第7話「学園大激突」
Side 佐久間 レイカ
佐久間 レイカ
変身ヒロイン協会の人間であり、過去に挙げた功績により多大な社会的、政治的影響力をも持つ変身ヒロインだ。
黒のボブカットでキリッとした整った顔立ち。
抜群なボディスタイル。
何時も堅めのスーツを身に纏う。
歴戦の変身ヒロインで日本最強の変身ヒロインの座についていたが今は前線を退き、後釜のヒロインに事件を任せている。
だが昨日からそうも言ってられなくなった。
腕利きのトップヒロインが前代未聞の――チンピラが変身した程度の怪人如きに破れた。
しかも変身した方法はデザイアメダルと言う人を怪人に変える魔のメダルによる物だと言う。
更には変身ヒロイン達を一蹴した怪人を倒した、二人のヒーローと二人の変身ヒロインの存在。
俄には信じ難いがこの世界とは異なる平行世界から来たらしい。
正直信じられない話だ。
だが細かな情報を統合するに連れてその突拍子も無い事実が現実性を帯びてきていた。
少なくともこの世界に今の変身ヒロイン達では太刀打ち出来ない脅威が迫りつつある。
現役復帰を覚悟したその時に事件は起きた。
この協会本部の司令室に聖ヒメノ学園で起きている惨状が映し出される。
そこで見た事も無い怪人の群れと戦う二人の変身ヒロインと二人のヒーローの姿が映し出されていた。
怪人と言うのは獣のような存在だ。
理性なんてない。
群れを率いて学校を襲うなどと言う自殺行為などはしない。
だが報告に寄れば学校の生徒や教師に被害が出ているらしい。
また他の世界から来たらしい四人は率先して戦ってくれているようだ。
☆
Side 楠木 達也
サイバーブレードⅡで斬りかかる達也。
キラーエッジは刃物の両腕でそれを防ぎ、払って切り返すが達也は軽く後ろに飛んで右腰のホルスターから素早くエレクトロガンを引き抜き乱射したがキラーエッジは構わず突っ込んで来る。
そこを綾香が急襲した。
「俺の目的は達也だ!! 邪魔をするな小娘!!」
綾香のローやミドルを織り交ぜたキックやチョップにフック、裏拳などが飛ぶ。
軽くであるが彼女、水樹 綾香は改造人間である。戦車の装甲を凹ませ――その気になればぶち破る破壊力を持つ。
たまらずキラーエッジも後退りする。
(この子強いな・・・・・・)
間違いなく自分の世界でも通用するレベルだと達也は思った。
『これでラスト!!』
レヴァイザーフレイムフォームやデューネが戦闘員を倒しきり、キラーエッジを抱囲する。
『終わりだキラーエッジ。何度復活しても――何度でも倒してやる――』
「コケにしやがって!?」
どうやら四対一になっても戦意は喪失しないようだ。
「油断するな!! まだ来るぞ!!」
デューネが一早く何かを察知したのか皆に警告を飛ばす。。
するとキラーエッジが破壊した学校の塀から増援が現れる。
「ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! てこずっているゲコね!?」
「お前はゲドゥの!?」
二足歩行する肥満体のカエルの化け物だ。
デューネの反応を見る限り宇宙犯罪組織ゲドゥ所属の怪人らしい。
その後ろから新たな戦闘員が補充される。
「知ってるんですか?」
と綾香が質問する。
「ああ。ゲドゥの幹部だった奴だ。私がこの手で切り裂いてやったがこの世界に来てまで再び見る事になるとは思わなかった。兵士もゲドゥの戦闘員だ」
と、イヤそうにデューネは語る。
「久しぶりゲロねデューネ!」
「また殺されたいようだなカエル野郎!」
まさかの宿敵との対面に荒々しい言葉遣いになるデューネ。
綾香は何故かデューネから視線を逸らしていた。
「その態度も変わってないゲロね。まあ良いゲロ。今度はコイツが相手ゲロ」
「まだ何か来るの?」
猛はイヤそうに言った。
すると今度は空に何やら大きな魔方陣が出現し、そこから漆黒の大きな化け物が現れる。
これに反応してのは銀条院 ユカリだ。
「嘘!? あんなサイズの怪人なんて!?」
「過去最大級のデカさじゃない!!」
戦いに魅入っていたアスカですら言葉を失った。
現れたのはこの世界の怪人だった。
だがサイズが桁違いに大きい。
全長30m程の黒いドラゴンの怪人など前代未聞だった。
「マズイ!?」
ドラゴンブレスと言って良いのか――口から紫色の光線が放たれた。
四人が取った決断は――
☆
Side 銀条院 ユカリ
目映い閃光と衝撃。
ユカリとアスカはどうにか立ち上がる。
天野 猛。
楠木 達也。
水樹 綾香。
デューネ・マリセイド。
四人は――地面に倒れ伏しながらも立ち上がろうとしていた。
四人とも無傷ではない。そこら辺はスーツの性能もあるかも知れないが中はどうなっているのか分からない。
「助けに行かないと――」
ユカリは動こうとした。
しかし「待ちなさいよ」とアスカに止められる。
「止めるのですか?」
「当たり前でしょ!! アンタが言って何の役に立つのよ!? あの刃物の怪人にだって私は――教師だって歯が立たなかった!! あの四人は正直まだ分からない事だらけだけど物凄く強いのは分かるわよ!! 私達が手も足も出なかった奴に楽勝だったんだから!!」
そしてアスカは「だけど!!」と四人に一差し指を向ける。
「あの怪人は私達が知る怪人だけど――それでも別格よ!! それを助けるですって!? 現実を見てから言いなさい!!」
と、少女は涙目で語る。
だがユカリは笑みを浮かべた。
「何がおかしいのよ?」
「いえ。貴方にそんな事を言われるとは思いもしませんでしたから」
「今それを言うタイミング!?」
「現実は――よく知っています。誰よりも私自信が」
「なら」
「それでも――戦います」
そして彼女は変身――シルヴァーセイザ―になって駆け出した。
「ゲヒャヒャヒャヒャ!! 雑魚が一匹増えたところで何になるゲロか!?」
「どけ!! あのガキのトドメを刺してやる!! 邪魔するなら殺す!!」
二体の怪人が迫り来る。
上空からは30m級の怪人が降り立とうとしていた。
後ろからは戦闘員が迫り来る。
その間にも四人は立ち上がっていた。
逃げる素振りなんて物は感じない。まだ戦おうとしていた。
ユカリは自分が立ち上がる必要なんてなかったかも知れない。
それでも一緒に並び立ちたかった。
一緒に戦いたかった。
一人のヒーローとして。
(恐い・・・・・・体が震える・・・・・・失禁して気を失いそうですわ・・・・・・)
これが本物のヒーローが、そして自分が目指した世界の場所。
剣を握りしめ、構える。
そしてキラーエッジが一瞬にして距離を詰め、刃物の腕を振り下ろそうと――
『させない!!』
「相変わらずしぶとい!!」
間に入る様に楠木 達也がサイバーセイバーⅡで受け止める。
「また地獄に葬ってやる――ゲドゥ!」
「ちょ!! しぶとい奴ゲロ!!」
カエルの化け物に斬りかかるデューネ。
そして――
「貴方達は!?」
「浦方さんの指示でヒーロー達を援護するように言われて来ました」
「浦方さんが!?」
協会から来た浦方の取り巻きの変身ヒロイン達が駆け付けて来て戦闘員達を倒して行く。
「アスカ。貴方まで・・・・・・」
「アンタが戦うのに私だけ逃げるわけにはいかないでしょ!! ボサッとしてないで手伝いなさい!!」
そう言って藤堂 アスカも戦う事を決意したようだ。
そして――
『じゃあ私達は!!』
綾香は、
「あのデカブツをどうにかする!!」
猛は、
目標をドラゴンに狙いを定める。
水樹 綾香は跳躍し、相手の肩を一旦踏み場にしてドラゴンの顔面に跳び蹴りを入れる。
レヴァイザーも緑色のサイクロンフォームになり、跳躍力を活かしながら顔面に銃を向ける。
ダメージは通っているようだ。
Side 楠木 達也
「何故だ!? 腑抜けだったお前が何故そこまでして戦える!?」
周りが乱戦中の中、達也はキラーエッジにそう言われた。
確かに最初のサイバーレッドになった頃はラッキーマンだった。
今だって変わりないが最初の頃は本当に幸運続きだったと今更ながら思う。
『自分でも分からない! けど、こんな自分でも必要としてくれる誰かがいたんだ! その人の気持ちに答えるためにも! 僕は逃げない!』
そう言ってサイバーセイバーⅡを振るい、キラーエッジの刃物の両腕を弾き飛ばす。
そして――
「ごほぉ!?」
体中から火花が出てゴロゴロと転がりこんだ。
キラーエッジの胸部が軽く陥没している。
サイバーレッドの左腕には大きなプロテクターが装着されていた。
相手のガードを崩した後の僅かな相手の隙に達也は剣を捨て、左腕にプロテクターを装着し、殴り倒したのだ。
内心達也は「浅かったか!!」と思った。
「クソが・・・・・・今度は、今度は殺してやる!!」
そう言ってキラーエッジは逃げ去っていく。
「そっちも逃したか」
『あ、デューネさんの方も?』
「ああ。舌を斬り飛ばしてトドメを刺そうとしたら戦闘員を盾にして逃げていったよ」
達也は「そうか」とだけ答えて30m級の怪人に目をやる。
☆
Side 銀条院 ユカリ
異世界のヒーローの強さはやはり圧倒的だった。
救援に駆け付けて来た浦方の取り巻きの変身ヒロインも戦いに魅入っている。
異世界のヒーローが戦っている相手は確かにこの世界の怪人だ。
だが怪人のサイズは規格外だ。
最強のヒロインである、佐久間 レイカでも太刀打ち出来るかどうか分からない。
だがあの四人は――それでも立ち向かっている。
猛と綾香は怪人の体を上手い事飛び回り、達也は機械の翼が装着されたアーマーを身に纏い、デューネはこの世界と一緒に来た自分の水上バイク型専用マシンと一緒にドラゴンの怪人の周囲を飛び回る。
『チェイサーソーサー!!』
綾香は体を赤く発光させつつ飛び上がって側転を何度も猛スピードで行い、まるで赤い丸ノコギリの様になってドラゴンの体を切り裂く。
「デューネフラッシュ!! フルパワー!!」
続いて水上バイク型マシンから飛び降りたデューネが剣を発光――それも刀身を何十メートルまで伸ばして振り下ろして頭から股まで切り裂く。
これが30m級のドラゴンの怪人が倒された瞬間だった。
怪人がガラスが割れたように怪人の体が砕け散っていき、周囲に白い破片を撒き散らしながら消滅していく。この世界における怪人の消滅プロセスだ。
信じられない光景だった。
知らず知らずユカリの胸中に歓喜が湧き上がる。
皆誰もが手放しで喜んでいた。
校舎の方からも歓声が聞こえる。
「アスカさん・・・・・・」
ふと藤堂 アスカの方を見てみると――彼女は泣いていた。
今彼女がどう言う風に思っているかは彼女にしか分からないだろう。
そっとしておく事しか出来なかった。
☆
Side 佐久間 レイカ
モニターから聖ヒメノ学園で起きた出来事を眺めていた。
信じられない光景だった。
自分でも困難とも思われる30m級怪人の討伐をたった四人の十代半ばの少年少女達がやってのけたのだ。
今迄の一連の出来事といい、今回の出来事といい、もう彼達の事について疑う事はないだろう。
だが同時にこの問題の根の深さを目の当たりにするある情報が入る。
(まさか行方不明者が怪人化されていたとは・・・・・・)
変身ヒロインの行方不明者。
今回の――過去出現した中でも最大規模のドラゴン怪人はその行方不明になった変身ヒロインが怪人化した物だった。
これだけでも前代未聞の出来事だった。
一体この世界で何が起きているか確かめるためにも今回の事件の功労者である四人と接触する事を決めた。
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