エッセイ Yellow

由野 瑠璃絵

音楽のある暮らし

音楽が好きだ。

うちの両親は離婚していて、母の実家で幼い頃から暮らしていた。

母の実家は、音楽やら芸術やらとは、無縁の生活をしていた。

家の中で音楽が鳴ることはほとんどない。鳴ったとしても、祖母がCDラジオで演歌をかけるくらいだ。

自分は音楽にほとんど触れずに育ってきた。


変わったのは、小学四年生の頃だった。その頃からボーカロイドが出てきた。メルトや東京テディベア、今では米津玄師として有名なハチさんの曲などを、聴きまくりに聴きまくった。

当時好きだった「合唱動画」(今わかる人は多分少ないかもしれない)なども、とにかく探し。

同時にMMDにもハマり、自分も真似て踊り始めた。

踊れる場所は限られていた。自分の部屋の一角だ。そんなに広くはない。

勉強机の上にパソコンをおいて、ミラー動画をかけて踊る。自分の部屋は2階なので、そんなにドンドンとは踊れない。それでも楽しかった。

家族が全く知らないところで、私は音楽と密会を始めた。


それからしばらくして、私は実家から離れた。母と二人で暮らし始めると、私の生活は芸術に少しずつ触れることを許され始めた。

祖母は芸術を嫌っていた、と、そこまでいかなくとも、理解ができないようだった。カラオケなどを嫌い、習字だけに没頭する祖母だった。習字は芸術ではないのか?わからないけれど、祖母の中ではどこかで線引きがあったように思う。

祖父はゴルフに夢中で、芸術に触れる機会は多かったらしいが、自らがしようとは思わなかったらしい。


母が音楽が好きだというのも、母と二人で暮らしてから知った。

音楽とはすでに、密会ではなくなった。

生活の隣に、いつでもかかっている。

車で走るときも、小説を書くときも、絵を書くときも、踊るときも。


音楽が無かったとき、私は別に、生きていた。

しかし今では、音楽がないと生きていけない。それほどに侵食された。


さて、音楽とは麻薬である。

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