第1話「変身ヒロインを守るヒーローがいてもいい」

『ば、ばかな!? アレも変身アイテムだったのかよ!?』


『狼狽えるな!! この人数で掛かれば一斉に――』


『攻撃だ!! 攻撃しろ!!』


 十体の怪人が一人の少年に一斉に襲い掛かる。

 だが少年は相手の攻撃を交わし、逸らし、カウンターを入れて捌いていく。

 何かしらの戦闘訓練は受けているのだろうがそれよりも場慣れしているようにもユカリは思った。


(す、凄い――)


 たった一体でも苦戦した相手なのに余裕を持って戦っている。

 今も相手の背後からの不意打ちを回し蹴りで対処し、相手を引き寄せて盾にして戦車怪人の砲撃から身を守る盾にした。

 無手にも関わらず芸術的な立ち回りだ。


『ひ、一人やられた!!』

 

『なんなんだ!? なんなんだこいつは!?』


 カメの怪人が味方の砲撃の盾にされて撃破。人間体に戻り、残り九人となる。

 その戦果に何とも思っていないのかヒーローは歩み寄る。


『何だか凄い事になっていますね――』


『新手の変身ヒロインか!?』


『こいつを人質に取れば――』


 怪人の集団の奥の方から新たな変身ヒロインが現れた。 

 黒髪のポニーテール。

 赤いバイザーのヘルム。

 均整が取れている上に巨乳が浮き彫りな漆黒のパワードスーツに変身ベルトを巻き付けた変身ヒロイン。

 

 彼女の所有物らしきバイクも漆黒だった。


『貴方達はプラントの怪人ですか? それとも――』


 問答無用で問い掛けを無視して象の怪人が襲い掛かる。


『ガハッ!?』


 しかし蹴り倒される。見事なハイキックだった。

 それを皮切りに次々と新たに現れた変身ヒロインにも襲い掛かる。

 だが先程現れた青い戦士と同じく、彼女も圧倒的な強さで次々と徒手空拳で殴り倒していく。


(こんなに強いヒロインがいたの!? 彼女何者なの!?)


 先程の男性の変身といい、この謎の変身ヒロインといい頭は混乱していた。

 今迄の常識が崩壊していく。


「あの!! そこの黒いポニーテールの人!? この人達デザイアメダルの怪人だから一定のダメージを与えたら変身解除出来ます!!」


『分かりました。光志郎さんは優しい性格ですからそうします』


 と青い戦士の一言に黒い女戦士が返事し、近くにいた装甲車の怪人をアッパカットで上空に打ち上げ、自身も空中に飛び上がり拳を振り下ろすようにして追撃。

 流れ星のように地面に激突して爆発。

 変身が解除され、ガラの悪そうな男が横倒しになっていた。

 

 残り八体。


「たく!! 求めに応じて来てみれば何なんだこれは!?」


 次にまた青いスーツのメタルヒロイン。

 黒い戦士と同じく、またしても体のラインが浮き彫りになるアンダースーツの上にプロテクター、そしてまたしても巨乳だった。

 手に持った光の剣と光を発する銃で次々と撃ち倒す。

 その戦い方は古き良き宇宙刑事を連想させる。


『え、どうしてレヴァイザーが!? て言うかここ何処!?』


 そして伝統的な戦隊レッド的なスーツの男性までも現れる。

 どうやら最初に現れた青い戦士、レヴァイザーを知っているらしい。


「え? 僕の知り合い? 君誰?」


 だがとうの本人は首を捻っていた。 


『ああ、そうか直接の面識無かったんだっけ――宇宙人の侵略の後始末とかでゴタゴタしてたら急に助けを求められて飛ばされたけど・・・・・・とても胸クソ悪い状況みたいだね』  


 と、戦隊レッドが周囲を見渡す。

 変身ヒロイン達が倒れ伏し、怪人が好き放題に荒らし回った事件現場。

 これ程胸くそ悪い現実はない。

 その気持ちにレヴァイザーは「それは言えてる」と返した。


『んじゃあ行くか』


「うん!! 敵はデザイアメダルの怪人だからある程度手加減抜きでも大丈夫だよ」


『教えてくれてありがとう!!』


 二人は駆け出す。

 そして競い合う様に怪人と戦う。


「多少手加減抜きでもいいのか。ならば――」


『ま、待――』


「レーザーブレード――』


 ボコボコにして殴り倒した戦者怪人に青いプロテクターの変身ヒロインが手に持った光の剣のエネルギーを集束させる。


「デューネフラッシュ!!」


 戦者怪人は青い閃光が光ったと同時に爆発した。

 剣の――エネルギーを出力最大にして振り下ろしたのだがその瞬間が見えなかった。

 戦者怪人が居た場所には多少焼け焦げた状態で白目向いて気絶した男が地面に倒れ伏していた。

 これで残り七体。


『電子着装!! サイバープロテクター!!』


 戦隊レッドの両腕両足に大きなプロテクターが装着される。

 そして地面を滑るようにして滑走し、大きい両腕で戦車怪人と象怪人を二体纏めて撃破すると言う凄技を披露する。

 戦隊レッド――楠木 達也ことサイバーレッドのサイバープロテクターの一撃はゴーサイバーの元の世界にいた並の怪人を一撃で葬り去る程の破壊力であり、この結果は当然である。

 

 これで残り五体。


「やるね、戦隊レッドの人」


『まあこれでも鍛えられたからね――』


「僕も負けてられないね――」


 そしてレヴァイザーは銀色のレヴァイザーとなる。

 フォーム名は「バニシングフォーム」。

 バニシングフォームは――地球の何倍物重力を振り切るスピードや外宇宙の怪人を容易く撃破出来る程の戦闘能力を一定時間装着者に与えるフォームだ。

 その代わりリスクは大きく、使用に危険は伴うがそれに関わらず何度も何度も使用したせいで一定時間だけならリスクが減って安定使用が出来る様になった。

 そんなレヴァイザーの動きを傍から見れば――目にも止まらぬ超高速移動。

 敵からすれば自分の身に何が起きているか分からないまま倒されると言う状態だった。

 全ての敵がレヴァイザーの必殺技、バニシングパンチ、バニシングキックで吹き飛んだところでモードは解除。

 同時に爆発が起きた。


「超高速移動だと!? 地球にこんなテクノロジーがあったのか!?」


 と、青いコンバットスーツの女戦士が驚いていた。

 彼女は宇宙刑事デューネ。

 元の世界では宇宙刑事として地球に派遣され、犯罪組織ゲドゥを追っていた。

 正直地球と言う星はあまり気に入らず、内心見下している彼女だが自分が身に纏うコンバットスーツを越える超テクノロジーを見せ付けられて流石のデューネも驚いた。


『凄いね――天野君は・・・・・・』


 と楠木 達也ことサイバーレッドは猛に歩み寄る。

 猛は「君も凄かったよ」と笑みを含めて返した。


『えーと、僕は楠木 達也。サイバーレッドです」


「サイバーレッド? 聞いた事ないね?」


『え? 聞いた事無いですか?』


 不思議そうに尋ねるが猛は「うん。一度も」と返した。


『うーん、ジェノサイザーを倒したりして有名になったと思ったんだけど・・・・・・』


「ジェノサイザーってなんなの?」


『え? ジェノサイザーも知らないんですか!? アレだけ大事件になったのに!?』


「ジェノサイザーってなに? そんなにヤバイ奴なの?」


『ちょっと待って下さい!? テレビでもアレだけ報道されたのに――どう言う事ですか!?』


 慌てて達也は猛に詰め寄るが猛も「え? え? え?」と困惑していた。


『私もサイバーレッドとかジェノサイザーとか聞いた事がありません』


 黒いフルフェイスマスクのポニーテールの変身ヒロインが話に割って入る。


「私もだ。地球にお前達のようなヒーローがいたのは驚きだったが・・・・・・」


 デューネも正直な感想を述べる。

 傍から話を聞いていたユカリはどうした物かと頭を働かせる。

 自分どころかプロの変身ヒロインよりも強い変身ヒロインと架空の存在であった男のヒーローの存在二名。


 そして青いヒーローはあの怪人の正体を知っているらしい。


 正直疑問は多いが――ユカリは決断した。


「皆さんの置かれた事情は分かりませんがこのままずっとこの場に留まっていては大騒ぎになります。一先ず私の家で情報交換しませんか?」


 ユカリは平静を装いながらも、内心興奮しながら自分の家に謎の人物達を案内する事にした。

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