8 街へ
「だ、大丈夫です?生きていますか?」
俺の下敷きになり顔を胸に押し付けたままルナは顔を上げ俺を覗き込む様に見ながら聞いてくる。
その顔は心配で死にそうな位の泣き顔だ。
だが俺は意識ははっきりしている物の、身体中が軋み痛く、力の全てを使ったせいで声もろくに出ない、にも関わらず背中から悪寒が走る、いや、ルナの顔も驚愕と恐怖に染まる。
「クククッ やはり強者か…しかも我を殺せる可能性を秘めた強者…」
有り得ない!胸に穴が開いてるのだぞ!
俺は焦った、胸を開けても生きてる何て…そして、何も出来ない今の自分に…立てない、動けない、喋れない…無力だ…。
自然と涙が出る…せめてルナ達が逃げれる時間稼ぎだけでも出来れば良かったのに、全くの意味が無かった…。
だが、俺が後悔の嵐を頭の中で叫んでいればダークエンペラードラゴンの次の言葉に俺は驚く。
「対神魔格闘拳法を使える者が現れたか…今はまだ使いこなせないが、使える様になれば永き永遠を生きる我を殺せる力となる…ならば今は生かすのが道理…我の期待に応えよ…ひ弱で脆弱な強者よ!」
ダークエンペラードラゴンは言いたい事を言いながら翼を羽ばたかせると俺とルナは転がる。
俺は仰向けになるとダークエンペラードラゴンが目に映り、俺の開けた穴がみるみる内に塞がって行くのが分かった。
化物め…穴を開けた程度じゃダメなのは分かった…今はまだ届かないのも分かった…なら次に会うまでに鍛え直してやるから待ってやがれ…そう思い睨み付ける。
奴も俺の意思を感じ取ったのか嬉しそうな顔で羽ばたきながら飛び去って行った。
「あ、あの…だ、大丈夫…」
転がっている俺に誰かが駆け寄って来たのが分かる。
女の子らしい可愛い声だ。
「し、死んじゃイヤや…頑張ってえな…」
んぅ?関西弁か?いや違うな…此方の世界のなまりか?
可愛い声に訛ったアンバランスな口調が意外と好感が持てる。
俺は薄目を開けて大丈夫の意思を示すと泣きながらも安堵した顔を見せる小柄な女の子が見えた。
あぁ、ルルか…ずっと話さず俯いていたのに俺の心配をしてくれた様だ。
体に毛布を巻き付け心配そうに屈み見て来るルルを見れば屈んだせいで見え出る太股の生足が何とも厭らしく見えてしまい思わず赤面してしまったが、当のルルは心配のあまり気付いておらず動く度にチラチラと見える白い下着がより一層、厭らしさを引き立ててしまったのは黙っておこう。
そうこうしている内に、俺と同じ様に飛ばされたルナはどうやら向こうで大の字になって気絶しているらしい、グランが下着姿のルナに毛布を掛けガイルを背負いながら近寄ってきた。
「まさかダークエンペラードラゴンを退けれる程の強者だとは思わなかった…さぞかし名のある冒険者なのだろ?取り敢えず、ご自分の薬で体を治された方が良い。」
グランがルナに毛布を掛ける時に俺が預けたポーションに気付き持って来てくれた、予防線で渡しておいて良かったと思う。
だが身動きの出来ない俺がどうやって受け取り飲もうかと考えていたら不意に頭が持ち上がり後頭部に柔らかい感触が…な、何と地面に座ったルルが俺に膝枕をしてくれた。
ルルは心配そうにポーションを手に取るとゆっくり俺の口に当て飲ませ始めてくれた。
うん!はっきり言ってラッキーの一言に尽きる!
可愛い女の子に膝枕だぞ!それだけでも価値があるのに看病の様に優しく
んぅ?誰だムッツリスケベとか言ってる奴は?
そんな事言って自分がこの状況になったら同じ事が言えるか?
少なくともご褒美だと俺は断言する!
頑張って良かったー♪
そうしている内にリカバリーポーションとライフポーションが効いて来る、流石にダメージが大き過ぎて完全では無いが動く位なら問題は無い様だ。
「はぁ~助かった…ありがとう…」
俺はルルの生足膝枕を断腸の思いで離れ地面に座りながら礼を言う、彼等が居なければポーションは飲めなかった…飲め無ければダークエンペラードラゴンが立ち去っても何れ死んでいただろうからだ。
「何、元々俺も危なかったんだ…それに君がダークエンペラードラゴンを撃退してくれなければ、恐らくは全滅してただろうからな」
グランからは普通に返される、悪い気はしないが少し腰が低すぎ無いから。
「う、うちからも…あ、ありがとう…うちら…あのままやったら…どないな目におうてたか…」
ルルが可愛い声で可愛い可愛いを歪ませ目尻に涙を溜めながらも礼を言ってくる。
思わずドキリとするのは俺だけじゃ無い筈だ?
可愛い子の泣き姿で堕ち無い奴はいない…うん!そう思いたい…俺はロリじゃ無い筈だ!
「いや、まぁ、ねぇ…あの状況なら普通の男なら助けて当然だろ?それが可愛い女の子なら尚更だって…」
俺は戸惑いながらも恥ずかしさともどかしさを誤魔化す様に言えば、当のルルは顔を今までに無い位に真っ赤にして俯き両手を頬に当てて、そんなとかいやいやとか言ってる。
俺は可愛いと思うのは本音何だがと心の中で付け加えつつグランを見た後、目線をルナにやる。
翼の風撃で飛ばされた気を失ったルナ、彼女が居なければ俺は確実に死んでいた。
俺は今だにダルい体を持ち上げながらもゆっくり彼女に近付く、折角治した体も又傷だらけになってしまった。申し訳ない…。
俺が彼女の近くで項垂れていると後ろから呪文が聞こえ同時にルナの体が光に包まれる。
「天空より遥先に住まいし大いなる神々に願う、我、尊き者に日々の感謝を、我、尊き者に日々の信仰を、なれば我に一時の癒しの力を貸し与えん!」
「ヒーリング!」
恐らくはルルさんの回復魔法なのはすぐに分かった、目の前でルナの体の擦り傷が消えていく。
「うちは泣いてばかりや…ルナが必死で文句言って無かったら…うち、酷い目におうてたんや…こんな事しかしてやれん…」
何と言うか内向的と言うか自己評価が低いと言うか、ルル自虐趣味ですか?
俺が思いふけているとルナが目を覚ました様だ…だが意識がはっきりしてないのかボーっとしている。
大丈夫か?っと思っているとルナの目が急に見開く…っと同時にガバッと体を起こすと勢いで掛けてあった毛布が落ち下着姿に、しかし、そんな事気にして無いのか俺に飛び掛かる様に胸元を掴んで久留と。
「ちょ、ちょっと大丈夫だった?体は何ともない?何が起きたの?って言うかダークエンペラードラゴンは?何で僕らは生きてるの?」
どうやらルナは気を失う以前の状態から覚醒し、矢継早に質問攻めをして来ている様だ、だからこそ、此だけは先に言おう…
「ルナさん、落ち着いて…取り敢えず、毛布を持って体に巻きましょう…あまりに目の保養になり過ぎてますよ?」
俺は顔を逸らしつつも目だけはルナを…ルナの首から下を見ながら言う、此は俺が悪い訳ではなく男の性だ…断じて俺のせいじゃない!って事にはならないかな?
「い、イヤーーー! み、見るなーーー!」
俺の指摘に自分で目線を下げるルナさん、そして僅かに膨らむ自分の胸を包む下着、女の大事に所をギリギリ隠す程度の紐Tバックの様なパンツ姿に気付けばみるみる内に見たことが無い位に真っ赤な顔になれば下唇を噛み、頬を膨らませながら掴んでいた片手を離せば後ろに振りかぶり、叫びながら俺に平手打ちをするとバチーンと派手な音をさせる。
俺は無抵抗のまま綺麗に顔面ヒットする平手を受け止めれば真横に飛んで行く。
いや、それはもう綺麗に横に飛んでゴンッと木にぶつかり、そのまま気を失った。
再び目を覚ました時には、どうやらベットの上に寝ていた様だ。
「知らない天井だ…」
どこぞの某アニメのセリフを言う機会が来るとは思いもよらなかったよ…いや、本当に…スケベ心は身を滅ぼすの典型だったな…危うく死ぬところだった。
まぁ、ある意味、死んでも後悔は少なかったか?などと下らない事を考えているとガチャリと言うドアの開く音が聞こえた。
「あっ 目を覚まされましたか?大変だったみたいですね?」
入って来たのは見た目20代前半のナイスプロポーションの金髪ロングのお姉さん、胸はFいやGは在るか?括れた腰も良いね…お尻も大きく…俗に言う不二子ちゃんスタイルをリアルで見ることになるなんてラッキーだ!
…んぅ?何だ…彼女の後から立ち上る気配は…これは…恐怖…体の震えが止まらない…。
「全然目を覚まさなかったのに随分と元気そうだよね…僕が何れだけ心配したと思ってたのかも知らないで!」
彼女の後ろからは聞きなれたハスキーな声が恨み節の様に聞こえる。
これは一体…俺は何故、彼女にこうも怒られる様な状態になってるか分からない?
いや、それ以前に俺がこうなった原因の一つは君では?等と心の中で突っ込みを入れてみる。
「皆、直ぐにアニヤさんに見とれるから不潔だよ!なんだい!どいつもこいつも胸やお尻ばかり見てさ!」
最早ヒステリックに叫びながらドカドカと部屋に入って来るルナ、どうやら俺が部屋に入って来た金髪美人さんに見とれてた事に腹を立てているらしい。
此はいかん!折角上げた好感度が下がってしまっている…早く修正しなければ。
「いや、別に見とれていた訳じゃ…見知らぬ部屋にいて入ってきたのがそちらのアニヤさんだっけ?が来たから思わず見てただけで、見とれるって言うのはルナさん見たいに可愛い子を見るときだよ?」
否、普段なら絶対に言わないヨイショだな…しかし今回は必要だろ…少なくとも長い付き合いになりそうだし…。
俺が今後の損得を考えながら言えば乱暴に歩きながら近付いてきたルナが再び真っ赤な顔になる…そして此方を見ながらあたふたし始めると再び手を振りかぶる…
「そ、そんな事言うなーーー!」
バチーン!っと激しい音と共に俺の体はベットの上から浮かび上がりその場で空中三回転を横に決める…いや、良く首の骨が折れないと思ったよ…そしてルナ…君、見た目以上に力があるんだね…。
俺は三回転を決め、そのままベットに顔を突っ込む様に落ちれば再び気を失った、次に目を覚ました時には窓から見える外は夕日が見え、ベットの横には椅子に座ったルルさんが居眠りしていた。
流石に服は着ていたが可愛らしい薄ピンクのワンピースの様だ。
そう言えばルナは皮のドレスアーマーの様な物を着ていた様な…。
「再び知らない天井…ではない、さっきの部屋かな?」
クラクラする頭と妙に痛い顎を撫でながら重い体をゆっくり持ち上げながらベットです上で座る、横に椅子に座って寝ているルルを見ながら考える。
取り敢えず無事に生きてるみたいだな…しかしあのダークエンペラードラゴン奴、俺の力の事に気付いていた感じが…それに最後のセリフ…“我を殺せる力”か…確かに極めれば奴だって倒せる…奴は死ぬ事を望んでいる?
圧倒的な強さ…神の様な力と寿命に退屈して生きるのが飽きた?
いやいや、そこまでラノベ展開は有り得ないか…。
俺は溜め息を突きながら再びルルを見る、いや、やっぱり何度見ても可愛いよ…こんな妹がいたら自慢しまくりだ!
俺がルルを見ているとルルの体が小さな震え薄っすらと目を開け此方を見る、そうすると徐々に目は大きく見開かれ途端に飛び付くよう俺に向かってきた。
「よ、良かった~~~無事や…生きてたわ~~~ホンマに良かった~~~」
ルルは俺の胸元に飛び込むと泣きじゃくりながら涙声で叫び続けていた。
いやはや、見た目以上に女の子って柔らかいのな、俺に抱き付くルルを宥める様に撫でる頭、柔らかそうな髪を撫で落ちそうになる体を腰に手回し支えながら触る感触、どちら男には無い柔らかだ。
不意にドアがガチャリと開く音がする、そしてゆっくり隙間が出来ると隙間から覗く赤い瞳が…俺はビクリと体を震わせ内心は叫びたいのを抑えながら赤い瞳を見る。
そんな俺に気付いたのかルルが泣き顔を上げ俺を見ると俺の視線に気付きドアの方を見る。
「あっ! ルナっち、来たんね…はよ中に入りやっ!入ってはよイズルはんに謝り!」
ルルは今までを泣き顔、泣き声とは一転して怒っていた。
どうやら俺をノックアウトした子とに怒っている様だ。
「う…うん…あの…その…ご、ごめん…なさい…その…ぼ、僕…びっくりして…」
ルルに言われておずおずと入って来たルナは俺のベット近くまで来ると内股で太股を擦り体を縮め両指を胸元で絡めいじける様に真っ赤な顔で謝ってくる。
うん!可愛い女の子は得だ!此れだけで無罪!
「いやまぁ、気にしなくて良いよ…幸い命に別状も無かったし…」
っと俺が軽く言うと下から待ったが掛かった。
「それは駄目や!大体、問題無かった訳や無い!イズルはんの顎は砕けたし!首から落ちた拍子に首の骨は折れたし!ルナがうちの所に飛び込んで見に来た時には瀕死だったんや…上級魔法を使わな危なかったんやで!」
うん!どうやら俺は死ぬ一歩手前まで行ったらしい…いや、知らないって良いことだ…はははっ…。
「いやまぁ、それは…ルルさんにはお世話になったようで…何かお礼をしないとダメですね?」
取り敢えずルナから目線を外しプリプリと頬を膨らませ怒っているルルを宥める為に顔を下げ見ながら出来る限り笑顔で言う、うん、妹を宥める兄の気分だ。
「え!?うちに礼?そ、そんなの良いね…うちこそ助けて貰ったんやし…おあいこや!」
どうやら俺の笑顔は通じたらしい、真っ赤な顔で慌てながらあたふたするルルが本当に可愛いと思う。
「いや、あの…その…う、うち…その…で、でも…あの…だ、だったら…こ、今度…その…しょ、食事でも…い、一緒に…そ、その…ふ、二人で…」
おや?何やら話が続いてる様だ。どうやら食事のお誘いらしい、是非も無い!
可愛い女の子と食事なんてデートだろ!
お礼をしなきゃならないのにご褒美だ!
「分かりました、では、少しこの街でゆっくりするつもりでしたから落ち着いたら食べに行きましょう」
俺は気楽に答えるとルルはこれ以上無い程の笑顔を見せながら首が取れるんじゃ無いかと思うほどの勢いで上下させている。
俺に妹がいたら甘やかしまくりだったろうな。
そんな事を考えているとベット横のルナは真逆の顔で絶望する表情をさせている事に俺は気づいていなかった…が…
「ちょ、ちょっと待って…ぼ、僕は助けて貰った恩も怪我をさせたお詫びもしてないんだから僕が先だよ!」
青褪めたルナが焦る様に言う、まぁ、理屈は分かるが俺的には焦る必要も無いし気にする必要も無いのだが…
「だ、だから看病もまだしないとダメだから僕の部屋に泊まって!」
俺が諸々の事を考えていると真っ赤な顔になったルナが有らぬことを口走った様な…看病までは言い…しかし、何故に彼女の部屋で?女の子の暮らしている所に男を入り込むのか?
「な、何を…だ、大丈夫ですよ…もう、そんなに酷く無いですし…」
流石の俺も焦る。
付き合ってもいない女の子の部屋に泊まるのは流石に無いだろ?
そんな事を考えていると…
「な、何を言ってるんや!そ、そんな事言うたら、うちやって守ってもろうたや…それに治療魔法が使えるうちの方が看病するのが良いに決まっとるやん!」
何故か嬉しそうにしていたルルまで有らぬことを言い始めお互いに言い争いを始めてしまった。
あれ?仲良さそうだったのに…
俺は流石困ってきたと思うも、まだ体は思うように動かない為にどうしようも無く見ている。
「おい!一体何事だ?下まで騒ぎが聞こえているぞ!」
今度は何だと目をやれば入口からは2m以上のゴツい体の男が立っていた、その目は鋭く吊り上がった口の端からは縄でも噛みきりそうな位の凶暴な犬歯が見える、額から左目を通り頬まで入った切傷にスキンヘッド、本当に人間かと思える風貌の男がのしのしと入って来る。
俺は咄嗟に強いと感じ身構える。
「クククッ そう構えるな!俺は此処で責任者をやっているギルドマスターのバランっ言うんだ!」
バランと名乗った男はルナ達の前まで来ると高笑いしながら身構えた俺に向かって名乗る、こいつ、見た目以上に出来る。
だが敵対心も無い…ならを此処で事を構える必要も無い…
「それは済まなかった、色々とあったものだから…俺はイズル、しがない旅のポーション屋だ」
俺はダークエンペラードラゴンにも名乗った児とを同じ様に言う、あの世にいた頃から考えていた、スキルを貰うなら気楽に過ごせる物が良い、慌ただしくない、それでいて自分の健康も見れる物、ポーションを作れれば病気にも対応出来るし、積極的に魔物退治をしなくても良い筈だって考えて決めたのがポーション屋だ。
だが、俺の考えとは真逆に何故かバランは目を見開き驚いている。
「な、ポーション屋だと!お前、ポーションが作れるのか!本当か!」
何だ?剣も魔法もある世界でポーション何て珍しくないだろ?
前準備の勉強でもポーションは普通にある事は確認済みだぞ?
俺が疑問に思っていると…
「んぅ?不思議そうな顔してやがるな?何だお前、大きな街しか行った事無いのか?こんな小さな辺境の街にはまともな薬師はおろかポーション屋何てまず来ない、薬もポーションも行商頼り何だよ」
在るほど辺境ね、まぁ、有りがちな話だ…確かに森に囲まれてるし田舎だとは思ってたけど、そこまで田舎だとは思わなかったな…
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