溜まり桜

それは、四月も中頃に差し掛かったときのこと。

少し前まで満開の桜並木だった道を、新しい生活が始まった人たちが慌ただしく歩いていく。

緑と薄桃の混じった枝の間からは、陽気が射しこむ。

まるで、彼らを応援するかのように。

そんな日常の風景。その一角に、それはあった。

道端の吹き溜まり。桜の花びらが、小さな丘を作っていた。

誰も地面の薄桃色を見ようとはしない。

風に吹かれ、土にまみれ、足に踏まれた彼らを愛でる者は、誰もいない。

少し、汚れすぎていた。

再び風が吹く。

一枚、花びらが吹き溜まりに流れこんだ。

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