世界はおっぱいでできている

「――四ノ国の賢者、モチチです! 今日からよろしくお願いします!」


 祝勝会の次の日。

 旅立つ勇者ご一行に、一人の女の子が加わりました。


 その黒髪ショートの女の子は、四ノ国一番の実力者、賢者モチチです。やっぱり巨乳ですし、やっぱり胸元が開いておっぱいを強調するやたらひらひらとした服を着ています。

 旅するような服じゃないだろうと王女ポインと宮廷魔術師フワワと聖女プルルは思いますが、それを口に出すことはしません。なぜなら、自分たちも似たような服を着ているからです。意味がないのではと思いつつも、アピールをすることを止めないかわいそうな彼女たちでした。


 やっぱり加入してくる女の子は当然のように巨乳でしたが、勇者ルークは満面の爽やかな笑顔で歓迎します。勇者なので。


 ルークに向かってお辞儀するモチチのおっぱいが、その開いた胸元から露わになっています。当たり前です。なぜなら、お辞儀というよりも、前屈みといった方が正しい姿勢なのですから。谷間や上乳どころか、その先っぽまで見えています。もちろん、わざとです。


 やっぱりモチチも、四ノ国の上層部に、勇者に取り入れと言われているのでした。


 四ノ国は小国です。一ノ国、二ノ国、三ノ国とまともに戦っても勝てないとあって、この大陸の覇権争いには加わらず、中立を保っていました。しかし、勇者がいれば状況は一変します。それ故、何としてでも勇者を引き入れろとモチチは密命されているのでした。


 モチチのそのえっちなおっぱいアピールに、ポインとフワワとプルルは、対抗せず傍観します。なぜなら自分たちも通った道だからです。存分にアピールすればいいのです。どうせ無駄なのですから。


 ルークの腕におっぱいで抱き着くモチチを見て、生温かい笑みを浮かべる三人なのでした。


――――――――――――


 四ノ国の王城を出発した勇者ご一行は、この大陸の北端にある港町へと向かうことにしました。そこから船に乗り、魔王がいる北の大陸を目指すのです。


 その途中、小さな村に立ち寄りました。

 ヨイバヤが倒されたことにより、魔王軍は四ノ国から引き揚げています。村では復興するべく、村人がハキハキと働いていました。

 

 その様子を見たルークは少しでも力になるのなら、と手伝いを申し出ました。

 勇者様にそんなことをさせられない、と丁寧に辞退しようとする村長でしたが、勇者は引かず、結局押し切られるように村の復興の手伝いをしてもらうことになりました。


 モチチ以外の女の子は正直、乗り気ではありませんでした。だって、他所の国の村なのですから。しかしルークがやると言ったらやらねばなりません。おっぱいが通じない今、こんなところでルークの好感度を下げるわけにはいかないのです。


 手伝いをしている途中、小さな女の子と出会いました。

 ルークにお礼を言いたいというその女の子は、手伝いをする勇者にうろちょろと付いて回りました。初めはまごまごしていた女の子でしたが、最終的にはルークに抱き抱えられて、本当に楽しそうな笑顔を浮かべていました。それを見たルークも、心から嬉しそうに笑っていました。


 その夜。


 勇者ご一行は、村長の家に泊まることになりました。宿屋がないその村では、五人という人数が一度に泊まれる大きな家が、村長の家しかなかったのです。

 村長はわざわざ、ルークたちの為に、家を空けてくれました。

 なので、今この家はルークと四人の女の子しかいません。


 ルークは夕食後、早々に自分に宛がわれた部屋へと戻ってしまいました。

 女の子たちは、四人で一つの相部屋です。

 各々のベッドの上で座りながら、お喋りをしています。その服装は、奇しくも全員、色は違うものの、胸元を強調する薄手のネグリジェでした。


「今日は疲れたねー」と、ピンク色のポイン。

「復興の手伝いとか……マジ……」と、水色のフワワ。

「まぁまぁ、ルーク様らしいじゃないですか」と、白色のプルル。

「ルーク先輩っていつもああなんですか、先輩方?」と、黒色のモチチ。


 モチチも結局というかやっぱり、ルークを誘惑できず、みんなの仲間に温かく迎えられていました。これで真の仲間になりました。

 ちなみにモチチが「先輩」と呼んでいるのは「自分このパーティの新参者なので!」ということらしいです。


「しょっちゅうだよ。まぁでも、勇者だからねー」

「普通さ? 自分に見返りあるわけでもないのに、あんなことできなくね?」

「そのように心優しい方ですから聖剣を抜けたのでしょう」

「さすがルーク先輩ですね……」


 そうなのです。

 ルークはおっぱいにも自分たちにもなびきませんが、とても心優しいことを、女の子たちはわかっていました。

 色仕掛けをした時も、それをやんわりとたしなめるルークのその顔は、とても優しいのです。


「そういえば一つ気付いたんだけどさ。ルーク、女の子抱き抱えてたね」

「あーなんか嬉しそうだったね。つか、勇者から女の子に触るって珍しくね?」

「わたくしたちには、ご自分からは決して触れようとしませんものね……」

「……先輩方、自分、わかっちゃいましたよ」


 その声に、三人が見れば。

 何かを企むような悪い笑みを浮かべるモチチがそこにいました。

 さすがは賢者というべきでしょうか。何かを思いついたようです。

 その様子に、三人は真剣な表情になりました。

 勇者篭絡の糸口になるかもしれないのです。


「え、なに?」

「……とりま、言ってみて」

「ご、ごくり、ですわ……」

「ふっふっふっ、気付いた自分を褒めてあげたいです――いいですか先輩方、あの女の子になくて、自分たちにあるものがあります、それが何かわかりますか?」


 おぉ、これはまさか……!?


 モチチの問い掛けに、三人は顔を見合わせて首を傾げます。

 そして改めてモチチを見る視線が、何? と問いを返していました。



「……それは身長です! 自分たちは女の子にしては身長が高いです。それがつまり、ルーク先輩が自分たちの誘惑になびかない理由ではないでしょうか!」



 惜しい!!



 それが間違っているとも知らず、四人はそれだ!! と一斉に表情を輝かせました。

 そして――


 改めて言いますが、おっぱいに詰め込まれているのは魔力です。だからおっきければおっきいほど、強力な魔法使いなのです。

 その点、四人は文句なしでした。何しろ各国一番の実力者なのです。


 何が言いたいのかと言うと。


「「「「――変えよ! メタモルフォーゼ!!」」」」


 その零れんばかりのおっぱい、もとい、溢れんばかりの魔力で、姿を変えることができるのです!


 四人が同時に同じ魔法を唱えると、部屋に光が溢れました。

 その光が収まった時、そこには。


 ――胸や顔はそのままに、魔法で身長だけを低くした、ポインとフワワとプルルとモチチがいたのです!



 その後どうなったかは、言うまでもありません。


 だって勇者は、低身長好きではなく、貧乳好きなのですから……!

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