第8話 俺は友達が出来ない

 かくして、俺はルキウスによって一億の賠償責任を負わされてしまった。何という横暴、何という理不尽……権力ってやつか……。この強大な力の前には正しさなんて無力なのか。こういう嫌なところばかり地球と同じだな。はぁ……。


「……あ、あの」


 ひどく疲れて、思わずクソでかため息をつきながら裁判所を出ると、入り口で蚊の泣くような小声が耳に聞こえた。だが、鈴の鳴るような素敵なお声だったので思わず足を止めた。

 すると俺の前に、銀髪の美少女が遠慮がちに近づいて来た。びっくりするほどの美人さんだった。流れるような長い銀髪は夜空の天の川の如く煌めいていて、肌はそれを彩る恒星のように白く柔からな色をしている。しかし、氷河を思わせるような青く鋭い瞳とクールな表情のせいで、何だかとっつきにくい印象を受けた。

 ……と、俺の【観察眼】が自動発動してしまったようだ。それほどに綺麗な人なのだ。故に、俺が無意識にガン見してしまうのも致し方無し。そう言う事なのである。んで、どちら様?


「えっと、自分に何か?」


 どう話してよいものか困り、とりあえず要件から聞いてみる。


「………………………………」

「……………………へ?」


 ……だが、銀髪ちゃんはそのまましばらく黙り込んでしまった。その間も、氷のような視線が俺を切り裂くような見つめている。え、えぇ……どうしろと……。

 仕方ないので、彼女をねっとりと見つめながら待ってみる。本当にどこのどなた様だ。是非お近づきになりたい……けれど、彼女の小奇麗な身なりを見るに、貴族のお嬢様かのかもしれないと考えて、うんざり気分になった。はぁ……貴族かぁ。今最も考えたくない言葉だ。この銀髪ちゃんも、性格はルキウスと同じなのかもしれない。そう思うと途端に彼女に近づきたくなくなった。やっぱり俺の癒しはグラシャだけなのだろう。我が心と性癖に一点の曇りなし。ケモ耳は正義だ。


「……大丈夫、ですか?」


 そう不埒な事を思っていると、銀髪ちゃんは俺を睨みつけながらようやく口を開いた。儚げな声に対して視線が鋭すぎる。えっ、ちょっと怖い。何でそんな睨んで来るの? それに何で心配されてるんだ。睨まれながら心配もされるとか、どっちが本当なのか全然分からん……。


「い、いえ、大丈夫な訳、無いですよね……!」


 返事に困った俺が何か言う前に、銀髪ちゃんは慌てて付け足すように言った。はい、一億の請求とか正直全くこれっぽっちもだいじょばないです。気が重いなぁ……。


「馬鹿な事言って、ご、ごめんなさい……! 失礼します!」

「えっ?」

 

 だがしかし、その銀髪ちゃんは何を思ったのか、申し訳なさそうにぺこりと頭を下げ、俺の前から走り去ってしまった。あ、あれ? 俺何にも言ってないんですけど……。

 なんか、貴族にしてはやけに変って言うか……。ルキウスみたいに、警戒せざるを得ないような邪気は彼女から感じなかった。も、もしかして本当に俺を心配してくれていたのだろうか。それなら悪い事をしてしまったなぁ。一言くらい返事すればよかった。


「トーマ……」

「マヤもまだ何が何だかだけど……とりあえず本部に帰ろっか? 団長に相談してみよ?」

「はい。すみません……」


 一人残された俺に、グラシャとマヤちゃんが駆けつけてきてくれた。そうだなぁ、一億なんてとても払えないし、心苦しいが団長の力を貸してもらうしかないよなぁ……。







「なるほど。つまり、貴様はワガハイに一億肩代わりしろと言うのだな?」

「う……! いえ、そんなつもりでは……!」


 本部に戻り、団長たちに事の顛末を話す。すると団長は不機嫌そうに鼻息をぶぅーと鳴らした。くぅ……! そ、そりゃ渋い顔するよな……。一億なんておいそれと払える金額じゃないし……。


「甘えるでないトーマ! 此度の事件は貴様の不注意が招いた事! 【ノブレス・オブリージュ】などクズしかおらんと言うておろう! おいそれと手を出した貴様の不明よ!」

「本当にすみません!」

「すみませんでした!」


 思わずグラシャと二人、ひれ伏して謝ざるを取らざるを得ない正論お説教だった。全くその通りであります! ここに一郎さんがいれば引っ張たかれてただろう。今はクエストでまた留守にしているけど。


「マヤ! 金庫から一億出せぃ!」

「かしこま☆」


 ……へ? 今、なんと?


「フン! あの小賢しいスターライトめに金を渡すなど屈辱だがな!」

「流石は団長♡ マヤ惚れ直しましたぁ」

「ガハハハ! 褒めるな褒めるな! ワガハイが偉大などと今更口にせずともよい!」


 マヤちゃんは団長をヨイショして上機嫌にすると、唖然としてる俺にウインクを一つくれた。


「我らが団長はお優しい。口ではどうとも言っているが、その実、仲間や困っている人間を助けずにはいられない方なのだよ」


 理解が追いつかなくて、今だ床に手をついたままの俺に、ドクは言葉を続ける。


「私も色々なところで嫌われてしまい、途方にくれていたところを団長に拾われたのだよ。全く、あの頃は患者を診て少し笑っただけでどこもクビにされてしまい、ほとほと困ったものだった」


 それはお前自身のせいだろ、ドク。


「私も……。貴族に『毒を持った宮廷料理人だ』って冤罪かけられそうになって、逃げだしたら団長が助けてここにおいてくれたのよ……。感謝してもしきれないわ……」


 スメラギさんも俺に笑ってそう言った。そ、そうだったのか……。ていうか、スメラギさん宮廷料理人だったのか。そりゃいい腕してる訳だ……。


「フン! 勘違いするでないぞ! ワシは貴様を助けた訳ではない! あの小憎らしいスターライトのせがれをぶん殴った、その痛快な蛮勇に免じて肩代わりしてやっただけだ!」

「お手本のようなツンデレ、ありがとうございます」


 できるならそういう言葉は美少女に言ってもらいたかったなぁ! 何が悲しくて悪人面の爺さんに言われなきゃいけないんだ。やはり俺の異世界生活は間違っている。でも……。


「ありがとうございます、団長!」

「ありがとうございます!」


 グラシャと一緒に、再び床に頭をつけた。本当にありがとうございます団長ぉ……! マジで良い人だ……! 昼間からマヤちゃん侍らして酒飲んでたりするし、騎士団員の事を度々『奴隷』って言うし、おならは臭いし、口癖は『他の貴族全員くたばれ』だけど、本当に良い人だ……!


「俺、この恩生涯忘れません! 一生団長についていきます!」

「ガハハハハハハ!! 大義である! またワガハイの偉大さが広まってしまうようだのぉ!」


 そして軽くヨイショしておけば大抵ご機嫌になるくらいちょろいけど、本当に良い人だ……!


「フフ……とんだ災難に遭ったものだな……。フフフフ……」


 それはさておき、ドクが俺の側で口元を隠して笑っていた。おそらく俺の不幸によって自分の幸福をかみしめているのだろう。このクズ医者がァ! 当事者になるとほんと腹立つな! そういうとこだぞ!


「やっぱり団長は最高だよなぁ! 俺も一生団長の専属料理人になる事を誓うぜ!」


 何故かアンドレはほろりと目頭を熱くしていた。いや、お前はまず普通の料理人になる事を誓えよ……。





 そういった団長の計らいもあって、俺の一億の賠償請求は一応の解決が成された。だが俺の負債が無くなったわけじゃない。団長はあくまで肩代わりしてくれただけだ。この一億の負債は、これからの俺のクエスト報酬から少しずつ天引きして返していく事となった。こんな特例を許可してくれたマヤちゃんにも感謝だ。受付係のマヤちゃんが何故か騎士団の財布握っている事実も発覚し、俺はマジでマヤちゃんだけは敵にしてはいけないと戦慄するのだった。



 さて、俺の学校生活はこうして守られたが、俺は一躍時の人となってしまった。


「闇のように黒い髪の剣士……あれが噂の……」「あれが一億の男か……」「近づくなよ? 俺達までルキウス男爵に目をつけられちまうぜ……」「イケメンなのに、残念だわ……」


 ユグドラシル学園を歩けば、どこにいてもそんな噂が耳に届く。立てば噂、座れば視線、歩く姿は憐憫の的。ルキウスが流したのか、俺は学園中の人間から煙たがられ避けられる存在となってしまった。


「言いたい事があるならかかって来なさい! その舌を突き刺してゴブリンの餌にしてやる!」


 耳と尻尾をびんと突き立てて、グラシャが吠える。すると周囲の人間もその気迫に恐れを成し、蜘蛛の子を散らすように去って行った。村八分にされる辛さはグラシャが一番よく知っているはず。だからこんなにも激怒してくれているんだろう。


「グラシャ、ありがとう。でも俺は全然平気だよ。グラシャが味方だから」

「トーマ……。うん、私が一緒にいるからね! 一生あなたを守るから!」

「そこまで重い覚悟しなくていいかな……」

 

 一生はちょっと重い……。いや、嬉しいんだけどね。


「廊下で大きな声を出してはいけませんよ、グラシャさん」

「アルトリウス先生!」


 そんな俺達へ、一人の先生が親しげに声をかけてきた。アルトリウス=ダウー。『宗教学』の授業の担任で、教会で本当に神父の仕事をする傍ら、学園の先生もこなす多忙な若い先生だ。体格も立派で、長く大きな処刑剣エクセキューショナーズソードを腰に差して歩く姿は実に雄々しい。性格は優しく誠実。俺とグラシャを腫物扱いしないすごく良い人である。


「気持ちは分かりますがね。しかし、この手の相手は無視が一番よろしい。人の噂も何とやら、そのうち無くなりますよ」

「そうでしょうか……」


 アルトリウス先生の薫陶のような声は何とも耳に心地よく、あれだけ怒っていたグラシャもすぐに落ち着きを取り戻していた。そうだな、アンチは無視が一番だって兄貴も言っていた。相手にするだけ疲れるというものだろう。


「でも困ったなぁ」

「またルキウス男爵に何かされたのですか?」

「あぁいえ、違うんです先生。俺、この学園で魔術師の仲間を見つけらればいいなって思ってたんです。ほら、今度『課外授業』もあるじゃないですか。それまでに見つけたいな、って思ってたんですけど……」


 アルトリウス先生にそう言いながら、考えを整理する。近々、『課外戦闘実戦』という授業があり、俺とグラシャもそれを受けなくてはならない。座学ではなく、実際にフィールドに出て、課題の魔物を討伐するクエストの練習ような授業だ。なめてかかると大変だと、学園の卒業生であるマヤちゃんも言っていた。そして、こうも言っていた。


「魔物の中にはねぇ、剣だけで倒せないやつもいるし、魔法だけで倒せないやつもいるんだよねぇ」


 つまり、実践には戦士と魔術師の両方がいた方がいいという事だ。だからこの学園で見つけられば……よかったんだけど……。


「なるほど。確かに、魔物と戦うのであれば、魔術師が一人はいた方がよろしいでしょうね。しかし、課外授業の魔物はそう強いものはいません。あなたたち二人ならば、きっと乗り越えられますよ」


 先生はそう言い、元気を出せ、とばかりに俺の肩を叩いて笑った。その優しさに俺も思わず笑う。そうだ、心配しても仕方ない。俺は俺の出来る事をやるだけだ。


 その時、ふと先生の服の腰に目が入った。そこには、拳銃・・らしきものが装着されていたのだ。大きな剣に目が入って、今まで気がつかなかった。この世界は魔法が発展してるから、火薬・科学兵器は全くと言っていいほど無い。ピストル、爆弾、大砲はこの世界に無いし、生活インフラは魔法と魔法道具によって賄われている。だから少し驚きだ。この世界に銃あったのか。あらゆる商人が行き来するこの帝都でも、銃を売る人は一度も見た事が無い。


「先生、その銃どこで手に入れたんですか?」


 興味本位で、俺はそう言った。その瞬間、アルトリウス先生は身を固めてしまった。


「―――――――――――――――。」

「先生?」


 まるで、信じられないものを見つけたような表情で俺を見ていた。その衝撃に呼吸すら忘れているように、ただ俺を見つめている。ま、まさか聞いてはいけない事だったか!?


「……………………………………すみません。忘れました」

「そ、そうですか」


 長い沈黙の後、先生は絞り出すような声で答えた。……ど、どうやらあまり聞いてほしくない事のようだ。アルトリウス先生に限って変な事はしていないと思うが……。少しだけ態度が変だったな?


「……では、私は授業があるので失礼します」

「あ、はい」


 アルトリウス先生はそのまま、険しい表情で去って行ってしまった。お、怒らせてしまっただろうか。好奇心は身を滅ぼすとは、誰の言葉だったか。ウカツ。





 そして数日後、その課外授業の日がやってきた。

 授業の先生と俺達生徒がやってきたのは、帝都側にある森林だ。ここには弱い魔物しかいないとマヤちゃんも言っていた。俺の心配のし過ぎだったかもしれない。


「では、これより課外授業を始めます。監督役のアルトリウスです。どうぞよろしくお願いいたします」


 森の入り口前に集まった俺達生徒にアナウンスするはアルトリウス先生だ。監督役……神父……うっ、頭が……!


「今回のあなた方への課題は、『地ドリの討伐』です。地ドリに関しては、『魔物学』で習いましたね?」


 アルトリウス先生の言葉に俺とグラシャも頷く。地ドリ……。軽い地震を発生させることの出来る鶏のような魔物だったと記憶している。地属性の魔法も使えるが、大した威力も無く、気をつければ簡単に倒せるザコモンスター。逃げ足が速いのが取り柄。食肉可能。とてもおいしい。スメラギさんの作る地ドリのシチューは絶品だ。毎度鍋を空にするほど食べた。スメラギさんが俺の食べっぷりに嬉しそうに笑ってくれていた。やはりあの人は食堂の女神に違いない。


「この森林にいる地ドリを一パーティにつき三匹倒す事。それがこの授業の合格点としましょう。倒した証明として、地ドリのトサカを取って来るように。もちろん、倒した地ドリはあなた方が持って帰ってよろしいですよ」


 アルトリウス先生はそう笑顔で言ってくれた。その時俺に電流走る。……なるほど、お持ちかえり可能ですか。俄然やる気が出て来たぞ。まるまる太った地ドリを三匹、スメラギさんに持って帰ろう。そうして今日の夜ご飯を作ってもらうのだ。何と完璧な計画であろうか。お腹が空いて来た。


「グラシャ、シチューが俺たちを待っているぞ」

「唐揚げもね」


 当然だ。何なら鶏ガラスープもつけてもらおう。俺とグラシャはこの瞬間、本気になった。俺も大概大食いだが、グラシャも大食いだ。魔獣変化モンスターフォーゼはお腹が減るのだとか。

 そう言えば、グラシャもやっと肉が戻って来たようだ。痩せ細っていた四肢は今や健康的な肉付きを取り戻している。善哉善哉。


「……ん?」


 ふとその時、強烈な視線を感じ、思わず振り向く。すると、以前出会った銀髪貴族ちゃんがこちらを見ていた。


「あっ!」


 だが俺が視線を向けると、彼女はふいと顔を逸らしてしまった。凹む。そんなに俺は嫌われ者なのか……。ていうか、あの銀髪ちゃんここの生徒だったのね。


「では、これより夕暮までの三時間をタイムリミットとしましょう。では、始め!」


 アルトリウス先生の雄々しい声と共に、戦いの火蓋が切って落とされた。さぁて、俺とグラシャのおいしい夕食がかかった素敵な授業の始まりだ!

 生徒たちが一斉に動き出し、森に入って地ドリを探しに走る。


「トーマ、私たちも行こう!」

「悪い、ちょっとだけ待っててくれ」


 逸るグラシャを制し、俺は森に行く前に、アルトリウス先生に話しかけた。


「先生。あの、この前は変な事聞いてすみませんでした」

「トーマくん?」


 俺は頭を下げて謝った。すると、先生は穏やかに笑い、首を横に振る。


「気にしていませんよ。もしや、気にしていたのですか? それは悪い事をしましたね。私こそ、変な態度を取ってすみませんでしたね。トーマくんには、こんな恐ろしい武器を持ってほしくなかったのですよ」


 先生はそう、いつもの穏やか声で答えた。やっぱりそうだったのか。うむ、やはり悪いのは俺だ。


「私に構わず、あなたも速く地ドリを探しに行った方がいいですよ。地ドリの数も有限ですからね」

「はい!」


 先生はそう言われ、俺も気を楽にして、今度こそ森に向かおうと振り向いた。

 ……ふと、視界にルキウスが映った。見たくもない顔だが、あいつもこの授業受けていたのか。でも様子がおかしい。森の入り口で、わざわざ運んで来たらしきテーブルと椅子を出してティータイムと洒落込んでいた。ご丁寧に使用人付きだ。何やってんだ、あいつは。


「……彼は自分の仲間にこの課題をやらせてクリアするつもりです。例え彼がここで何もしなくとも、パーティとしてクリアすれば問題ありませんからね」


 思わず足を止めてしまった俺に、アルトリウス先生が呆れ声で教えてくれた。なるほど、貴族が森林なんて土臭いところに行きたがる訳もない、か。だからそんな白アスパラみたいな体つきなんだな? そんなんじゃ吸血鬼に追いつかれて死ぬぞ? 一郎さん式ブートキャンプで鍛えられた俺を見習うがいい。良い感じに膨れる二の腕、綺麗に割れる腹筋、鮮やかに伸縮する太もも。まさに結果にコミット。強靭な肉体がなければグラシャの攻撃を受けきれないから必死で頑張った。でも一郎さんの熊みたいな肉体になるのは勘弁願いたい。


「全ての貴族がこうではありませんが……。いつか彼のような者が権力を持つのだと考えると、頭が痛くなります」

「本当ですね」


 アルトリウス先生の意見に俺も心から同意した。彼の取り巻きくんたちは今頃頑張って森を走り回っているのであろう。そう考えると、取り巻きも楽じゃないのだなぁと少しだけ同情した。可哀想になぁ、フフ……。ドク、あなたの気持ちがほんの少し分かりました。今までクズだのゴミだの言ってごめんな。でもこれからも言い続けるね。


 ティータイムをしているのはルキウスだけではない。どこかの貴族令嬢と思わしき人たちも森に入らず待っていた。だからそんな白ダイコンみたいな体つきなんだな? お前らは何のために学園に入ってるんだ。貴族だって言うなら自分の事くらい自分でやりやがれ。あいつらはきっと貴族の義務ノブレス・オブリージュを知らんに違いない。 悲しいかな、この異世界に美人の悪役令嬢はいないのだろう。いるのはダイコン令嬢と鏡餅令嬢だけだ。やっぱり俺の癒しはグラシャだけなのだろう。またケモ耳は正義である事が証明されてしまった……。


 さて、俺も速く森に入って課題をこなすとしよう。


「すまん待たせて。行こうか」

「えぇ!」


 グラシャを伴い、俺も森を駆ける。さぁ出て来い俺達の夕ご飯! 大人しくスメラギさんに御馳走にされるがいい!







 …………ふと思った。ルキウスもいつかはあんな令嬢と婚約するのだろうか。そうだといいな。その時は盛大に祝ってやろう。フフ……。

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