更新された。
「それで平和の。この戦場に姿を現したってことは、勝つ宛てでも見つけたのか?」
「そんなん。あるわけじゃないが……勝ち筋は見えたんだよ」
「勝ち筋って。随分と余裕な口ぶりじゃないか」
デュソルが挑戦的な視線を向けるのとは対比的に、ガウェインが高圧的な笑みを浮かべていた。
「そりゃそうだ。俺の勝ち筋は、この戦争の終局だ。簡単だろ?」
「なら。俺が代わりにお前らを殲滅してやろうか?」
「ほう? それは秩序とも全面対立を行うということで良いのか?」
いがみ合い空気が固まり、再度修羅場に突入する。
一触即発。誰かが身じろぎでもすれば、この戦場は今まで以上に悲惨な戦場と化すことだろう。
それが分かっているのか、自ら進んで動こうとするものはおらず、あって目配り程度だろう。
その中で一人。一人だけが笑っていた。
「俺が一人、遅れてきた理由。お前らはわかるか?」
「なに?」
カサブリアが眉を顰める。
デュソルの昔を知っているカサブリアならば、納得の行く疑問だったのかもしれない。
なぜ戦場へ出向くのが遅れたのか。
これほど無益なことを手放しの状態で受け入れるほどデュソルはまぬけではないのだ。
カサブリアの脳内には、多大な疑問が圧し掛かる。
なぜ。なぜこんなにも無益なことを。
どこか我が陣営の戦略の穴を探していたのか。
それならば、今すぐにその穴を突くだろう。
というよりも、そもそも簡単に見つかる穴を用意するはずがない。
なら。ならばなぜ遅れて……っ!?
「まさかっ!?」
勢いよくカサブリアが頭上に顔を振り上げた。
「第二の奇襲!」
鬼気迫る表情のカサブリアが叫んだ通り、デュソルの余裕の正体は、第二の奇襲があるからだ。
「このための盾、このための仲間なんだよなぁ!」
そう叫ぶデュソルは、勢いよく自陣営の集まる方へと駆けた。
「盾隊!盾を展開しろ!!」
『大楯、展開!!』
誰かの掛け声の元で、盾隊が一斉に盾の尻を地面にさせば、「プシュー」と蒸気交じりの排気音が鳴り、盾がひし形へと姿を変えた。
それを皆同時に同じ動作で頭上へと掲げれば、デュソルの声が張った。
「ブラディ!!」
「はッ!!」
大楯を構える駕護持ちが、声を返し。
そして、辺りには緑色のオーラを漂わせた。
「盾感覚譲渡展開! 『
突如。駕護を使ったブラディ以外にも駕護にも似た現象、緑色のオーラが噴出する。
それは展開された大楯の核なるエネルギーを吸収する水晶体に吸い込まれ。
「展っ開!!」
水晶体に吸い込まれたエネルギーが吹き出だすほどの勢いで噴出され、瞬時に駕護としての形を形成していく。
そして、瞬く間に平和の陣営には覆うように球体の防御壁が構築された。
「防壁の展開を視認! さぁお前ら! 矢を番えろ!」
展開された防壁を視認したのは、ビリーだ。
第一と第二の弓兵隊に命令を出した手前、自らも弓を構え矢を番えた。
「二回目の奇襲は全力だぜ?」
意味深な微笑を口元に刻めば、大きく息を吸い込んだ。
「全体付与、一式、二の矢、『
呟くビリーの足元からは渦のように緑色のオーラが周囲に広がっていき、それが弓兵隊全体を覆った時には。
「――纏え!」
叫ぶと同時にそれぞれの足元に留濃し続けていたオーラが、風を受けたかのように巻き上がり、鏃へと吸い込まれ矢のような渦が完成した。
「殲滅しろっ、『
それを封切とし、皆それぞれの角度で矢を射った。
刹那に群青であったはずの空は緑色で埋め尽くし、それぞれには殺す意思、殺気の籠められたものだと察した者たちは皆恐怖した。
逃げられない。
逃げる宛てがない。
助かるわけがない。
空を諦念の眼差しで見上げる兵士たちの思考は、これに順当し、これに同一であった。
だが、諦めよりも喜びの眼差しで見上げる者も、仲にはいるものだ。
「助かりてぇ奴だけ俺に群がれ! 対生物から対物に転換! 俺が前に屈しろ! 『支配』!」
「仕出かしてはくれたが、未だ甘いぞ。駕護、『反転』!」
騎士王の二人だった。
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