第5話 僕らは何の仕事か知りたい。
「ところでさ、ルフ」
「んー、何?」
「僕らはどこに向かっているの?」
上機嫌で3人組の先頭を歩くルフの背中に、嘉一は至極まっとうな質問を投げかけた。彼らのいる場所も少し変わり、生活雑貨や食品などの、普段の生活に密着した物品の販売店がちらほらと見えるエリアまでやって来ている。
上々気分で鼻歌を歌っていたルフはしばらく考えたのち、にっこりと明るい笑みを浮かべながらこう言った。
「着いてからのお楽しみってことで」
「「良くない!!」」
少年達は即座に彼女の返答を撃ち落とした。
「『可愛い犬の散歩』で ドーベルマンは無いと思う!」
「このままの流れだと、マグロ拾いとかになりかねねーんだよ!」
「今日は大丈夫!……って、信じてないわね、あんたたち…」
過去の様々なバリエーションに彩られた依頼の数々は、たいていルフの“少女らしい可愛らしい形容”による修飾の果てに『聞いていたのと違う!!』という悲鳴をほぼ毎回タクヒおよび嘉一から吐き出させており、彼らに確実にトラウマを刻み続け増やしているのだ。
嘉一とタクヒの恨み節から話をそらす…もとい、気持ちを切り替えさせるため、ルフはあることを思いついた。
ぽん!と、ルフが振り向きざまに両手を合わせた音が鳴る。
「じゃあヒント!」
出してきたのはなぞなぞだった。
「おいしくて みんな大好き 不思議な円盤 な~んだ?」
「「フリスビー屋!」」
「よし、帰れ。」
この間、一秒。
この年頃の男児の特徴なのだと言うべきか、それともこの二人の元々持っている資質なのか、全くもってこの異口同音の回答に彼らが頭を使った様子は見受けられない。
「二人ともハズレ。正解は……」
急に早歩きになったルフはある建物の入り口で立ち止まり、くるりと二人の方向へと向き直った。そしてみずからの頭上にぶら下がっていた看板を指で指し示した。彼女が示したその先にあるものは……具材の乗った円盤型でおなじみな食べ物をかたどった看板だった。
そこに書き込まれている店名はこうだ。『Speed Pizza』
「ピザ屋さんでした!」
にひっ、といたずら好きな一面が垣間見えるような笑顔を添えてルフは言った。
「…クイズにしてはイマイチだな……」
「そうだね」
「駄目出しか、あんたら」
ルフの抗議から逃れるため、クイズの正解にかすりもしない誤答をしたのを棚に上げて、タクヒと嘉一はそそくさと店舗に入って行くのであった。
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