9 漸く一休み…かな?
「成る程、だから驚いたと…そうするとギルドマスターのバランさんとしては俺の技量にもよるけど街に居着いて欲しいって訳なんだよな?」
俺はニヤリとしたがら悪巧みな顔でバランを見ながら言う、人間誰だって相手の弱味に漬け込むのが一番良いことは分かってるからな。
そして、ギルドって所も同じ穴のムジナって訳だが俺が何が言いたいか分かる筈だ。
「なぁ、確かにハーフ・ギャザリングの連中を助けて貰った恩もあるし街待望のポーション屋なら手を貸さない訳には行かないんだが…何分、手持ちは少なくてな…」
バランは厳つい顔を苦虫を潰したかの様に顰めながら言う。
まぁ、森の中にあるにしては大きな街だが流通の少ない街なら手持ちも分からないでも無い、ならどうすれば良いのか?
現物支給でしょ?どのみちお金を持ってないから途中で狩った魔物を売らなきゃだったし、店持つなら全然足りないだろうからね。
「それなら現物支給でも良いですよ?永く俺を留めたいなら店舗兼住宅何てのを貰えると嬉しいですね?あっ 裏庭や井戸とかあると薬草を育てるのに便利ですね?」
苦虫を潰した様な顔のバランが絶望の様な表情へと変わる、まぁ、俺と言う人間を引き留め且つ永く、出来れば永住させ様と考えるなら初期投資は必要だ。
彼もギルドマスターをしているならバカでは無いだろ?
それでも悩んでいるのは余程、内情が厳しいのか、さて、どうしたものか?
等と考えていると再びドアが開き誰か入ってくる。
「マスター!何を悩む必要があるのですか?」
入って来たのはアニヤだった。
「今のこの街にはポーションは必要不可欠!それを作ってくれる方がいるなら我々ギルドがバックアップしてでもお願いするべきです!ましてやギルドメンバーの恩人でもあるのですよ!」
先程見た時のおっとりした感じからは想像も付かない程の気迫と強い口調にバランもタジタジだ、だがルナ達は別にそうでも無い所を見ると、此方が普段の姿かな?
「し、しかしだな…ギルドにだって財源が無限に有るわけではなくだな…」
完全に腰が引け逃げ腰になっているバラン、どうやら力関係は肩書きに関係無く逆転している様だ。
「私だってそんな事分かってます!だからこそ、こんな時だからこそ、街の各ギルドマスターが力を合わせて工面するべきじゃ無いんですか!」
アニヤは近くの木のテーブルにバンっと乱暴に叩きつけながら力説する、確かに一人で無理でも街の事なら他に協力が仰げるギルドがあるなら相談するのは良いかも知れない。
「イズルさんでしたよね。お任せ下さい!この街、フォレストタウンのギルドの名に掛けてご希望に沿える物件を見付けて見せます!だから、是非、この街に…」
先程の強気の態度から一変して弱気な姿になれば俺に近付き懇願する様に手を掴んで来る。
その表情には並々ならぬ必死さが見える、此処で断っては男が廃るってものだ、しかし…
「あぁ、店舗があればポーションを作って売ることが出来るから俺も生活出来るし、そろそろ旅を止めて定住先を探していた所だったから助かるって言えば助かるが…まだ、俺のポーション作りの腕を見せてもいないのに、そんな約束して良いのか?」
そう、俺は条件を出した物の相手に物を見せていない。
俺が何を作れるかも見せていないのに、もう大丈夫位に話が進んでいるのだ。
いやはや、気の早い…取り敢えず俺は話を区切るアイテム・ボックスから途中で採取してきた幾つかの薬草を取り出し、それと同時に
とルナ達を見る。
「っと言うわけで、暫くは皆に世話になると思うから宜しく頼むよ」
俺やギルドマスター、アニヤとのやり取りを見ていたルナ達がハッとした顔で正気に戻れば二人共笑顔になると再び言い争いを始めた、しかも今度はどっちが店が出来るまで泊めるかって話になっている。
流石に俺も女の子の部屋で寝泊まりは出来ない、自制心はあるつもりだが万が一にも変な事をする訳にも行かないからな。
「あぁ~二人共?流石に女の子の部屋で寝泊まり何て出来ないぞ?暫くは安全な宿で療養するよ?」
俺は言い争う二人にそう言うと二人は物凄い勢いで俺の方を振り向くと何でと言わんばかりの顔で見てくる。
いやいや、良く考えようね?幾ら俺でも会って間もない、年若い女の子の家に寝泊まり何て出来ないから?
いや本当に…そんな絶望した様な顔しないで…。
「あぁ~君達、恩人に感謝したい気持ちは分からないでも無いが取り敢えず本人がそう言ってるのだから、本人の意を汲むのも配慮と言うものだぞ?」
おっ?バランが何か良い事を言ったぞ、よし頑張れ!俺は何も言えんが…
「貴女達、安心なさい、彼はギルドから安全な場所を提供して治癒の魔法使いを派遣するから…」
いやいやアニヤ、多分、ルナ達が気にしてるのはそう言う事じゃ無いから?俺は何処ぞのラノベの主人公見たいに鈍感じゃ無いから彼女達の気持ちも理解しているつもりだ。
だからこそ、尚更、間を開けないと…こんなものは吊り橋効果みたいなもんだから時間が経てば冷静になって気持ちも覚める筈だ。
まぁ、ちょっと惜しい気もするが仕方無い。
「あぁ、そうして貰えるなら助かります、宜しくお願いします」
俺はアニヤの提案をルナ達が抗議する前に乗っかり頭を下げる、此でなし崩し的に此の場所は乗りきった。
「さて、取り敢えず現時点で決めれる事は終わったかしら?」
アニヤが口元を吊り上げ悪巧みな顔で笑いながら言えばパンっと手を叩き言う。けど、まだだと俺は思うよ?
「いや、まだ俺の技量を教えていないよ?やっぱり、どれ位出来るか分かってた方が後々の為にも良いだろうし、物件探しへの意欲意識も変わって来るだろ?」
俺はそう言うとベットから体を引き摺る様に出し重い体を持ち上げながら先程アニヤが叩いたテーブル脇の椅子に座る。
そして徐にアイテム・ボックスから野外ポーション作成用キットと薬草、ルナ達に飲ませたポーションの空き瓶を取り出す。
取り敢えずはウォーター・ボールとファイヤー・ボールを空中に固定、そこにウインド・カッターで二つを掻き回し高熱水の水球を作り出すと空き瓶を入れて煮沸消毒をする。
煮沸消毒の終わった瓶を取り出せば再びウインド・カッターを使い空中で掻き回す様に乾かし始めて放置だ、ポーションが出来る頃には乾いているだろ。
さて、次は薬草だ…“ヒトリ草”…此が初級ライフ・ポーションの材料だ。
此を磨り潰しました純水で煮詰めながら魔力を放射し混ぜる、此のときに一定量の魔力を放射し続け掻き回し混ぜ混む事で初級ライフ・ポーションが出来上がる。
但し、魔力が強すぎたり多すぎたりすると失敗だし、煮詰める火力が強くてもダメだ。
俺は此を鼻歌混じりに行い簡単に作る、出来た初級ライフ・ポーションは緑色をしたとろみのあるスープ状の物だ、此を煮沸消毒して乾燥したポーション瓶に入れてテーブルに置く、此処までの所要時間20分、瓶の乾燥が無かったら15分位かな?
「どうぞ、此が今簡単に出来るポーションですね…俺が作れるのは各ポーションの初級と一部中級です…初級なら今みたいに楽に作れますよ?」
俺は初心者御用達の初級ライフ・ポーションを見せながら笑顔で笑って見せる。
物は安物だが、此処では需要は多そうな物だ。
何より流通が少ない場所で材料の依頼を初心者冒険者にも出せる初級ライフ・ポーションの材料、そして手軽に安価に出せるライフ・ポーションを簡単には作って見る事で緊急時や需要等を考えても必要だと思わせるには十分だとアピールしてみせる。
そして俺の目論見通りにアニヤ達の目は見る見る内に真剣さを帯びていく。
バランは半口を開けてポカーンとしているが経理も担当しているアニヤの頭の中では直ぐに需要と供給、流通からでる街への利益が概算的に弾き出されている様だ。
「イズルさん!待っていて下さいね!直ぐにでも期待に添える物件を探して来ますから!」
胸元に拳を構え気合いを入れながら叫ぶ様に言うアニヤは、言うが早いか飛び出すように部屋から出ていく。
どうやら彼女は見た目以上にアグレッシブでバイタリティーのある女性の様だ。
さて、彼女が居なくなってしまったので俺は未だに意識が飛んでいるバランを見る。
「なぁ?そろそろ現実に帰って来ないか?まだ頼みたい事もあるんだが…」
そんなポーションが珍しいのかと思いたくなる位に驚いているバランに話し掛ける。
バランはハッとした表情で俺を見るとポーションと俺を何度も見ながら段々と笑顔になっていく。
「凄いじゃないか!初級とは言え、こんなに簡単にポーションを作れるなんて!此なら初心者達の怪我も減る…若い奴等の引退も防げる…」
バランは勢いに任せて俺の手を取って腕が肩から抜けるかと思うくらいに振りながら礼を行ってくる。
こいつも思った以上に暑苦しい男ではあるが同時にメンバーにも熱い男の様だ。
そんな男が涙目で握手をしてくるが、申し訳ない、気持ちは感動出来るが現実は気色悪いだけだ。
「あ、あぁ…出来る限りは頑張らせて貰うよ…」
俺は引き攣りながら返事を返す事しか出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます