2 何故かあの世で初恋?
「こ…ここは?」
目が覚めて最初に見たものはゴツゴツした岩場の地面に、どうやってか俺は助かったみたいだが未だ倒れたままの様だ?
心無しか横になっている為に岩に寝ている頭が痛い…
「つっっ…俺は一体どうして…って謂うか、どうやって助かった?」
車に跳ねられた記憶はある…跳ねられた時の痛みも地面に叩きつけられた時の痛みも覚えている…なのに体は無傷…って言うか、ここは何処だ?
一体何時間寝ていたのかと思う位に体が重く気だるいままに立上がり頭を軽く振りながら周りを見渡せば周りは岩場ばかりで何もない…いや、正確には人がいる…しかしあれは…明らかに死んでいる…何故分かるかと言えば、見るからに頭が割れている人や体が割けている人…中には頭すら無い人が沢山…並び歩いている…
「あれは一体なんだ?」
俺は異様な光景に思わず一歩二歩と後ずさると不意に後ろから…
「ほう?珍しいの…ここに意識を保ったまま来る奴がいるか?誠、珍しく面白いっ」
急に後ろから声を掛けたられたかの様な口調に俺は驚き振り替えれば、そこには見た目小学生位の小柄な女の子がいた。
背は140cm位か?しかし格好が…あれは間違いなく十二単…黒髪ロングの女の子が見事なまでに着こなす十二単など見たことがない、それくらいに違和感の無い着こなしに、ロリコンでは無いと思っていた俺が思わず喉を鳴らす程の美少女がそこにいた。
「き、君は…君は誰だい?って言うか、ここは何処なんだ?俺は一体どうしたって言うんだ?」
あまりに現実感の無い場所で唯一存在感を示す少女に思わず矢継ぎ早に質問すれば少女は何処に持っていたのか扇子を広げ口元に当てれば…
「そう急くで無い…取り敢えずは主の名を聞こうか…願望者よ…」
少女は新しい玩具を手に入れた子供の様に嬉しそうな顔をしながら俺に名前を聞いてきた…
(願望者?なんだ、それは…)
少女に名前を聞かれた後に最後の言葉が気になる物の一種異様な雰囲気な場所と場違いな少女を前に俺はどうするかと考えつつも…
「お、俺の名前は神田川 出流かんだがわ いずるだ…君は一体…願望者って何の事だ?」
俺は何がなんだか分からないが、この少女はその全てを知っている確信出来た…そして、この少女は敵ではないが味方でもない…それも確信出来た…
「質問の多い奴じゃな?っと言っても仕方無しか…良かろう教えてやろう…ここは黄泉の国へと向かう一歩手前…主らの言葉で言うなら賽の河原と言った所か?まぁ、川は無いがの…」
少女は場にそぐわぬ屈託の無い笑顔でコロコロと笑いながら言うも俺には笑えない…
(賽の河原だって!じゃ、俺は死んでるって事じゃないか…)
俺が一人でショックを受けていれば少女からは思いもよらない言葉が…
「そして妾は黄泉姫…ここを任され統括しておるものじゃ…此でも主より遥に歳上じゃから敬えよ?」
相も変わらずコロコロと笑いながら自己紹介の様に言う黄泉姫と名乗る女の子を見ていれば次の言葉に俺は…
「そしてお主は死んでいるようで死んでおらぬ…っと言っても現世では間違いなく死んでおるがの…」
(俺は死んでいて死んでいない?どう言う事だ?)
黄泉姫の言葉に驚いて考えていても分からず立ち尽くしていれば黄泉姫が持っていた扇子をパチンッと音を鳴らし閉じれば笑みを浮かべると黄泉姫を中心に光が溢れ出し始めれば、あっという間に辺り一面に広がり俺は光の中に飲み込まれ、あまりの眩しさに目を閉じ、次に目を開けた時には何処かの知らない和式の古風な佇まいの和室に立っていた。
「どうした?立っていては話の続きも出来まい…座ったらどうじゃ?」
そう言う黄泉姫を見れば何時の間にか座り和室に置かれた大き目の木目テーブルに置かれている煎餅見たいな物を齧っていた。
見た目印象よりも大雑把?等と考えなくも無いが、こうしていても仕方が無いので促される間々に座れば黄泉姫の後ろの障子がスゥーっと音もなく空いていけば、其処には黄泉姫とは別の意味での美少女が手にお盆を持ちお茶を持って来ていた。
「姫様、お茶をお持ちしました。」
美少女は透き通る様な声で黄泉姫に声を掛けると返事を待たずに部屋の中へ入って来るも足音一つさせずに無言のまま黄泉姫と俺の前にお茶を置くと同じ様に足音を立てずに部屋から出ていけばスゥーっと音も無く障子を閉めていく。
俺が一連を呆けた顔で見ていれば黄泉姫が再び扇子を広げれば口元に当てるとコロコロと笑い声で。
「何じゃ?皐月が気になるか?惚れたかえ?」
笑い声と共にとんでもない事を言い出す黄泉姫の言葉にビクリと体が跳ね現実に引き戻されれば…
「な、何を言ってるんだ!?お、俺は彼女の…その…何だ…あまりの自然の動きにビックリしてだな…いや、確かに美少女であったけど…って、そうじゃなくて!」
(皐月ちゃんって言うんだ…)
俺は明らかにからかいが入っている黄泉姫の言葉に自分でも戸惑う程に動揺しつつ心の中で彼女の名前を反芻していた、思えば生きていた頃には友達と呼べる程度の付き合いの女の子は沢山いたけど、皆、何処と無く引かれる事も無かったから気にもしなかった。
中にはそれらしいアピールをしていた子もいた気がする…けれども俺には、全くと言っても良い程に気が起きなかった…
なのに!何故だろ?彼女…皐月ちゃんを見た瞬間、目を奪われ、心臓がドキッとした…(動いてないのに(笑))
「カカカッ 面白い奴よ…あ奴の無愛想な一面を見て興味を持つとは…主には才能があるのやも知れぬな?」
動揺している俺を他所に黄泉姫は何やら勝手に納得しながら嬉しそうに笑っていたが今の俺にはそれを気にする余裕もなかった。
事故に合い、恐らくはあの世だろう場所で、何故か美少女との会話に今まで会えなかった心ときめく美少女…色々な事が有りすぎて最早、何が何だか分からなくなっていた。
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