7 異世界転生!
どれ位経ったか分からないけれども俺は目を覚ます。
意識がはっきりするまで少し掛かった物の徐々に覚めて来る目で周りを見ればどうやら俺は森の中にいるらしい?
森の少し開けた場所で大の字になって寝転がっているのが今の俺の状態だが、問題は俺の周りの状態だ。
何故、俺の周りでは角の生えた大型犬位の兎やハサミの様に内側に刃物が付いた鹿が俺に向かってぶつかって来ている。
いや、正確には俺から半径5m程離れた場所で突進して来て止まっていのが分かる。
お陰で俺は冷静に観察出来ているのだが何せ分からない事ばかりに加えて集団でタコ殴りの様に襲って来ている奴等を見ていると恐怖の何者でも無いのだが、それでも取り敢えずは無事な事と原因を確かめる為にステータスや持ち物を確認する。
ステータスは此処に来るまでと変わらない、装備も服装の為、攻撃力も防御力も上がらない、持ち物は…アイテム・ボックスの中らしい。
アイテム・ボックスの中には、マジック・テント、マジック毛布、マジック・コンロ、食器類、調味料各種、解体用ナイフ(銅級)、ショート・ソード(銅級)、ポーション各種(初級10個ずつ)、ポーション製作用キット(中級)、野外ポーション製作用キット(初級)、簡易結界君(創生級・発動中)だそうだ。至れり尽くせりだな、感謝、感謝。
うん、此は間違いなく簡易結界君のお陰だな。
性能は…結界を貯めた魔力量に応じて発動して持続させる道具らしいがレア度が高いな!
魔力を最大まで貯めると約12時間の結界が発動するらしいが最大魔力量が12万か…一時間一万って所か…貯蓄タイプの様だから暇を見て貯めないとダメだな…。
まぁ、取り敢えずは黄泉姫達の好意か最大まで貯まってるから今は安全なみたいだけれど、結界の強度も気になる…幾ら創生級でも簡易みたいだから何でもかんでも防げる訳じゃないだろうしな。
先ずは目の前の問題から片付けないと…っと思いながら漸く現実に目を向けるも溜め息しか出ない。
アイテムの確認をしている間にも魔物が増えていた…一体何なんだ…それとも、この世界では此が当たり前なのか?っと思うほどに増えていたが考えていても始まらないし終わらない。
取り敢えずは手を前に出して定番の…
「ファイヤー・ボール!」
俺が口に出して言えば目の前には野球のボール程の火の玉が出ると一直線に勢い良く飛んでいくと結界で止まっていた角の生えた兎に当たればドォゴン!と爆発し丸後げにすれば一発で倒せた様だ。
勿論、爆風も結界で止まっているから俺にはダメージは無い。
今更だが魔法は結界を通り抜けてくれたことに安堵する…もし抜けずに内側で爆発してたら自爆で終わってたからな…クワバラクワバラ…。
気を取り直して次の魔法を…
「ウィンド・カッター」
「ウォーター・ボール」
俺は連続で魔法を放つとウィンド・カッターは手を前に風のブーメランの様な塊がウォーター・ボールはファイヤー・ボールの水バージョンだ、どちらも飛んでいくと結界を通り抜けて兎や鹿に当たると兎はウォーター・ボールと弾け飛び転がり絶命、鹿は首を切り落とし絶命。
兎までなら何とか見れるが鹿は目の前で首が跳ね飛ぶのを見ると若干ホラーなので、今回は敢えてウォーター・ボールを使って終わらせる事にした。
しかし数が多い、何度もウォーター・ボール等と言ってると口も疲れて来たところで詠唱破棄があるのを思い出し頭の中で唱えれば同じ様にウォーター・ボールが出た、最初に気付けば良かったと肩を落としながらも永遠とウォーター・ボールを打ち続ける。
そうこうしていると大体一時間くらい過ぎた頃に数も随分と減り魔物の死体の山とウォーター・ボールで辺りは水浸しになったなった所で魔物が居なくなった。
俺は恐る恐る魔物の死体の近付くと結界は固定されているのか動かない、どうやら発動した場所を中心に範囲が固定されるみたいだ、結界の場所を変えたければ一度解除するしか無いみたいなので取り敢えず結界を内側から恐る恐る触って見ると水面を触る様に波紋を広げながらゆっくり指が外に出る。俺はドキドキしながら指を戻すと辺りを慎重に見渡し魔物がいないかを確認しながらそのまま結界から出る。
指と同じ様に結界に触れた場所から波紋が広がり抵抗もなく結界の外に出られた、さぁ、検証だ…このまま中に入れるか…結果、入れた。
俺は何度か繰り返し、結界の外から石を投げたり持って入ったり、魔物の死体を引摺り入れて見たりとしてみた結果、どうやら俺と俺が許可する物は中に入れるらしい。後は生きている人とか入れるとかを調べないとダメだが、此ばかりは人がいないと検証出来ないし、物が物だから簡単に人の前に出して見せて良いのか分からないから慎重にやらないとなダメだよなと思いながら俺は一度結界を消して魔物の死体の中心にまで歩いてから再び発動して魔物の死体を結界の中に入れる。
そしてアイテム・ボックスの中から解体用ナイフを取り出しながら兎と鹿にスキャンをかけると予想通り…
種族:魔物
ランス・ラビット
Lv.3(22/55)
HP 0/33
MP 0/0
種族:魔物
ブレード・ディアー
Lv.5(55/78)
HP 0/62
MP 0/0
俺の目の前に薄いディスプレイの様な物が浮かび上がると魔物の名前や状態が表示される。
此処までなら鑑定と同じだと思うが、そのディスプレイの中には魔物の死因や剥ぎ取りする為の場所の指示まで出ていた。
まぁ、恐らくは俺と魔物のレベル差もあるから詳しく出ているのだろうが今は助かる。
俺はスキャンを見ながら兎と鹿の解体を始めた。
しかし現代っ子の俺がいきなり、魔物とは言え生物の解体何て普通は出来る筈も無いのだが、そこは一年間の訓練の成果で何とかなった。
最近の数匹は苦労したが途中からはディスプレイを見なくても出来る様になっていた。此はDEXの賜物か?元々の俺はそんなに器用じゃないからな。
スキャンを使わなくなった俺はスキャンを解除して簡易結界君に魔力を注入しながら剥ぎ取りを進め始めた。
途中、何度かステータスで魔力の残量や減り具合と回復量の確認をしながら剥ぎ取りを進めていたが、どうやら今の状態だと一分で200程回復しているから、かなり良いんじゃ無いかなと思っている。
そうしている内に剥ぎ取った部位や肉等をアイテム・ボックスに入れて行くと満タンギリギリになって漸く全ての解体が終わった、残った骨や内臓はファイヤー・ボールで焼き処分した。
まぁ、不慣れな上に慣れない環境、いつの間にか日も暮れ始め俺は仕方無く周りの草を鑑定し食べられそうな物やポーションの材料になりそうな物を採取、アイテム・ボックスから食器やマジック・コンロ、剥ぎ取った兎の肉等を取り出し簡単な食事を作る、勿論、結界の中で魔力を注入しながらだから簡易結界君も一晩なら持ちそうだ、明日の朝には移動したいなと思う…勿論、周りに魔物がいなければだが。
翌朝、目を覚まして周りを見れば魔物はいなかった、昨日が特別なのかと思いつつ簡単な薬草スープを作り荷物を纏めて移動の準備をする。
漸く俺の異世界生活が始まると意気込んだのは一時間前の話だ…
「こ、此処は一体何処なんだ…」
俺は未だ森の中を歩いている、草木を分け、魔物を注意しながら、時には先制攻撃で倒し進む。
しかし、獣道しかない森の中を永遠と歩いても道も村も町も見えない、俺は困ったなと思っていると微かだが人の声が聞こえる。
(やった!人がいる)
漸く人らしき気配を感じ、それでも慎重に進んで行けば木の影から人が見える…ただし不穏な気配ををさせてはいた。
そこには両手足があらぬ方向に曲がった見た目戦士風の男、ゴツい体には似合わず頭には猫耳の様な物が見えるのと木に両手を剣で刺され両足にもナイフが数本刺された明らかに重症、或いは死んでいるかもしれない魔法使い風の男、此方は破れたコート風の服で分からないが細そうな体の様だが頭には犬耳が付いていた。
そして、その少し離れた所にには簡単な革鎧を着た男達が六人、その足元には小柄な女の子が二人、一人は150cm位かな?薄い褐色肌の尖った耳が見えるシルバーブロンドの長い髪のダークエルフっぽい女の子と、更に小柄な140cmないかな?位の少しがっちりした体型の女の子、此方は赤いショートボブをボサボサにした感じの髪型の子だが、二人とも両手を縛られ寝転がされている。
因みに、どちらの子も見た感じツルペタ微乳?
その女の子達も良く見れば抵抗した後なのか殴られた後や剥ぎ取ったらしい鎧や装備が散らかり服もあちらこちらが破れて卑猥な格好にもなっていた。
「何で!何でこんな事するんだよ!」
ダークエルフっぽい女の子がハスキーな声で口調を荒くし泣きそうな声で叫ぶ、しかし、周りの男達はニヤニヤと下卑た笑いをしながら見下す様に見ていれば、その内の人が…
「流石のB級パーティー様も高難易度の依頼後じゃ余力もなく注意力散漫だったな…お陰で簡単に捕まえれたぜ!」
男がダークエルフの女の子に下卑た顔で笑い言いながら前足を蹴り上げ女の子のお腹を蹴れば、細い華奢にも見える女の子の体はくの字に曲がり続いてゲホゲホと苦しそうに咳き込みながらも顔を上げ睨んでいる。
だが、そんな彼女を周りの男達はゲラゲラと笑い蔑む目で見ていた。
「半端者のハーフ風情がデカイ面してるから、こんな目に合うんだ!半端者は半端者らしく小さくなって依頼をこなし、報酬を半額は俺達に納めて、女は体を使って奉仕してれば良いんだ!」
男は睨む女の子に男はあまりに理不尽な物言いで言う所を見ていれば、どちらが正しいのか直ぐに分かる。
いや、元々から女の子が酷い目に合ってる時点で関係無く男達が悪いと決めつけていたんだが…別に男女差別でもスケベな訳でも無いぞ?いや、本当に…あははっ…。
さて、どうしたものか…相手は六人…あまり時間は無い…現に今、嫌がる女の子達の残り少ない服を剥ぎ取り下着姿しやがった!
こうなったら、なる様にしかならないさ!
俺は今ある力の限りを使って踏込み駆け出す…そう〈力の限り〉だ…
途端に俺は自分の体に羽が生えたかの様に軽い、あまりの体の軽さに思考が追い付かないまま一瞬で男達の目の前にまで走りきってしまった。
男達もまるで瞬間移動でもしてきたかの様に現れた俺に驚いている。
だが、どちらも驚いたままじゃいられない。
先程、女の子を蹴っていた男がいち早く正気に戻れば腰に手をやり剣を抜こうとする。
男が正気を取り戻すと同時に俺も動き出す。
「
男達の前で立ち止まったまま勢い良く体を一回転させる、ただし残像が残るかの様な勢いでだ、そのままの勢いで気を溜めた肘打ちを繰り出す。
剣を抜こうとする男より、ただ肘打ちを繰り出す俺の方が遥かに早い。
俺の肘打ちは男の胸に吸い込まれる様に打ち込まれる、打ち込まれた肘打ちは男の革鎧を打抜き男の胸を打抜く、打抜かれた男は打たれた勢いのまま後ろの木へと飛ばされる。
辛うじて息があるのは見えるが、考えて欲しい、言葉にすれば長い内容も瞬きの間に行われれば誰しも理解が出来ない。
ましてや突然現れた男がいて、次の瞬間には自分の仲間の一人が飛ばされている。
余程の戦歴でも無い限り急な対応は出来ないだろう。
俺は勢いに任せて、そのまま男達へと向かう。
「
俺は文字通り踊り出る様に男達へと向かう、弧を描き、円を描き、拳を、肘を、蹴りを、男達に考える暇を与えず連続で繰り出し倒して行く、最後まで男の腹に拳をめり込ませ悶絶させながら漸く俺も止まる。
拳を引き、深呼吸をする様に息吹きをすれば男達を無視して女の子に駆け寄る。
ダークエルフの女の子とは別の女の子は更に小柄な体を下着姿のまま、自身で抱き抱える様に泣きながら俯いていた、ダークエルフの女の子も下着姿で目尻に涙を溜めてはいるも隠そうともせず驚いた顔をしながら此方を見ていた。
「あぁ…まぁ、なんだ…目の保養にはなるが、要らん欲情をする訳にもいかないから、此でも羽織って…」
俺はダークエルフの女の子と泣いている女の子にアイテム・ボックスの中から毛布を二枚を差し出せば、女の子は驚いた顔をしながら徐々に真っ赤な顔になると俺から毛布を引ったくる様に取ると自分に構わず泣いている女の子へと駆け出し体に羽織らせ宥め始める。
俺はそんな女の子を何時までも見ているのも悪いと思い女の子から簡易結界君の範囲ギリギリで結界を張れば怪我をしている男達もギリギリ範囲に入った。
面白かったのは、俺が打ち倒した男達は結界に阻まれ弾き飛ばされたのだ、期せずして結界の中に入れる人と入れない人の検証が出来た。
俺は怪我をしている…特に刺されている男に近付く。
「なぁ?大丈夫か…」
俺は狼の耳をしている男に声を掛ける。
辛うじて息をしているのは分かるが意識があるかは別だ…剣を抜いていきなり暴れられても困る。
しかし心配は杞憂に終わった、男は完全に気を失っている様だ。
俺はアイテム・ボックスからリカバリーポーションとライフポーションを取り出し剣を一気に引き抜くとリカバリーポーションを男の手に振り掛ける。
木に串刺しなっていたては見る見る内に傷が塞がり出血が止まる。
それでも目を覚まさない男を見ればダメージの深さが分かる。
俺は続けて足のナイフを抜きながらリカバリーポーションを何本もかけていく。
全ての傷が塞がるのを確認した後には口に無理矢理ライフポーションの瓶を咥えさせ、ゆっくり口の中に流し込み飲ませていく。
血の気が引き青褪めていた男の顔に体内で急速に回復する体力お先程のリカバリーポーションとの相乗効果で大量の血液も作られているのか赤みを指してきた。
取り敢えず危機は脱しただろうと思う、次は両手足がヤバい男の方だ。
「待たせたな、大丈夫か?」
俺は体を痙攣させながら息も絶え絶えの男に近寄り声を掛ける。
「な、仲間を…助けて…く…れた…事に…は…感謝…する。…だが…こ…れ…以上は…ふ…よう…俺達…をた…すけ…ても…得に…は…なら…ない…」
壊された両手足の激痛の中で辛うじて吐いた言葉が感謝と拒絶だった。
どうやら、かなりの訳有り…っが、残念ながら関わってしまった以上知らん顔は出来ないのが日本人気質…
「損得は俺が判断する…今は先ず飲め!」
何れだけ拒絶しようとも所詮は大怪我人、無抵抗に等しい男の口に残っていた五本のリカバリーポーションの内の二本を飲めと言わんばかりに口に捩じ込む。
飲まなけれ吐き出すしかない大事なポーションを口に諦めた顔で飲み始める男の両手足が、まるで巻き戻しをみるかの様に戻っていく。
男は自分の両手足が治るのが分かれば今だ違和感があるのか震えながら体を起こし胡座を掻くように地面に座るも、そのまま深く頭を下げた。
「今回は本当に…本当に助けて頂き感謝する。しかし、これ程のポーションを使って頂きながら俺達には返せる物があまりにも少ない…命と天秤に掛けるつもりは無いが、それでも返せる物が少なすぎて…何と詫びれば良いのか…」
男は頭を下げながら震えている体を更に震わせ今にも泣きそうな口調で言う。
本当に俺に対して申し訳ないと思っているのだろう。義理堅い男だ。
「何、さっきも言った様に損得は俺が決める…少なくとも俺はアンタを助けた事が損だとは思わないぜ?」
ニヤリとした顔を見せながらライフポーションを差し出し俺は言う、男は苦笑いをしながら諦めた表情になるとライフポーションを受け取り飲み干していく。
ライフポーションを飲んだ男の顔は青褪めていた顔から先程の男と同じ様に赤みが指し体の震えも止まっていく。
「それに可愛い女の子を助けただけでも良しだろ?何せ知り合う機会も得れたしな!」
俺が笑いながら後ろにいるだろう女の子達の事を言え男は微妙な顔で見てくる。
そこは怒るとか同じ様に笑うとかじゃないだろうかと思うも、どうやら男の考えは違うみたいだ。
程無くして後ろから声を掛けられる。
「良いかな?お礼が言いたいのだけど…」
遠慮がちだが可愛い声だ…俺は問題無さそうだなと思い振り替えれば先程のダークエルフの女の子が毛布を体に巻き付けて立っている。
その後ろには俯いたままの女の子も毛布を体に巻き付け隠れる様に立っていた。
「凄く強いんだね?助けてくれてありがとう…僕の名前はルナ、こっちはルルって言うのよろしく。」
ふむ、ルナにルルか…僕っ子はマニア向けだな…勿論、俺も萌だ!
「気にする事は無いさ、可愛い女の子の危機に助ける事が出来るのにやらない何て俺の信条に反するからねっ」
俺は笑いながら言ったのだがルナと言った女の子は顔を真っ赤にしながら驚いていた。
良くみると後ろのルルと言う女の子何か驚きのあまり顔を上げビックリした顔で俺を見ている。
俺はそんなに変な事を言ったのかと内心焦りまくりだ。
「あぁ~何だか、どうやら君は…その…」
「あぁ、紹介が遅れたな…俺の名前は…」
っと名乗ろうと思った所で思わず言い淀んだ…俺は一度死んで、新しい生活を始める。
なら名前も新しくするべきでは…とも思ったのだが、咄嗟では何も思い付かず結局は…
「俺の名前はイズルだっ」
普通に名乗ってしまった…まぁ、姓はこう言う世界だし貴族しか持ってないのが定番だろうから名乗らない…
そう思い名乗った、俺に男は…
「あぁ、そう言えば俺も名乗っていなかったな、俺の名はグランだ、あっちはガイル…俺は虎獣人のハーフ、ガイルは狼獣人のハーフだっ」
どうやら二人はハーフらしい、そう思っていると後ろからルナが話し掛けてくる。
「私は…その…ダークエルフの…ハーフよ…悪魔族との…」
後ろを向けば真っ赤だった顔のルナの顔は暗い別の意味で泣きそうな顔で言ってくる。
「ウチは…ドワーフのハーフや…やっぱり悪魔族や…」
ルルと言った女の子もルナと同じ様に暗い顔をしながら言う、二人共、悪魔族とのハーフ何だと改めて見てみれば、ルナは褐色肌に尖った耳、琥珀色の瞳孔をしていた。
ルルもドワーフらしく小柄で少しがっちり目の体つきだが女の子特有の柔らかそうな肌に、やはり瞳孔が琥珀色だ。
そんな俺が二人を見ていると二人とも怯え始めていた。
「あぁ、悪い…珍しい瞳だと思ったもんだから…悪気は無かったんだ…すまなかった…」
俺はジロジロ見てしまった事で気を悪くしたのかと思わず謝ってみたが、そうすればそうしたで再び驚かれた、一体何なんだ?
「イズルさんって、一体何処から来たのですか?」
ルナに問われて思わず悩む、果たして俺はどう答えるべきか?
正直に話せば気違い扱いだけれども嘘を付けばバレそうな気もする。
「あぁ、まぁ…何だ…俺は方々を旅していてね…この近くまで来たんだけど森の中で迷子になってしまって…それでまぁ、君達を見つけたわけだ…」
最早、苦し紛れでしかない言い訳だ…バレたらバレた時と腹を括って嘘を言う。
「やっぱり…そうなんだ…だから、僕達の事を知らないんだ…」
俺の嘘を信じたのかルナは考え込む様に言う、後ろのルルや良く見ればグランも同じ様な顔をしている。
「まぁ、何はともあれ助けられた事実には変わらない、改めて俺は〈ハーフ・ギャザリング〉のリーダーをしている戦士をしているグランだ、あっちは魔法使いのガイル、彼女ルナは弓を主体の補助系魔法使い、後ろのルルが盾役兼治療魔法の使い手、この四人でチームを組んでいる。」
グランが自己紹介を兼ねてメンバーを紹介してくれた。
俺はアイテム・ボックスからリカバリーポーションとライフポーションを二本ずつ取り出しながらルナさんに差し出す。
「まぁ、色々あるとは思うけど、取り敢えず女の子が傷だらけなのは俺的にダメなんで傷を治しなよ」
思案顔のルナに軽口を言いながらポーションを差し出せばルナはポーションと俺、グランと交互に見比べていれば、グランが軽く頷いたのを見て手を伸ばし受け取ってくれた。
二人とも顔とかにも擦り傷があり痛々しかったけれどもポーションのお陰で綺麗に治った様だ、見えないけれども体の方も治っているだろうと思う、良かった良かった。
そんなやり取りをしていると不意に空気が変わった…いや、不穏な気配が漂って来たと言うのが正しかった。
そして、それは急に現れた…一切の油断も一切の見落としも無かった筈だ…にも関わらず、そいつは一瞬で目の前に降り立った。
身の丈は怪獣かと思える程の大きさ、一瞬見た目には100mは有りそうな黒い龍。
「あ、有り得ない…こ、こんな場所に…」
「「「ダークエンペラードラゴン!」」」
グラン達三人が同時に叫ぶように突如現れた奴の名前を言う、それと同時に俺も鑑定を掛ける。
まぁ、明らかに格上だから殆ど見れないだろうと思ってはいても試さずにはいられなかった…にも関わらず…
種族:邪神龍・ダークエンペラードラゴン
性別:男
名前:※※※※※※※※※※※※※※
Lv. 89872459456
HP 4500000000/4500000000
MP 78000000000/7800000000
ATK 98000000000
DEF 753000000000
AGI 68000000000
DEX 4570000000
MIND 7590000000000
LUK 800000000
〈スキル〉
物理・魔法耐久 Lv.MAX
アカシック・ライブラリー
詠唱破棄
魔力付与Lv.MAX
魔法付与Lv.MAX
魔法効果短縮Lv.MAX
魔力消費軽減Lv.MAX
並列思考Lv.MAX
スキャンLv.MAX
アイテム・ボックスLv.MAX
眷属召喚
創成
〈魔法〉
風魔法Lv.MAX
火魔法Lv.MAX
水魔法Lv.MAX
土魔法Lv.MAX
光魔法Lv.MAX
闇魔法Lv.MAX
創生・創成魔法Lv.MAX
召喚魔法Lv.MAX
〈称号〉
破壊龍
〈エクストラ・スキル〉
メギド・ファイヤー
アブソリュート・ゼロ
何故見れる?って言うか最早、見比べとか比較とか意味無いだろ?
俺の新しい人生早くも終わったな…。
無理ゲー見たいなキャラが初っ端から出てくる何て有り得ないだろ?俺が驚いていると同じ様にハーフ・ギャザリングのメンバーも皆、驚いている様だ…良く見れば結界外にいる先程倒した連中でも意識のある連中は気が狂わんばかりに取り乱し泣き叫んでいた。
「ハァーハッハッハッハッ!愉快愉快!わざわざステータスを見せてやると、下等種達は何時も同じ表情を見せる!」
ダークエンペラードラゴンの奴、自分のステータスをわざと見せていやがった…しかし、だからと言って何か出来る訳じゃない…明かにレベルが違い過ぎる…。
「クククッ 笑い過ぎて目的を忘れる所だったが…何だ?この邪魔な物は…」
ダークエンペラードラゴンに俺の張っている簡易結界君を一瞥すれば不満げに言いながら軽く羽を動かすと巻き起こった魔力風の一凪ぎで結界が粉々になる。
最早、どうにもならない…せめて彼女達だけでもとも思っていたのだが…。
「貴様…そう、貴様だ…我が気になる気配を纏った下等種…人間よ…貴様一体何者だ?」
俺達は次の瞬間には殺されると覚悟を決めた俺達に向かって…いや、正確には俺に向かってダークエンペラードラゴンが話し掛ける、しかも俺自身の核心に触れるかの様な事を…邪神龍とは言えども神の名を冠するなら俺の事を知っているのか?
「俺か…俺は…ただの人間だ…職業は…ポーション屋をやっている」
ハーフ・ギャザリングの連中もいるし、今はまだ本当の事は言えない気がする俺は、取り敢えず此の世界の自分の設定を話す、最早、なるようにしかならない…さっきから此ばかりだな。
「ほぅ?我を前に戯言をほざくか…命を粗末にする様な奴には見え無かったのだがな?」
やはり俺の答えは気に入らなかった様だ…まぁ、当たり前だな…だから俺は博打に出る事にした。
「ハッ さっきから下等種、下等種と言ってるがテメエ何かにやられる俺じゃ無いぜ?まぁ、威張り散らしているお前は腰抜けだから下等種とか言ってる俺が繰り出す攻撃が怖くて逃げたり躱したりするんだろうけどな?」
どうせ死が目の前にあるのならやってやる、俺はアイテム・ボックスの中から最後のリカバリーポーションとライフポーションを取り出し無言でルナに押し付ける。
そしてダークエンペラードラゴンを挑発する様に言う、俺には切り札がある…神すら相手に出来る力が…だから挑発する、確実に相手に当てる為に…だから…挑発に乗れ!
「ハハハハハッ 幼稚な挑発だな?何か此の場を逃れる手があるのか?面白い…下等種が何をするのか気になるな…良いだろう…やりたければやってみろ?」
こいつ、分かっていて挑発に乗りやがった!腹が立つ!強者の強みか?なら後悔させてやる!
俺は返事を返さないまま両手を龍の爪の様に構える。
構えた右手を上に振り上げる。
「天の龍!」
一呼吸ずらして左手を下に振り下げる。
「地の龍!」
振り上げ、振り下げだ両手を自分の前に腕を伸ばしたまま併せ持つ。
「水の龍!」
そのまま立ち上る闘気と生命力を精神力で押し固める様にしながら両手を捻り自分に引戻し…
「共に集え三大三頭龍!」
引戻した両手に今までとは違う意識した状態で魔力を籠め始める。
「集いて我に力を貸し与えん!」
押し固め集めた力を右手を拳にしながら握り締める様に持ち構える。
「
言葉に力を乗せ自分を鼓舞し自己暗示の様な作用を促す武道原語を使い更に力を高める今現在、使える破壊系最強の対神魔格闘拳法の奥義を繰り出す準備が整った俺は拳を構えたまま駆け出しダークエンペラードラゴンの足元で飛び上がる。
此処に来て筋力も上がって俺は、奴の胸元まで飛び上がると拳を振り奴に叩き込む!
「喰らいやがれ!!!」
天龍神妙掌の動作はただの動きじゃない、各々が自分の力だけでは足りない為に自然の力を集め凝縮する動作。
天の龍なら大気の気を、地の龍なら大地の気を、水の龍なら自然の穏やかに無数に生きる命ある者達から少しずつの力を分けて貰う、その力を制御し自分の力を上乗せして相手に叩き込む、それが天龍神妙掌。
当然、自然の力何てのは自分の力を遥かに越えているのだから生半可な意思と精神力じゃ制御出来ない。
仮に出来ても何の備えも鍛えもしていない体では持たない。
彼方の世界で肉体は鍛えれなかったが魂と精神力は鍛えれた。
ステータスが上がれば体はある程度鍛えられる為、今なら或いは…。
どのみちにしてもやらなければ死ぬ。
出会って直ぐの奴の為に命を掛けれるかって聞かれたら素直にノーだ!
だけど、それ以上に俺は…「願望者」だ!
今の気持ちは止められない。
格上の絶対強者を前に全力をぶつけたい!
飛び上がり赤と青の光を放ちながら拳を振り抜こうとする俺を見たダークエンペラードラゴンの奴の顔が一瞬、焦っているかの様に見えた?(まぁ、魔物だから表情が分かり辛いから何とも言えないが…)
奴に俺に拳が当たる瞬間、奴の皮膚と俺の拳の間に見えない壁の様な物があるかの様に拳が止まる、同時に俺の拳から放たれた力が溢れだし力の奔流と化す。
バリバリバリ!!!
奴と俺の拳の間に光と闇の雷が発生しながら稲光と炸裂音が響き渡る。
「ウォォォォォ!当たれーーーー!」
俺は押し留められた拳の骨が軋み皮膚が裂け血が噴き出すのを見ながら、それでも更に押し込む為に叫びながら突き出す。
バキンッ!
稲光の中で明かに違う、割れる様な尾登がする。
同時に今度は間違いなく分かる程に奴の顔が驚愕に満ちているのが分かる。
そして俺の拳がなにも無いかの様に前に突き出る。
力を携えたまま奴の体を撃ち抜く。
ドゴーン!
まるで薄い紙を押し破る様にダークエンペラードラゴンの胸元を撃ち抜く。
「や、やったぜ…ガハッ…」
俺は結果を見て安堵し笑った途端に、空中で身体中が軋み血を吐き、撃ち込んだ拳は腕と共に骨は砕け皮膚は裂け血が噴き出し、一瞬で満身創痍となった。
そんな俺が受け身など取れる筈も無く、そのまま落下するが目の端に誰かがやって来るのが見える。
ドサッ!
奴の胸元だ、大体80m位の落下、27階建てのビルからの落下なのだからかなりの衝撃になる筈なのだが何故か柔らかい、ブニュンっとした感触に包まれた?
「ほ、補助魔法…フォール・デセラレートです…」
俺の頭の上からハスキーだが少し息を切らしている女の子の声が聞こえる。
どうやら俺はルナの魔法で助けられた受け止められた様だ…っ言う事は…今の俺は…ルナの胸に顔を!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます