりんのままの状態で片手をガーグの顔の横に通してバランの拳を受け止める様に出す。
普通なら止めれそうに無い体勢とバランの拳の威力、しかしバチン!と激しい音と共に受け止める。
まぁ、原理は簡単だ…さっきコッソリとステータスを確認したら使い勝手の良さそうな魔法を覚えていたから使っただけだ。
ウィンド・ウォール…掌にだけ作った小さな風の壁だ。
それでも手が痺れるのだから馬鹿力だなバラン。
「イズル…お前…今のは…」
流石にバランは気付いたみたいだな?
他の奴も勘の良い奴や魔法使い系の奴は気付いたみたいだ。
ガーグは戦士系なのか分かって無いみたいだが…。
「今回の事はお互いの些細な勘違いからの事だ…まぁ、俺の要らん行動も誤解を招いた様だしな…」
俺はバランを見た後、ガーグ、ジェイドと見ながら未だに胸倉を掴んでいるガーグの手をポンっポンっと叩き言う。
ガーグはハッとした顔で手を離す、俺は軽く着地をしてガーグを見ると罰の悪そうな顔で視線を逸らしていた。
「しかしイズル…お前が良くてもギルドとしては…」
俺の言葉にバランが避難めいた様に言ってくる。
俺は首を横に振り。
「今回は何もなかった…それで良いだろ?」
俺は溜め息を付きながらもバランに説得めいた様に言うとバランも大きな溜め息を付きながら…
「分かった!今回は何もなかった!だが、次は無いからな!」
頭をガシガシと掻きながら呆れ口調で言うバランはガーグとジェイドを見てもう一度だけ溜め息をつくと機微を返して奥へと歩いていく。
「感謝するべきか?助かった…俺はパティー「疾風」のリーダーをしているジェイドと言う、今回は申し訳無かった…」
俺がバランを見送るとジェイドと名乗った男が近寄り頭を下げながら謝ってくる。
「いや、まぁ…俺も来て早々に軽率だった…お互い様だから頭をあげてくれ…あぁ、自己紹介がまだだったな…俺はイズル…ポーション作りをしていて、今回、この街にポーション屋を開こうと思ってやって来た旅の者だ」
俺も軽く謝るついでに自己紹介をするとジェイドと名乗った男や横にいたガーグ、ギルド内にいたメンバーがギョッとした顔で俺を見ると途端に騒がしくなった。
「な…ポーションを作る為に…この街に…ほ、本当か?本当に店を出してくれるのか?」
ジェイドが目が落ちるんじゃ無いかと言わんばかりに見開きながら近寄り聞いてくる。
「本当ですよ?技量はまだまだ未知数ですが初級ランクのポーションなら問題無いと昨日の内に確認出来てます。ギルドとしても、街としても今回は全面的にバックアップをする事で計画が進んでいます」
アニヤが俺を代弁する様に答えるとアニヤの方を見ていたジェイドがギギギギギッと音が聞こえそうな位にぎこちない動きで首を動かしガーグを見る。そして、そのままガーグの方にスタスタと歩いていくと手を振り上げゴチン!と音をさせながら後頭部への拳骨だ。
「このバカ野郎!考えなしに突っ掛かってるんじゃねぇ!大事な客に迷惑ばかり掛けやがって!ホラ!お前も謝れ!いや、詫びろ!いや、この際だ死ね!」
おいおいジェイド?段々と口調が荒く悪くなってるぞ?って言うか剣に手をやるな?危ないからな?
本当にこの街、大丈夫か?
何れだけポーションを渇望している?
まぁ、望まれて無いよりはましだが、過剰な期待は止めて欲しいよな?って考えていたらギルドの入口のドアがバンっ!と音を立てて荒々しく開く。
「イズルさん!大丈夫ですか?」
どうやらルナが来たみたいだ、後ろからは一足遅れて息を切らしたルルも見える。
「誰がイズルさんを…ってガーグ!君なの?イズルさんに手を上げたって言うのは!」
頭に血が登り顔を真っ赤にしながらドシドシと歩き近付きながら怒鳴る様に言うルナ、かなり怒っている様子だ…って言うかルル?後で黙々と大楯を構える?前項姿勢でそのまま突進して来そうな雰囲気は止めなさい。
「ガーグ!覚悟は出来てるよね?」
今にも斬りかからんとするルナが剣に手を掛ける、このままでは洒落にもならない。
「ルナさん、全然大丈夫だよ?ほら問題何て何もないって…何かの聞き間違いだ?考えてもご覧よ…ギルドの中の事だよ?ギルドマスターが出てきていてもおかしくないだろ?」
取り敢えずは現状の正論を話してみる、何せ今さっきまではバランもいた、しかし今はいないのだから後は周りが話を合わせれば大丈夫な筈だ。
「そ、それもそうだね…おかしいな?僕はイズルさんが絡まれてるって聞いたから…」
取り敢えずは落ち着いたのかブツブツと言いながら剣から手を離し考え込むルナにアニヤが話掛け。
「そうですよ、ちょっとイズルさんのお願いを私が聞いたからイズルさんがお昼に誘ってくれただけですから…」
そうアニヤが説明した途端にルナとルルがバッとアニヤを見た後にギギギギギッと音が聞こえそうな位のぎこちない動きで此方を見てきた。
「イ、イズルさん?ぼ、僕と一緒に行くって話は?ねぇ、僕じゃダメなの?」
「イ、イズルはん…ウチ、ウチも約束してたんよね?無かった事になってもうたん?」
ルナとルル二人掛かりで詰め寄られる事態に、いやはや、すっかり忘れてた…この状態はどうしたものか?
等と考えていたら周りからは再び殺気が…
「あのヤロウ!俺のルナちゃんに…」
「俺達の天使ルルちゃんに手を出してるのか!」
「コロス!」
「ぶちのめす!」
「「「ヤってやる!」」」
おいおい、何だ何だ…この二人もアイドルか?周囲の殺気が半端無いぞ…って目の前からも殺気が…ジェイド?
「イズル…貴様…我が愛しのルナさんに…新参者の癖に手の早さは一流か!」
待てジェイド!剣に手を…抜くな!構えるな!振るな!
ギャーーーーーーー!
イズル(神田川 出流)
ステータス
種族:人間
性別:男
職業:新米薬師(ポーション特化)
冒険者ランク:G
名前:イズル
年齢:19才
Lv. 15(77/3500)
HP 12/1230(1242/1845)
MP 1200/3400 (2200/5100)
ATK 820(1230)
DEF 420(630)
AGI 1210 (1815)
DEX 825 (1238)
MIND 22243(33365)
LUK 1852(2778)
〈スキル〉
鑑定Lv.MAX(能力限定/鉱物及び植物)
異世界言語翻訳
アカシック・ライブラリー(鉱物及び植物のみ)
詠唱破棄
魔力付与Lv.1
魔法付与Lv.1
魔法効果短縮Lv.3
魔力消費軽減Lv4
並列思考Lv.3
スキャンLv.2
アイテム・ボックスLv.2
〈魔法〉
風魔法Lv.3(ウィンド・カッター)
(ウィンド・ウォール)
(ウィンド・スパイラル)
火魔法Lv.2(ファイヤー・ボール)
(ファイヤー・ウォール)
水魔法Lv.2(ウォーター・ボール)
(ウォーター・ウォール)
土魔法Lv.1(クリエイト・シェイプ)
光魔法Lv.1(ライトアップ)
〈称号〉
願望者
黄泉姫の加護
皐月の加護
〈エクストラ・スキル〉
※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます