考えるな、感じろ。おっぱいを。②

 ――おかしい……。


 ポインは、ルークの腕におっぱいを押し潰すように抱き着きながら、そう思いました。


 そのルークが、さっきからちらちらとポインのおっぱいを見ているのです。


 本来なら喜ぶべきでしょう。

 だって、あのいつも爽やかなルークが、頬に朱を差しながらおっぱいを見ているのです。

 

 最初こそ、ポインも喜んでいました。

 ですが、よくよく考えればおかしいのです。


 宿でルークと別れてから、そこまで時間は経っていません。

 それなのに、休暇中というだけでこれほどまでに急に態度が変わるでしょうか。

 これまでの自分や他の女の子たちの、色仕掛けという名の努力が実を結んだ……にしてはタイミングがあまりに変です。

 明日大事な作戦があるというのに、そんなタイミングでおっぱいに気を取られるでしょうか。

 自分が知っているルークという勇者は、人々の笑顔よりもおっぱいを取るような人間ではなかったはずです。


 それに何より、極め付けは――


「ねぇ、ルーク。お腹空かない? 何か食べたい物ある?」


 ポインの問い掛けに、ルーク? は爽やかな笑顔を浮かべて無言で頷きました。


 そうで。


 ポインがルーク? と街中でバッタリと出会ってから、ルーク? は一度も喋っていませんでした。


 ――やっぱりおかしい……。


 ポインの中で、ルーク? への疑念がおっぱいのようにどんどんと膨らんでいきます。

 それを確かめるため、ポインは仕掛けてみることにしました。


「ねぇ、ルーク……私、我慢できなくなっちゃった……、おっぱい揉んでくれない……?」


 人通りが少ない路地裏に入ったポインは、ルーク? の腕からおっぱいを離すと、ルーク? の正面におっぱいが揉みやすいように少しだけ距離を空けました。

 顔を赤らめて上目遣いでおっぱいを寄せてからの誘う台詞。ポイン必殺の一撃。それはルーク? に効果抜群でした。

 ルーク? はやはり無言で頷くと、いつもの爽やかな笑顔とは違う、鼻の下を伸ばしきっただらしない顔をして腕を伸ばしてきました。


 ――やっぱり!


 その腕が自分のおっぱいへと到達する前に、ポインは叩き落としました。


「私のおっぱい揉もうとするなんて、あんた、ルークじゃないわね!? 何者よ!?」


 ポインがそう問いかけると、今までの爽やかな笑顔から一転、下卑た笑顔をその顔に張り付けたルーク(偽)がついにその口を開きました。


「……ククク。よくぞ気付いた、勇者の女よ」


 その声は、ルーク(真)とは似ても似つかぬダミ声でした。顔や身体はルークなのに、纏う雰囲気や声が全然違います。それは、これまで何度も戦ってきた魔族のそれでした。


「――魔族!? 撤退したはずじゃ……」

「撤退したと見せかけて、お前らを待っていたんだよ!」


 ルーク(真)が絶対に見せないような醜い表情をして笑うルーク(偽)に、身の危険を感じたポインは逃げようと身をひるがえしました。魔法の発動に必要な杖すら持っていないのです。非力な魔法使いであるポインには、魔族と戦う術がありませんでした。


 しかし。


「――きゃっ!!」


 背後から手首を掴まれ、ポインの動きが止められてしまいます。振り払おうにも力が強く、どうすることもできません。


「そのまま気付かなければ良いものを、バカな女め。最後に勇者と結ばれる甘い夢を見せてやったものを!」


 そう言うルーク(偽)は掴んでいる手首を強く引いて、その腕の中にポインを収めてしまいます。


「いや! 何、する……の……――」


 息がかかるほど近い距離でルーク(偽)に見つめられると唐突に眠気が襲ってきました。

 ポインはそれに抗えず、その意識を手放してしまうのでした。



――――――――――――



 ――おかしくね……?


 フワワは、ルークにしな垂れておっぱいの谷間を強調しながら、そう思いました。


 そのルークが、さっきからちらちらとフワワのおっぱいを見ているのです。


 本来なら喜ぶべきでしょう。

 だって、あのいつも爽やかなルークが、少しだけ頬を赤らめながらおっぱいを見ているのです。

 

 最初こそ、フワワも喜んでいました。

 ですが、よくよく考えればおかしいのです。


 宿でルークと別れてから、そこまで時間は経っていません。

 それなのに、休暇中というだけでこれほどまでに急に態度が変わるでしょうか。

 これまでの自分や他の女の子たちの、色仕掛けという名の努力が実を結んだ……にしてはタイミングがあまりに変です。

 明日大事な作戦があるというのに、そんなタイミングでおっぱいに気を取られるでしょうか。

 自分が知っているルークという勇者は、人々の笑顔よりもおっぱいを取るような人間ではなかったはずです。


 それに何より、極め付けは――


「勇者様ぁ♡ 次は何飲みますぅ?♡」


 フワワの問い掛けに、ルーク? は爽やかな笑顔を浮かべると、無言で店主の背後の棚にある酒瓶を指しました。


 そうで。


 フワワの隣にルーク? が座ってから、ルーク? は一度も喋っていませんでした。


 ――やっぱおかしくね……?


 フワワの中で、ルーク? への疑念がおっぱいのようにどんどんと膨らんでいきます。

 それを確かめるため、フワワは仕掛けてみることにしました。


「勇者様ぁ♡ あたしぃ♡ なんだかぁ♡ 身体が熱くてぇ♡ ♡ おっぱい揉んでほしいですぅ♡」


 ルーク? の腕を取って他の客から見えない席へと移動したフワワは、改めてルーク? にしな垂れかかると、胸元を少し開けました。

 お酒で上気した頬や胸元が艶めかしい、フワワの淫酒いんしゅ攻撃。それはルーク? に効果抜群でした。

 ルーク? はやはり無言で頷くと、いつもの爽やかな笑顔とは違う、口の端から涎を垂らしただらしない顔をして腕を伸ばしてきました。


 ――やっぱそーじゃん!?


 その腕が自分のおっぱいへと到達する前に、フワワは叩き落としました。


「あの童貞があたしのおっぱい揉むわけねーだろ、誰だお前」


 フワワがそう問いかけると、今までの爽やかな笑顔から一転、下品な笑顔をその顔に張り付けたルーク(偽)がついにその口を開きました。


「……ふふ。よく気付きました、勇者の女」


 その声は、ルーク(真)とは似ても似つかぬ掠れ声でした。顔や身体はルークなのに、纏う雰囲気や声が全然違います。それは、これまで何度も戦ってきた魔族のそれでした。


「――は!? 魔族!? 撤退したんじゃねーの!?」

「撤退したと見せかけて、貴方たちを待っていたのです」


 ルーク(真)が絶対に見せないような醜い表情をして笑うルーク(偽)に、身の危険を感じたフワワは逃げようと席から立ち上がりました。魔法の発動に必要な杖すら持っていないのです。非力な魔法使いであるフワワには、魔族と戦う術がありませんでした。


 しかし。


「――ちっ!!」


 背後から手首を掴まれ、フワワの動きが止められてしまいます。振り払おうにも力が強く、どうすることもできません。


「そのまま気付かなければ良かったのに、バカな女ですね。最後に勇者と結ばれる甘い夢でも見せてあげようと思ったのですが」


 そう言うルーク(偽)は掴んでいる手首を強く引いて、その膝の上にフワワを収めてしまいます。


「ちょっ! 何、して……ん――」


 息がかかるほど近い距離でルーク(偽)に見つめられると唐突に眠気が襲ってきました。

 フワワはそれに抗えず、その意識を手放してしまうのでした。



――――――――――――



 ――おかしいですわ……。


 プルルは、ルークの顔をおっぱいに挟んで添い寝しながら、そう思いました。


 そのルークが、さっきからおっぱいの間で息を荒くしているのです。


 本来なら喜ぶべきでしょう。

 だって、あのいつも爽やかなルークが、おっぱいに挟まれて息を荒くしているのです。


 最初こそ、プルルも喜んでいました。

 ですが、よくよく考えればおかしいのです。


 ルークが宿から出て行ってから、そこまで時間は経っていません。

 それなのに、休暇中というだけでこれほどまでに急に態度が変わるでしょうか。

 これまでの自分や他の女の子たちの、色仕掛けという名の努力が実を結んだ……にしてはタイミングがあまりに変です。

 明日大事な作戦があるというのに、そんなタイミングでおっぱいに気を取られるでしょうか。

 自分が知っているルークという勇者は、人々の笑顔よりもおっぱいを取るような人間ではなかったはずです。


 それに何より、極め付けは――


「……ルーク様、起きてますか?」


 プルルの問い掛けに、ルーク? は返事をする代わりに無言でもぞもぞと動きました。


 そうで。


 プルルのところへルーク? が訪ねてきてから、ルーク? は一度も喋っていませんでした。


 ――やっぱりおかしいですわ……。


 プルルの中で、ルーク? への疑念がおっぱいのようにどんどんと膨らんでいきます。

 それを確かめるため、プルルは仕掛けてみることにしました。


「ルーク様。わたくしなんだか寝付けなくて……、おっぱいを揉んで寝かし付けて頂けませんか?」


 ルーク? におっぱいを揉んでもらえるように、枕元に手を突いてルーク? の上に覆い被さりました。

 上から潤んだ瞳で見つめるプルル。その胸元が露わになった衣服からは、重力に引かれたおっぱいが形を少しだけ形を変えて衣服を広げ、際どい谷間を晒していました。プルルの誘惑攻撃。それはルーク? に効果抜群でした。

 ルーク? はやはり無言で頷くと、いつもの爽やかな笑顔とは違う、鼻の穴を膨らませただらしない顔をして腕を伸ばしてきました。


 ――やっぱりそうですわ!


 その腕が自分のおっぱいへと到達する前に、プルルは叩き落としました。


「ルーク様はわたくしのおっぱいを揉むような御方ではありませんわ! どなたですの!?」


 プルルがそう問いかけると、今までの爽やかな笑顔から一転、猥雑な笑顔をその顔に張り付けたルーク(偽)がついにその口を開きました。


「……あはは。よく気付いたね、勇者の女」


 その声は、ルーク(真)とは似ても似つかぬ甲高い声でした。顔や身体はルークなのに、纏う雰囲気や声が全然違います。それは、これまで何度も戦ってきた魔族のそれでした。


「――魔族ですの!? 撤退したはずじゃありませんの!?」

「撤退したと見せかけて、君たちを待っていたんだよ?」


 ルーク(真)が絶対に見せないような醜い表情をして笑うルーク(偽)に、身の危険を感じたプルルは逃げようとベッドから起き上がりました。魔法の発動に必要な杖は、さっき寝るときに邪魔だからと壁に立てかけてしまいました。非力な魔法使いであるプルルには、魔族と戦う術がありませんでした。


 しかし。


「――きゃぁ!!」


 ベッドから離れようとすると腰に腕が回され、プルルの動きが止められてしまいます。抜け出そうにも力が強く、どうすることもできません。


「そのまま気付かなければ良かったのに、バカな女だよね。最後に勇者と結ばれる甘い夢でも見せてあげようと思ったのに」


 そう言うルーク(偽)は腰を抱き寄せて逆にベッドに押し倒すと、プルルに覆い被さってしまいます。


「いやですわ! 何、していら……しゃる……――」


 息がかかるほど近い距離でルーク(偽)に見つめられると唐突に眠気が襲ってきました。

 プルルはそれに抗えず、その意識を手放してしまうのでした。



――――――――――――



 ――おかしいです……。


 モチチは、ルークの隣で竿をおっぱいに挟んで釣り糸を垂らしながら、そう思いました。


 そのルークが、さっきからちらちらとモチチのおっぱいを見ているのです。


 本来なら喜ぶべきでしょう。

 だって、あのいつも爽やかなルークが、耳まで赤くしながらおっぱいを見ているのです。

 

 最初こそ、モチチも喜んでいました。

 ですが、よくよく考えればおかしいのです。


 宿でルークと別れてから、そこまで時間は経っていません。

 それなのに、休暇中というだけでこれほどまでに急に態度が変わるでしょうか。

 これまでの自分や他の女の子たちの、色仕掛けという名の努力が実を結んだ……にしてはタイミングがあまりに変です。

 明日大事な作戦があるというのに、そんなタイミングでおっぱいに気を取られるでしょうか。

 まだ付き合いが浅いですが、それでも自分が知っているルークという勇者は、人々の笑顔よりもおっぱいを取るような人間ではなかったはずです。


 それに何より、極め付けは――


「ルーク先輩、何か釣れました?」


 モチチの問い掛けに、ルーク? は爽やかな笑顔を浮かべて無言でバケツの中を指しました。


 そうで。


 モチチが釣りをしていた港にルーク? がやってきてから、ルーク? は一度も喋っていませんでした。


 ――やっぱりおかしいです……。


 モチチの中で、ルーク? への疑念がおっぱいのようにどんどんと膨らんでいきます。

 それを確かめるため、モチチは仕掛けてみることにしました。


「ルーク先輩、自分、釣りをしてたら胸が張っちゃいました。、おっぱいを揉んでマッサージしてくれませんか?」


 無人の停留している船に、ルーク? と共に乗り込んだモチチは、その船の甲板で仰向けに寝転がりました。重力に引かれ、おっぱいが少しだけ広がります。

 仰向けに寝転がったことにより、柔らかさと大きさが強調された、モチチのおっぱい変形攻撃。それはルーク? に効果抜群でした。

 ルーク? はやはり無言で頷くと、いつもの爽やかな笑顔とは違う、血走らせた目を大きく開いたただらしない顔をして腕を伸ばしてきました。


 ――やっぱりです!


 その腕が自分のおっぱいへと到達する前に、モチチは叩き払いました。


「自分は、ルーク先輩におっぱい揉まれたことなんてないです! あなた誰ですか!?」


 ポインがそう問いかけると、今までの爽やかな笑顔から一転、尾籠びろうな笑顔をその顔に張り付けたルーク(偽)がついにその口を開きました。


「……ふぉっふぉっふぉ。よくぞ気付いたのぅ、勇者の女よ」


 その声は、ルーク(真)とは似ても似つかぬしわがれた声でした。顔や身体はルークなのに、纏う雰囲気や声が全然違います。それは、これまで何度も戦ってきた魔族のそれでした。


「――魔族ですね!? 撤退したはずじゃなかったんですか!」

「撤退したと見せかけて、お主らを待っておったのじゃ!」


 ルーク(真)が絶対に見せないような醜い表情をして笑うルーク(偽)に、身の危険を感じたモチチは逃げるために身を起こそうとしました。魔法の発動に必要な杖すら持っていないのです。非力な魔法使いであるモチチには、魔族と戦う術がありませんでした。


 しかし。


「――うぐっ!!」


 そのまま足首を掴まれて、ポインの動きが止められてしまいます。蹴り払おうにも力が強く、どうすることもできません。


「そのまま気付かなければ良かったのにのぅ、馬鹿な女じゃ。最後に勇者と結ばれる甘い夢を見せてやろうとしたのじゃが」


 そう言うルーク(偽)は掴んでいる足首を強く引いて、モチチに馬乗りになりました。


「何ですか! 何、する……です……――」


 息がかかるほど近い距離でルーク(偽)に見つめられると唐突に眠気が襲ってきました。

 モチチはそれに抗えず、その意識を手放してしまうのでした。

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