遠い太陽
ばふちん
遠い太陽
また雨だった谷崎潤一郎はたしかに読みたかったが数メートルさきの本棚まで足を伸ばす気力もなくまた雨だった裏日本裏日本裏日本うらめしやせっかく週のアタマは気持ち悪いくらい天気がゴキゲンだったのだ晴れ間がのぞいていたその油断が失望をまねいたたとえば自分の部屋の押し入れにトンネルが穴を開けていたとしてそのトンネルが瀬戸内海に通じていたなら本望だけれど妄想がゴキブリのようで自分の妄想が胃袋に貼り付いているみたいで嫌で架空のドラえもんをでっち上げるのはもうやめにした本来は図書館に行っているところだった谷崎潤一郎はたしかに読みたかったが近ごろの絵本のことも気になっていてすなわち子供コーナーに足を踏み入れたかったのだしかし雨の道路をフラフラ歩いていたとき瀬戸内海の朝日のような太陽の光が脳裏をかすめて全てどうでもよくなった知的好奇心学問的欲求文学への敬意が死に絶えとりわけ文学への敬意が消え失せた太陽は絶望とともに消えたいつか墓地で谷崎のお墓と永井荷風のお墓が隣り合っている夢を見たなんという陳腐なものであろうかその夢のお墓をみているあいだずっと息苦しかった起き上がった朝両方の鼻孔に点鼻薬を4回ずつ注入したやはりその朝も雨で昼も夕方も夜も夜更けも
遠い太陽 ばふちん @bakhtin1988
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