第10話「なぜその道を歩んだのか?」


 Side 銀条院 ユカリ


 =真夜中 協会本部・ラウンジ=


(私はどうすれば――)


 正直どうすれば良いのか分からず、途方にくれていた。


 佐久間 レイカは選抜したヒロイン達と一緒にその場を後にした。

 

 助けに向かえばよいのか。

 それとも助けを伝えればいいのか。


 中々答えは出せなかった。


 そんな時だった。


「それでいいのか?」


「あなたは――」


 私に情報を渡したフードがついたコートの人物が現れた。


「あの佐久間 レイカと言う女、死ぬぞ」


「え――」


「手を抜いた天野 猛と互角に持ち込むのが精一杯の女と多少腕に覚えがある連中では死ぬと言っているんだ」


 失礼な物言いだ。

 だからこそ分からない。 


「私が行ったところでなんになると言うんですか? 足手纏いにしかなりませんわ」


「じゃあ逆に言おう。お前はなんて変身ヒロインの道を辞めなかった?」


 声色を強くしながらフードの人物は言った。


「それは――今とここでは話が――」


「こう言う時のための変身ヒロインだろう? それともなにか? 周りから感謝されたいからか? 周囲に認めてほしいからか?」


「そんなことは――」


 言い返せなかった。

 これまでの経験で無力さを突きつけられた今となっては。


 だがフードの男は今度は諭すようにこう言った。


「少なくともここであれこれ悩むためじゃないだろう? 大丈夫だ。君には強力な仲間がいる。そして君達変身ヒロインには可能性がある。あとは前に踏み出す勇気が必要なだけだ」


「前に踏み出す・・・・・・勇気?」


 この人は何なのだろうか?

 ユカリは困惑する。


 そんな時だった。

 アラートが鳴り響く。


「まさかこの本部に!?」


 だがあり得る話だ。


「ここは俺に任せろ。君は君の成したいことをやれ」


「え―」


 

 Side 変身ヒロインたち


 まさか協会本部にまで敵が乗り込んでくるとは。


 滞在していた変身ヒロイン達は皆、すっかり腰が引けている。


 相手は生半可な怪人や、犯罪組織ではない。

 

『弱いなこの世界の変身ヒロインとやらは』


『雑魚もいいところだな』


『これだけの人数で出張ることも無かったんじゃないのか』


 変身ヒロイン以上の力を持った怪人たち。

 数は十体以上。


「私達は無力なのかしら?」

 

 そう思ってしまうほどの悪夢のような光景。

 死んではいないだろうか次々と倒されていく。


 話には聞いていたがここまでの力の差があるとは――


「酷い――」


 そんな時――


 銀条院 ユカリ。

 シルヴァーセイザ―が現れた。


 その傍には謎の黒いフードの人物。

 

「大丈夫だ。迎えは呼んでいる」


「アナタは――」


 何者なのだろうか?

 

 そう思った矢先に― ー


『ヒャッハー!! くたばりやがれ!!』


 ゴリラ型の怪人が飛びかかってくる。

 咄嗟のことで動けない。


 しかし――


『え?』


 早かった。

 相手の眼前に跳躍し相手の豪腕を掴んでそのまま真下の地面に投げつけた。

 弧を描くような柔道の見事な一本背負いである。


 そのまま地面に降りたち、再び手を取って近くの怪人に投げ飛ばす。

 怪人は砲弾のように飛んでいき、変身ヒロインに襲おうとしていた怪人の一体に激突する。


『う・・・・・・ぁあああ・・・・・・』


『い、いったいなにが・・・・・・クソ・・・・・・』


 そして何時の間にか投げ飛ばされた、投げつけられた怪人の一体の眼前に迫り――

 

「"気"を極めればこう言うワザも出来る!!」


『『!?』』


 彼が身に纏うコートが紫色の怪しい光を身に纏い――まるで死神の鎌のようにコートが二体の怪人を切り裂き、爆発する。


 一体なんなのだろうか、彼は――



 Side 銀条院 ユカリ


「す、すごい――」


 そうとしか言えなかった。

 次々と敵を倒している。


『そんな!? 俺の砲弾が!?』


「ヤワな砲弾だな」


 今も戦車型の怪人の砲弾を真正面から受け止め、背後にいる変身ヒロインの一人を守りつつも前進し――


『ギャアアアアアアアアアアア!?』


 コークスクリュー・ブローの一種だろうか?

 腕に紫色のエネルギーを腕に纏わせ、ドリルのようにそのエネルギーを回転させて相手の胴体を貫き、また一体爆散させる。


 そんな時だった。


「遅くなってごめん!!」


『大丈夫ですかユカリさん!!』


「猛さん!? それに達也さんも!?」


 天野 猛。

 楠木 達也。


 その二人が変身状態で現れた。

 二人とも専用のマシンに乗っている。


「ごめん、他の場所で相手をしていて」


『綾香さんやデューネさんは先に佐久間さんのところに向かっている。一緒に行こう』


「でも――」


 足手纏いの私が一緒に行っていいのかと思う。

 そんな時に――


「なにをしている!? さっきも言っただろう!? お前はなんのために変身ヒロインになった!?」


 と、怪人と戦いながら黒いフードの人物が大声で呼びかけてきた。


「こんなところで泣き言を言うためか!? 違うだろう!? 目の前にいる二人のようになりたくて変身ヒロインになったんだろう!! なら尚更二人と一緒に進め!! 答えは自分自身で見つけるんだ!!」


 厳しく叱咤する。

 泣きたくなる。

 だけど不思議と悪い気分ではない。


「分かりました!! お気をつけて!! ――二人とも、連れて行ってくれますか!!」


「うん。だからこそここに来たんだから!」


 と、猛が答えた。


 ユカリは正直自分に何が出来るかなど分からない。


 半信半疑だった。


 だけどあの人の言うように進んでみようと思った。 

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