第3章 優しい世界の作り方編

第18話 ノーハート・ノーライフ

 ルリちゃんの将来に不安を抱いた、あの日からまた数日も経過して。

 俺達は今日も今日とて異世界学園生活を送っていた。もう既に俺の噂はほとんど消えていた。今のトレンドはダリオの脱税を逮捕したルキウスを称賛する噂だ。…………まぁ、当のルキウスは俺とマヤちゃんにお膳立てされたような功績であるため、褒められても渋い顔をしているのだが。素直に喜べないってのは辛いなぁ? フフ……。


「人類に愛と平穏を」


 アルトリウス先生の耳に心地良い声が実に眠気を誘う。

 二週間程度もダリオの使用人になっていたから、学園での講義も何だか懐かしい。アルトリウス先生の『宗教学』の授業は中でも非常に眠たくなってたまらない。


「心に正義と優しさを」


 だがしかし、敬愛するアルトリウス先生の授業で居眠りなどと不誠実な真似は出来ない。襲い掛かる眠気を必死で耐え、気合でまぶたを開きまくる。気を抜くと今にも落ちてしまいそうだけれど……。

 隣の席に座るグラシャは俺に視線をたまに向けて、俺が寝落ちたらすぐに起こそうと張り切っている。可愛い。アイリスは……いつも通り氷の彫像みたいな無表情でいる。…………けど、たぶん『つまらないわ』とか考えている。そういう目をしている。俺は詳しいんだ。アイリスは内心けっこう感情豊かで一喜一憂が人より大きい性質だし。


「世界に安息と救済を…………この三つが、私たちのアスラ教の最も大事とする教えです。故にこそアスラ教は善行を推奨するのです。皆がこの教えを胸に抱き、共に一つの道を向き歩むことで、その生は美しいものとなり、死して極楽へと至れるのです」


 過剰に謳いすぎず、かと言って信仰の感じられない声でもない、まさにちょうどいい声音でアルトリウス先生は国教『アスラ教』の授業を進める。

 仏教もキリスト教も俺はあまり詳しくないけれど、その二つと『アスラ教』はさほど違わない。善行を良しとし、命の尊さを謳い、悪行を憎むべきものとする。そういうものだ。異世界だろうと人が考えたものなのだから、違いがさほどないのは当然かもしれない。


「神は我々、人を愛された。故に、私たちに知恵と心を与えられたのです。しかし、人を憎む邪神もおられた。それは世界に魔物を産み落とし、それらに知恵と力を与えられました。魔こそは先の教えを脅かす邪神の使徒。故に、神の使徒たる我々は戦わなければならないのです。生きるために……強大な力こそが正しさではないと否定するために……そして、愛を感じ取れるこの心を守るために」


 …………神話から紡がれる、人の信じるべき指針、か。この指針があって、まず道徳というものは生まれるのだろう。もしも暴力を崇拝する国教があれば、その国は暴力こそが道徳的だとなるのかもしれない。よかった、この世界がまともで本当によかった。魔物がいるのは怖いけれども。


『恐れよ人間! 我こそが闇の大貴族! ハルゲルト=ハ』


 ……なんか脳内で変な魔物が出て来たから頭を振って忘れた。ハゲ? 知らない子ですね。


「故に、アスラ教は魔物の討伐を強く推奨しております。…………しかし」


 ここでアルトリウス先生が、声のトーンを大分下げて話を切り替えるふりを見せた。


「しかし、昨今では『過激派』と呼ばれるアスラ教徒が存在します。皆もよく知っている通り、『過激派』は元々の教えを忘れ、魔物の殲滅だけを正義と曲解してしまった教徒です」


 アルトリウス先生の言葉に、隣に座っているグラシャが小さく身震いをしてしまう。『過激派』…………有り体に言えば、魔物憎しで周りが全く見えなくなってしまった狂戦士の集団だ。そのモデルケースには、過去に一度出会っている。グラシャの故郷ドイヒ村の住人たちだ。『魔物みたいな見た目を持っているから』というだけで抹殺しようとしてきた彼らこそ、世で言われている『過激派』に相違ない。アルトリウス先生の授業で初めて知った事だ。一郎さんもきっと知っていたんだろう。


「…………大丈夫だ。俺がついてる」

「……うん」


 俺はグラシャの手を取って軽く握った。もう怯える必要はないのだという思いを込めて。するとグラシャはさらに強い力で俺の手を握り返してきた。家族を火炙りにされ、自身も絶命寸前まで追い詰められたんだ。トラウマにならない訳がない。だけど、そんな事はもう繰り返さない。グラシャは俺が守護る。もうこれ以上、痛みも悲しみもこいつに寄せ付けないと、友達になった時に誓ったのだから。


「魔物に身内を殺された者。ただ盲目的に自信が正義と思っている者。他の過激派に洗脳された者。……過激派は様々な人間で構成されています。しかし、いずれにしても彼らを放っておく事は出来ません。アスラ教の名を出し、殺人や強盗などの犯罪に手を染めている犯罪組織となりかけているからです」


 その時、教室の壁掛け時計が正午を指し、魔導装置によってゴーンとチャイムを鳴らした。授業終了の合図だ。


「ふむ、もうこんな時間ですか。では、今日はここまで。次は歴史についてお話しましょう。では解散」


 アルトリウス先生の言葉で、今日の『宗教学』の授業が終わった。…………異世界でも、宗教ってのは一長一短って事かぁ。

 …………こういう話は本当に気が滅入る。俺が最も嫌う、人の悪意についての話だ。神がいるならば答えて欲しい。どうして人の心には悪の概念を作ったのか。あっち・・・の世界も、こっち・・・の世界も、結局はどこかしら、悪意に歪んでいる――。


「っ!」


 ふとそこで、俺の左側に座っているアイリスにちょん、と腕をつつかれた。顔を向けると、『授業も終わったし、本部に帰りましょう』と視線が言っていた。…………あぁ、駄目だ。こういう事を考えると我を忘れて深みにはまってしまう。考えても仕方の無い事なのに。


「……大丈夫、ですか?」

「あぁ、何でもないよ。帰ろうかアイリス、グラシャ」

「はいっ」

「うん!」

 

 いけない、アイリスは目ざといから変に心配をかけてしまう。笑顔を作って席を立つと、二人も微笑んで席を立ち、帰りの支度を始めた。

 …………そうだ、俺がズレてるだけなんだ。もっと気楽に構えないと。兄貴みたいに……。







「いただきます」


 この世全ての食材に感謝を込めて。今日も元気に腹が鳴る。故に食事の作法は変わらない。

 授業を終えた俺達はまたいつも通り、騎士団本部の食堂で女神の料理を頂く事にした。今日のメニューはカレーうどん(特盛り)、季節の野菜かき揚げと海鮮の天ぷら(特盛り)、野菜炒め(特盛り)、アンジュさん手作りフルーツどら焼き(大量)です。今日も残さず食べましょう。お昼の校内放送でした。


「…………本当によく食べるのねぇ」

「アンジュさんの料理がおいしいからですよ」

「そう? よかったわ」


 アンジュさんは俺の言葉に嬉しそうに微笑んでくれた。今日も神性が高くて素敵でいらっしゃる。アンジュさんも生活になれたみたいで何よりだ。


「あら、もう野菜炒めが無くなっちゃたのね。おかわりはいるかしら?」

「下さい!」

「ふふ、はいはい」


 そして彼女は空になった野菜炒めのお皿を下げて、また厨房に戻って行った。


「トーマ、アンジュさんの事好きなのかな……」

「…………まだ、大丈夫そうです」


 …………グラシャがかき揚げをガリガリ食べながらアンジュさんの後ろ姿をつまらなそうに見やっていた。こら、食べながら話すとはお行儀悪いぞ。アイリスも、よそ見してるとカレーうどんがはねるぞ。


「はぁ。さてと、学園での授業も落ち着いて来たし、そろそろまたクエストを受けてみようか」

「……そうですね。食べ終わったらマヤちゃんに相談しましょう……」

「…………もうゴーストは嫌だからね?」


 分かってるって。俺だってゴーストには対抗手段ないんだからあまり相手にしたくはない。そう、俺に必要なのはもっとちゃんとした冒険である。怪しげなダンジョン、まだ見ぬ地下ボス、そしてその先に待つお宝……。それを持って帰り、夜にはゴキゲンな酒宴でレモサーを飲みスメラギさんの料理を喰らう。俺はそんな普通の生活がしたいのだ。


「はぁい♪ マヤを呼んだかな☆」

「おぉ!?」


 そう考えていると、俺達のテーブルにどこからともなくマヤちゃんが現れて俺の隣に座った! ドクに続きあなたも瞬間移動能力持ちですか! びっくりするわ!


「普通の冒険がしたいなぁ~って思ってそうなそこのトーマくん! 残念ながらその願いは叶いません☆ 何故ならここは【夜明けの星】だからでぇす! はい、あ~ん♡」

「あーん」


 そう言いつつ、マヤちゃんがアンジュさん手作りフルーツどら焼きを一つつまんで俺の口に近づける。その自然な流れに俺も口を開くと、ぱくりんちょとマヤちゃんが食べさせてくれた。


「美味しい?」


 マヤちゃんの言葉に俺は恥ずかしくなりながらもこくんと頷く。すると彼女はいたずらっぽく笑って、その俺の食べかけのどら焼きを自分も食べた。…………マ、マヤちゃんと間接キス……! カーニバルだよ……!

 

「むーー! マヤちゃん!!」

「…………トーマさんをからかうの、そこまで」

「え~? 何の事ぉ~? マヤ分かんな~い☆」


 これにはグラシャとアイリスも黙っちゃられん、とばかりにマヤちゃんを睨む。けど、そんな事は知らんとばかりにマヤちゃんはいつも通りあざといムーヴで視線を受け流した。…………はぁ、マヤちゃん、この前の2000万C全部孤児院に寄付するくらいの善人なのに、こういう人をからかう趣味持ってるから性質が悪い。しかも全然憎めないし。どら焼きごっくん。


「…………はぁ。じゃあどんなクエストならあるんですか?」

「よくぞ聞いてくれました。トーマくんたちにはこれに行ってもらいたいんだぁ」


 そうしてマヤちゃんは一枚のクエスト依頼用紙を出して見せてくれた。…………クエスト名には『アスラ教式典の護衛』とある。なんぞこれ。


「ここから北に【聖地セクリト】って場所があるの。近々そこで、アスラ教会が創会400周年の大きな式典をあげるのね? そこで、トーマくんたちには変な人がいないかの護衛についてほしいんだぁ。……噂では、過激派が式典でテロを起こそうとしてるとか☆」

「テロ!?」


 あまりにも物騒な言葉に思わず食事する手も止めてしまった。何か、今までで一番大きなクエストじゃないか、これ。ちょっと緊張してきたな……。


「ほら、アスラ教会も過激派の事は敵と見なして厳しく取り締まってるからさぁ、それに怒っちゃった過激派が報復に来るかもしれないっていう噂があってねぇ。もちろん、何事もなければそれでいいんだけどねぇ」


 それはフラグですマヤちゃん。つまり、ヤバイって事ですね? ……式典にはアルトリウス先生も参加するんだろうか。ならば俺達も協力する事はやぶさかでない。しかし……。


「グラシャは……やめておくか……?」

「…………ううん、大丈夫。トーマが行くなら、一緒に行くわ」


 一度グラシャに確認を取ってみると、少し緊張しているものの、確かに覚悟のある瞳で俺を見つめて返事をしてきた。…………そっか。なら、頑張ってみるか。


「分かりました。俺達はこのクエストを引き受けます。…………でも、俺達だけで大丈夫ですかね。その聖地セクリトってところには初めて行くんですけど」

「にゃはは☆ 確かに、トーマくんたちだけじゃ何か不測の事態が起きた時に大変かもしれないね。という訳で、レオと一緒に行ってもらうね☆」

「なん……!?」


 だと……!? 本気かマヤちゃん! 何だってレオさんを一緒に! 嫌がらせか! 見て下さいよグラシャとアイリスの顔を! 『冗談でしょ……』みたいなドン引きした表情になっているよ!


「ははは! 私の名を呼んだかマヤ!」

「呼んではねぇから失せろよ☆」


 そして案の定レオさんがこちらに来てしまった。…………マジか。この金髪イケメン変態ドMとテロの対応なんてガチクエストに当たるんか。難易度もっと上がってんじゃねぇか。


「レオ、今度の式典にはトーマくんたちと行ってもらうから、ちゃんと面倒見ろよ☆」

「む、そうか。それは頼もしいな! よろしくなトーマくん、グラシャくん、アイリスくん。君たちが一緒ならば私もやる気が出るというものだ!」

「俺たちはやる気が無くなってますけどね」

「ふっ……その手厳しい言葉、実にいい……。グラシャくんとアイリスくんの蔑んだ視線もまた、いいものだ……」


 レオさんは今からなんか少し興奮していた。もう駄目だこの人。本当にまともに仕事出来るんだろうか。


「ごめんねぇみんな。でも、便利なのは間違いないよぉ。これでもレオはウチのエースだから……残念な事に……」


 本当に認めたくないけれど……と顔に書いてあるような表情でマヤちゃんは言う。……そう言えばアンドレも言ってたな。レオは騎士団のエースだって。マジか、この変態実は有能なのか。一郎さんよりも? 嘘だろ?


「ふっ、私を褒めてくれるとは。珍しい事もあるのだなマヤ。いよいよ私と結婚を考えt」

「寝言は墓の下で言えよ♡」

「んんっ……あぁ、やっぱりマヤが一番だなぁ……!」


 ……………………本当に大丈夫か……?







 聖地セクリト。

 アスラ教典の中で、霊峰セクリト山にまず神が降臨し人を生み出した……とかいう眉唾な話があり、そこからセクリト山のふもとにアスラ教会は町を作り、今では聖地とされている。まさに総本山という訳だな。


 クエストを引き受けたレオさんと俺達は、まず帝都にいる大司教ら教会の高官を護衛しながら聖地セクリトへ向かう。たくさんのアスラ教関係者に、これまた様々な騎士団からの護衛騎士がお供をして、さしずめ大名行列か何かといった様相で、俺達も帝都を出発せんとしていた。


「まさかトーマくんたちが来ていただけるとは、なかなか縁というものを感じますね」

「任せて下さいアルトリウス先生。不審者がいたら、俺達がしっかり守りますからね!」

「それは頼もしいですね」


 まず【夜明けの星】騎士団はアルトリウス先生の一団を聖地セクリトまで護衛する事になった。

 アルトリウス先生は神父の中でもかなり高い地位にいるようで、お供の人間や持ち合わせる道具が入った馬車が多い。先生、そんなに偉かったのかとグラシャとアイリスも驚いている。


「はっ、あんたたちに守られるほど、あたしたちもヤワじゃねぇよ。おたくはおたくの身だけ心配してな」


 俺とアルトリウス先生の会話に、ふと横から勝気な女性の声が挟まれた。視線を向けると、そこには背の高い美女がいた。


「ケモ……耳…………!?」


 そして俺の身体に電流走る。その美女には、ケモ耳と尻尾が生えていたのだから。――久しぶりに発動、スキル【観察眼】! 勝気な性格によく合う赤毛の頭に生えるその三角耳と、すらりと細い尻尾は…………、ずばり、獅子! ライオンっ娘! うっ、尊い…………! これは駄目だ……童帝ケモミミ=キョニウノオネエサンスキー1世の鋼の理性を以てしても抑えきれん……このモフり欲求を…………!


「スカーレット、今のはイヤミに聞こえるわ。謝るべきよ」

「…………馬鹿」


 そんなライオンっ娘を咎めるように、また見知らぬ二人の女性が側に来た。一人はお姉ちゃんみたいな雰囲気のある魔術師、もう一人はアイリスみたいな雰囲気の無口そうなクールさんだ。


「えぇ……? そんな事ぁねーだろ? あたし間違った事言ったか、アルトリウス様?」

「言い方を間違えていましたね。…………失礼、トーマくん。彼女たちは普段、教会で私の手伝いをしてくれている神官です。皆、挨拶を」


 アルトリウス先生が言うと、その三人はすぐに姿勢をびしっと正し、俺達を向いた。…………な、なんかすごい忠誠心を感じる。今の一瞬で、彼女たちがアルトリウス先生に心酔しているとはっきり分かった。


「妹が失礼しました。フレイヤと申します。あなた方の事は、アルトリウス様からよく聞いておりますわ。実に優秀な生徒だと。今回はよろしくお願いしますね」


 まずはお姉ちゃん魔術師が言う。魔術師というのは、腰に杖を差しているからだ。ただ、アイリスのような長杖スタッフではなく、指揮棒のように短く細い短杖ワンドだ。非常にホグ〇ーツ感があっていい。挨拶をされたから、俺達もおじぎするのだ。よろしくお願いしますフレイヤさん。


「…………フラム。よろしく」


 次に無口クールさんが挨拶。彼女の腰には二振りの短剣が差されている。双剣士、だと……!? かっこいい…………! 無口な美少女双剣士とか非常にラノベ感があって実にいい。いい意味で厨二感。こういうのでいいんだよこういうので。聖職者である点もまた言い。エイメン。よろしくお願いしますフラムさん。


「…………スカーレット。あー、何だ。とにかく、あたしたちも自分の身くらい守れるから、そんな気を使わなくてもいい、って事だ。よろしくな」


 そして最後。一番最初に話しかけて来たライオンっ娘さんが言う。三人の中で一番グラマラスな体形をしている。てか聖職者がそんな身体のラインすけるようなシスター服でいいんですかね? あーだめだめ、えっちぃすぎます。是非にフレンズになりたい。俺は童帝エンペラーのフレンズだから、百獣の王たるライオンさんとは相性いいはずだそうに違いないモフらせて下さい。


「くっ、待て、落ち着け俺……! 逸ってはいけない……!」

「あう」


 理性が崩壊する寸前のところで踏みとどまった。初対面で『モフらせて下さい』は流石に無い。あり得ない。バッドコミュニケーションにも程がある。グラシャの耳でもモフって落ち着こう。慌てず、騒がず、落ち着いて……ゆっくり、じっくりとスカーレットさんとはフレンズになるんだ……そして必ずやあの獅子耳をモフってみせる……!


「おう、そちらさんにもあたしの仲間がいんのか。尻尾同士よろしくな」

「は、はい……」


 スカーレットさんはケモ耳のよしみでグラシャと握手を交わしていた。おぉ……ケモ耳が二人……! 視界が幸せ&幸せだ……!


「…………。」

「…………!」

「…………?」

「……、……」

「!」

「!」


 …………フラムさんはアイリスと何か視線で会話した後、意気投合したようにがしっと握手を交わしていた。……今のほんの少しの身振りの間に何があったんだ……。ま、まぁ仲良くね。


「よろしくお願いしますフレイヤさん、私はレオンハルト。気安く豚と呼んで下さい。ところで加虐趣味などお持ちでないでしょうか? あなたからはとてもいい躾を受けられる気がするのですが」

「あぁ、あなたが頭ゴブリンと名高いレオンハルトさんですか。私に近づかないで下さい殺しますよ?」

「おぉっ…………見込んだ通り、とても、イイ…………♡」


 …………レオさん、頼むからこれ以上【夜明けの星】の評判を落とさないでくれ。すいませんフレイヤさんほんとすいません。


「ははは。噂に違わぬ通り、色んな方がいるようですね。【夜明けの星】には」

「すいません先生。ほんと、迷惑だけはかけませんのでよろしくお願いします」


 そんなレオさんを笑って受け流してくれるアルトリウス先生に恐縮してしまいながら。

 俺たちはこれまでにない大規模クエストを始めるのだった。…………さて、平和的に終わればいいけれど。

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